ヤマト

 

 『オメガ』『久遠の瞳』ほか登場。ブラックホール「DF676−251」に落ちていた謎のステーションに〈保管〉されていたエスパー。実は銀河帝国初代皇帝ナガトのクローン。ニムバス=オメガによって覚醒させられ、結果的にオメガが〈むこうの時空〉から復帰する手助けをさせられる。オメガの暗示で行動していただけとして罪一等を減じられた(推測)うえで、再び拡張をはじめた〈むこうの時空〉に突入、ロックらとともにオメガを倒して宇宙の危機を救う。その後ISCのΣセクションに所属する。

 『オメガ』編は最初期のロック三部作の二作目『この宇宙に愛を』のリメイクであり、それだけに第三作『ジュナンの子』の登場人物であるヤマトが早々と『オメガ』から登場したのは意外であり、それ以上に大いに燃えたものだった。最初期の三部作で一番好きなキャラクターなもので。

 リメイクにあたり大分設定は変わったが(もっとも『ジュナンの子』でもヤマトについては最低限の情報しか提示されず、彼がロックと知り合った経緯、Σセクションを止めた理由など謎だらけではあった)、その最たるものが〈ナガト皇帝のクローン〉設定だろう。トラウトマン大佐は初対面でヤマトがナガト皇帝のクローンだと確信を抱いていた(優れたエスパーは相手のDNA配列もわかってしまうのかもしれないが、ナガト本人に会ったことがあるならともかく歴史上の人物として知ってるだけの存在を〈本人に間違いなし。でも本人という事はありえないからしたがってクローン〉と確信できるのはすごい)が、そもそもヤマトとナガトはそんなに似てるだろうか?共通点は浅黒い肌と、どちらも旧日本軍の戦艦の名前(長門と大和。もともとは旧令制国の名称でもある)というくらいじゃないか。髪質などナガトは巻き毛、ヤマトはいかにも固そうな長髪と全然違う。『久遠の瞳』で中年の姿になった─マトリクス変換でなくヤマトの外見のまま年齢を進める、『流浪』でテオが行ったのと同じ手法─さいも、ナガトのトレードマーク?の口髭がないのと髪形のせいで特にナガトに似ては見えなかったし。

 ただむしろ外見より中身の方がナガトに似ているようにも思える。まだ目覚めてからさほど経たない頃、ヤマトはヘルガに〈自分には過去がないから不安もない、「必要な情報をダウンロードして 便利な「超能力」を装備させて 命令には服従」のロボットのような存在、帝国が何百年も前に滅亡したと知って「何もかも 無意味になったとわかって とても 腹が立った」時に「「ゲート」を作れ」という指令を受けて(生きる目的ができたことに)希望を感じた〉と語っている。家族も暖かな記憶もなく、任務遂行に必要な能力だけを備え、ただ与えられた目的に邁進する人間性を欠いた機械──それが当時のヤマトの自己評価であり、実際彼が〈生まれた〉環境を思えばその通りの存在になっていたとしてもおかしくない。なのに彼はろくに人間社会との接点がないうちから、怒ったり自身の心の動きに疑問を感じたりヘルガに思いやりを示したりしている。ヤマトのこうした人間味のルーツはどこにあるのか、と考えると、やはり遺伝子提供者─〈父親〉であるところのナガトの影響が大きいのではないだろうか。

 『マインド・バスター』で「逃げ出すつもりか いやなことには背を向けて」「だれかがやらなきゃいけないんだ」とロックを非難する場面に顕著なように、ナガトには自ら泥をかぶる覚悟で信じる道を突き進む思考と行動力がある。時に(特に『久遠の瞳』において)コミカルな面も見せるヤマトに対し、ナガトは笑顔を見せる場面すらほとんど思い出せないが、ナガトのこうした〈前向き〉な性格はヤマトの〈いかに過酷な状況にあろうとあきらめない〉強さやヘルガやロックに対して見せる思いやりや気遣いへと受け継がれているのではないか。

 ちなみにヤマトはオメガがDNAの欠落を治してくれたおかげで(これだけはオメガに感謝したいところ)クローンの宿痾である短命を免れているが、彼の寿命はどの程度なのだろう?一般的な人間及びエスパー並みなのかバーナード=ルパートのように通常人より長命なのか。『久遠の瞳』に長らくヤマトと暮らしていたらしいヘルガが出てこない─はっきり描かれていないが亡くなったのだろう─こと、『オメガ』で転送試験段階、しかも一連の事件を受けてしばらく本格実験停止となったゲートが試験運用段階まで来ていることやハンザ博士・アイザックなど関係者の年齢からして『オメガ』から十年以上は経過してるだろう『カデット』で、士官学校卒業直後だったミラがすでにおばあちゃんなのだからさらに『カデット』から40〜50年後(『久遠の瞳』が「超人ロックSpecial Vol.6」で初出の際の解説では『オメガ』から『久遠の瞳』までに約60年経過しているそう)となると、『オメガ』当時を(外見年齢に反して)0歳としても50〜60歳くらいとなる。なのに外見は『オメガ』とまるで変わらない。これについては上掲の解説でも「若返りを繰り返してこの姿を維持しているのだろうか、それとも別の理由があるのだろうか」と疑問を投げかけている。上で掲げた中年の姿になって見せるシーンからすると超能力で若返りを行っている可能性が高い。ISCの彼とロックのプロフィールを見たトーニックは「2人とも退役してますね なんでこんなじいさん2人を送ってきたんでしょう」と話しているが、ロックと違い外見は青年なのに定年退職後の老人よばわりなのか、それ以前に外見相応に身体能力も現役と変わらない(作中の描写による)のにそれでもISCは定年退職させるのか?(定年で退職したとは書いてないが、トーニックの発言はそういうニュアンス)旧連邦の中期頃(ヤマキ長官在任中)人類の平均寿命は180歳くらいになってたらしいが、数百年が経過したこの時代はどうなのか?など、ヤマトに限らずキャラクターの年齢と若返りについては疑問が次々湧いて止まらない。

 ともあれ実年齢はともかく身体年齢的には20手前ぐらいのジュナと今度こそ幸せな恋愛ができそうな気配なので、ぜひ長生きして頂きたいものです。

 

 

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