『猫の散歩引き受けます』

主なキャラクター:ロックハントクシノストウケルトンデイビスジャニスピエール

 

 某都市を陰から支配する「評議会」のクシノ議長の依頼で、ハントは誘拐(?)された彼女の孫娘を強引に救出。さらに引き取りにきた議長が何者かに狙撃されたのを体を張って守る。

 後日報酬を受け取るために議長の屋敷を訪ねたハントに、議長は彼の不老不死・不死身体質を知っていることを示したうえで、新たに狙撃犯の背後にいる黒幕の正体を調べるよう依頼する・・・


 久しぶりの「探偵シリーズ」第三弾。ストーリーとしてはそれぞれの思惑でクシノ議長を狙う人々─クシノ議長を暗殺しようとしたケルトン、ケルトンの裏で糸を引いている「黒幕」、スラム再生の理想を掲げてテロによって「評議会」の政治を引っ繰り返そうとしている「クラックス」、クラックスを陰で支援して市を傘下に収めようとしている連邦─がそれぞれに陰謀をめぐらせるのを、議長の依頼を受けたハントとロックが一つ一つクリアしていくといったところ。

 だが本当は全て議長がそのように仕向けた可能性がほのめかされている。そしてジャニスの「議長ではなく 「評議会」よ」という言葉からすれば、50年にわたって評議会のトップに君臨する議長もまた自らが作った「評議会」というシステムに使われているのかもしれない。ラストでハントが「お・・・れと 逃げないか? 何もかも放り出して こんな! ばかばかしい都市や 「システム」のことなんぞすっぱり忘れて・・・」とクシノ議長を誘ったのも、彼女自身がシステムに囚われていると感じたからだろう(議長の「それはできないわ この評議会がこの都市が私なんですもの いずれはこの運命から抜け出せる時がくるかもしれないけど 今は・・・ だめなの」という答えからは彼女もそれを自覚しているのだとわかる)。しかし若返りを繰り返して評議会の上に立ち続ける彼女もいつかは命尽きる時がくる。そしてすでに若返りの限界の証として味覚障害が出ていることからして、その日はそう遠くない。その時彼女の存在に依存している、彼女そのものであるというこの都市は存続していけるのだろうか。

 ちなみに議長が昔のハントの写真を出す場面で『ブレイン・シュリンカー』から少なくとも120年が経過していることが判明したが、つまりそれほど長い年月ハントとロックは一緒に生活してるわけか・・・。そりゃ未払いの給料が払うことを考えたくもないほどとんでもない額になるはずだ。というかそんな溜める前に少しずつでも払えよ!給料をもらえないロックと給料を払えないくらい金欠のハントで、どうやって生計を立てているのやら。何十年もタダ働き?してるのだからロックもどれだけ人が好いのか。

 とはいえ唯一の永遠の命を共にできる同志であり、ロックもハントと一緒にいることがとても楽しそうだからお金のことなどどうでもいいのかも。「先生といっしょだとぜーんぜん退屈しませんねえ」というくらいで。そして自分同様の永遠の命を生きながら「先生以上に人間らしい人間なんていませんよ」と言えるほどのハントの人間臭さは、長すぎる時を生きているゆえに百数十年の寿命しか持たない人々と時として感覚の齟齬を生じてしまうロック(「ロック」の項参照)にとって、自分も人間なのだと再確認させてくれるものなのかもしれない。

 

 

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