『女神と伝説』

主なキャラクター:ヤマキジェシカハシェックケビン・ニールセンバレンシュタイン

 

 事故で航行不能になったはずの軍の輸送船が艦長を除くクルーごと行方不明に。この輸送船にはE弾(恒星活性弾)が積まれていた。報告を受けたヤマキ長官は輸送船の副長が士官学校の後輩・ハシェック中佐だと知って、これが彼が企んだ反乱だと確信、ハシェックを捕らえるべく自ら出動する。

 一方この騒ぎのために、結婚式の打ち合わせをヤマキにすっぽかされたジェシカは激怒、式の予約をキャンセルしたうえで軍の船に密航してヤマキを追おうとする。セキュリティ装置に引っかかり失敗するもロックに助けられたジェシカは、ロックとともに「銀河ネットニュース」の取材用高速船に乗り込みヤマキの元を目指すのだが・・・


 OVA『ミラーリング』の付録として書かれた物語。OVA『ロード・レオン』付録の『がんばれ!!!!キャリアン』やOVA『新世界戦隊』付録の『ELANA−0368−』『アゼリア』が本編の前日談や後日談なのに対して、こちらは本編に全く登場しないヤマキ長官とジェシカのお話。しかも100p超の中編。クオリティ的にも付録という域を超えて、一つの独立した作品として楽しめる。ヤマキ長官はあれだけ人気キャラなのにもかかわらず、初登場の『魔女の世紀』以外ではすでに中年に達してるので、今回『魔女の世紀』以来(正確には『クロノスの罠』にちょこっと出てるけど)の若々しい長官の姿が見られたのが何とも嬉しかったです♪「まずい!」と文句言いながら軍伝統のコーヒーを湯呑み茶碗で飲むところとか、陸戦用のスーツに「根性」って書いてあるところとかも相変わらずで(笑)。

 長官に式場を見に行く約束をすっぽかされたからと言って、連邦軍の建物内で(つまりは長官の部下たちの前で)周囲に聞こえるような大声でヒギンズ少佐に怒りをぶつけている(本人もすぐ反省はしていたけれど)ジェシカには、最初は正直ちょっと引いた(苦笑)。勝手に結婚式をキャンセルしてしまうし。ジェシカ自身が認める通り「銀河系の全人類を守る」という余人をもって替えがたい大変な責務を長官は担っているわけで、〈大勢の命よりも婚約者とのデートを優先させるような男がいいのか?〉〈連邦軍長官の妻になろうというならそこはわきまえて夫を支えるべきじゃないのか〉と言いたくなってしまった。

 ただ最後まで読むとジェシカの「このままじゃ 問題はなにも解決しない」という主張も呑み込めてくる。ジェシカは最初の登場シーンで「こんなふうに約束を破るのは」「2度や3度じゃない」と語っていた。婚約者とのデートよりも仕事、それも多くの人命に関わる仕事を優先させるべきなのはジェシカだってわかっている。しかしこの調子では予定通り結婚式をあげられるかどうかわかったものではない。妻として長官を支える以前に、いつちゃんと彼の奥さんになれるのかも不透明なのだ。確かによほど強引な手段にでも出ないと、結婚式はいつまでも延び延びになってしまったかもしれない。そしてジェシカが取った手段は、彼の仕事場に乗り込んでその場で式を挙げてしまうことだったわけだ。とんでもないっちゃとんでもないし、結局人質に取られて作戦を中止に追い込みかけてもいるのだが(ジェシカはエスパーなので上手く超能力を使えば足手まといどころか長官の力になれる可能性もあるのだが、そのせいでエスパーだと周囲にバレてしまえばこれまた長官の立場を悪くしてしまう。やはり彼女が前線に出てくるのは長官には迷惑にしかなるまい)、長官に行くなと言うのでなく〈それなら自分も行く〉という彼女のスタンスは、引き止めることで彼の仕事を邪魔するよりは望ましいものかもしれない。今回の行動は結婚がかかってるだけに一回限定で〈あり〉ですかね。ジェシカが無茶をしたおかげで(?)ロックがこの事件に関わるようになり、長官を助けハシェックを倒しE弾の所在も突き止めて事件を解決に導いてくれたわけだし。しかしなぜロックはあんなグッドタイミングでジェシカを助けにこられたんだろう。彼女の特殊能力のその後が気になって陰ながら見守ってたんだろうか?

 それにしても長官はまだ現職について1、2年だろうに、もう「伝説の長官」なんて言われてるのがすごい。伝説とは具体的に何なのか。士官学校時代に数々の記録を塗り替えたという優秀さ、28歳という異例の若さで情報局長官に就任したこと、銀河系を大混乱に陥れた「ミレニアム事件」を解決したことなどが「伝説」の内容かと思うが、もしかしたらジェシカの存在も多少長官の「伝説」化に関わっているかもしれない。ジェシカがエスパー、ミレニアムの闘士だったことはもちろん秘密だろうが、〈シャトルの事故に巻き込まれて記憶を失った少女をヤマキ長官が保護し世話するうちに愛が芽生えて結婚〉というなれそめはまるでドラマのごとくで、結構有名な話になっていてもおかしくない。ジェシカが軍幹部や富豪の令嬢(若くて将来有望な軍人となるとこの手の政略的結婚が多そうだ)ではなく一民間人で孤児だというのも、いかにも純愛という感じで美談として人の口にのぼりそうである。そういえば『ミラーリング』でちょろっと出てきたアゼリア主演の映画は長官とジェシカ(アメリア)の恋物語を髣髴とさせる内容だった・・・。まあ少なくとも今回の〈婚約者が前線まで押しかけてきて宇宙船内で挙式〉した件は間違いなく彼の伝説に新たな1pを付け加えたことだろう。

 

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