アーク・マイダス

 

 『久遠の瞳』登場。辺境惑星ユーノの企業連合マイダスグループの総帥。親から受け継いだ会社をユーノ最大の企業連合にまで押し上げた優秀な経営者。遺伝的欠陥の矯正のため少年期?に治療士による遺伝子補正を受けたが失敗、何度も死にかけたことから治療士をはじめとするエスパー全般を憎むようになる。

 帝国時代にエスパーを支配する目的で用いられた「針」のデータを手に入れ、その技術を応用してエスパーのみを殺す超小型爆弾「ラムタラ」を開発、エスパーの無差別大量殺害を実行する。

 彼の遺伝的欠陥とは具体的にどのようなものだったのか。常にゆったりしたローブのような服を着ているため体型がよくわからないが、最後に戦闘用リモアに乗って戦ったさいにヤマトが垣間見た頭部に比して身体が極端に小さい姿や、アークに30年ぶりに会った治療士が彼の(人並みな)大きさの右手(機械の義手らしい)を見て「その手・・・は?」と驚いているところからしても、首から下が充分に発達しない障害かと思われる。臓器も正常に機能しないため、「スペアの「部品」」を提供する自身の「コピー」(クローンと違い独立した人格を持たないと思われる)を必要とした。

 しかし彼らから臓器他の身体パーツの移植を行ってさえ、アークは生命維持装置なしでは生きられなかった。彼が自室?から部下たちに指示を出すさいは常にその後頭部からコードのようなものが背後に伸びている。治療士のルーファス博士に会いに行ったさいは珍しく、というか唯一屋外を歩いているが、博士を「ラムタラ」で卒中死させるとすぐに部下たちに生命維持装置と思われる機械に入れられている。トーニックが「あまり無茶はなさらないで下さい モニターが真っ赤でしたよ」と言っているが、数分程度でも機械から離れれば命を失いかねないのがわかる。上で挙げた戦闘用リモアで現れる場面で「ここのリモアは そう 本来彼らの生命維持装置なのだよ」と話しているが、彼ら=アークに「部品」を提供した後の「コピー」たちのリモアだけでなく、アークの戦闘用リモアも彼のための生命維持装置としての機能を持っているのだろう。敵のボスが特殊な生命維持装置やその装置を応用した戦闘用マシンなしでは短時間しか生きられないというのは『聖者の涙』のアフラを彷彿とさせる。

 しかしヤマトが訝しんだように本来リモアは遠隔で操作するものなのに、なぜアークはいつもの生命維持装置に繋がったままリモート操作でロックたちと戦おうとしなかったのか。リモートならリモアを破壊されてもアーク自身は無傷で済んだろうに。わざわざトーニックとフレアを脱出させて一人ロックたちを待ち受けようとしてたことからも、アークは直接彼らと戦いたがっていたように思える。「コピー」たちは「もう 私のために使える部品がない状態で、今後身体に不具合が出ても新たな移植は望めない=到底長生きできそうにないだけに、よき敵と死力を尽くして戦い道連れにして死ぬことが願いだったのだろうか。最後の戦いでエスパー相手にもかかわらずせっかく開発した「ラムタラ」を一切使ってないのも、本来の身体では殴り合いの喧嘩すら不可能だったからこそ肉弾戦で決着を付けたかったのかもしれない。

 遺伝子治療が成功してさえいればアークはエスパーを恨むこともなく、「ラムタラ」も作ってはいなかった。彼が「超能力に・・・ある種の抵抗力があ」ったのが不幸の始まりだった(『ジュナンの子』同様に抗エスパーであることと障害がセットなのかは不明。視覚障害のある従妹のフレアは抗エスパーどころか潜在的エスパーの設定だし)。優れた知力・財力・権力を持つ彼が健康に恵まれていたら、どれほどの事をなしとげられたろうか。

 

 

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