『久遠の瞳』

主なキャラクター:ロックヤマトジュナミラアークフレアトーニックシャカタカナデニー、アン、ナナ

 

 ISC退役後悠々自適で暮らすロックとミラ夫妻のもとを、同じくISCを退役したヤマトが訪ねてくる。彼は辺境の惑星ユーノで42人のエスパーが不審死したことを告げ、事件捜査にロックの協力を要請する。不審死を引き起こしたのがESPセンサー付きの超小型反物質爆弾と知った彼らはユーノの警察と連携、デニー・アスキン警部補と共に反物質カプセルを作れる場所の候補地としてガイア・テクノロジー社の中央研究所に向かい、不審死が起きた現場複数の監視カメラに映っていた女性がガイア・テクノロジー社会長の従妹フレア・マイダスなのを突き止める。

 一方、ユーノの連続不審死に関心を持った惑星シードのギャング「シャカ・ジョーンズ」は腹心のタカナ・クーゲルホッフをユーノに送り込み、タカナは同行した雇われエスパーの変死とISCのデータのハッキングを介して不審死の原因が旧連邦時代に開発された「針」の技術を利用した超小型爆弾であること、ユーノのマイダスグループが「針」のデータを手に入れたことを知る・・・。


 初期三部作のリメイク第三弾。先の二作(『ソード・オブ・ネメシス』『オメガ』)と比べても旧作(『ジュナンの子』)を踏襲した要素が多い。舞台がほぼ辺境の一惑星に限定されること、敵の首領がESPに抵抗力を持っている&エスパー嫌いであること、エスパーのみの命を奪う秘密兵器が開発され、その兵器によるエスパー連続不審死を解決すべくロックが参戦するも自身もその兵器の攻撃を食らい、ダメージを最小限にすべく極寒地帯に避難したところを、第三波動を操る少女ジュナに助けられること──。それだけに物語の中盤で「敵の首領」アーク・マイダスが早々に亡くなってしまうのに意表を突かれた。急にストーリーの着地点が見えなくなったのにハラハラしたものだ。

 旧作を踏襲しつつも全体に話の密度は増している。たとえば「秘密兵器」については『ジュナンの子』の「P96」─ウイルスから「ラムタラ」─ESPセンサー付きの爆弾に変更されたことで、〈フレアが専用の銃でラムタラを射出→相手の身体を爆破〉のようなアクションシーンが可能となった。「ラムタラ」を帝国時代のエピソードでおなじみの「針」と結びつけたのも胸熱。今作は「ラムタラ」で超能力を封じられる局面も多いだけにたびたびカッコいい肉弾戦が登場するのも見どころで、特に建物すら切り裂くタカナの「モノワイアー」による戦闘シーンは大迫力。

 キャラクターの関係性もより掘り下げられていて、『ジュナンの子』ではラストで恋仲になったことが匂わされるのみのヤマトとジュナは、互いへの感情が恋へと発展していく過程が細やかに描かれている。旧作では(『オメガ』でも)あまり共闘場面のなかったロックとヤマトが序盤からバディぽい感じでがっつりコンビプレーを見せてくれるのも嬉しいところ。面白いのはヤマトとミラの関係性で、ヤマトは外見的には年上だが実際は年下のはずのミラに時々敬語を使っている。敬語の時は「提督」、タメ語の時は「ミラ」と呼んでいるから、職務上は上官・個人的にはロックを間に挟んだ友人という二人の間柄が反映したものだろう。今回ミラはダークホース的に活躍していて、彼女が「ゲート」内に一人閉じ込められていたジュナと〈出会った〉ことが「ラムタラ」に冒されたロックを救うことになり、ジュナの身柄をめぐっての最終決戦へと繋がっていく。「ミラ」の項でも書いたが、コミカルさも含めた大人の女性の余裕と軍人としての有能さ・威厳を感じさせるこの作品の彼女が、個人的には若い頃より素敵だと思う。そんな彼女が唯一本気で動揺を見せるのがロックが「ラムタラ」に冒された時というのも好もしい。

 この作品はフレア、タカナ、アーク、シャカといった〈悪〉の側もそれぞれに魅力的で、彼らの個性と人間関係も物語を盛り上げているのだが、そこらへんは「キャラクター考察」で個々に触れていく予定です。

 

 

 

 back    home