バレンシュタイン

 

 『コズミック・ゲーム』『炎の虎』『魔女の世紀』『女神と伝説』登場。銀河連邦軍の情報部長、階級は大佐。のちに情報局長官(階級は将軍)。早くからレイザーク=エスパー説を唱え、レイザークに対抗できるエスパーを探していて半ば偶然にロックを見出す。

 バレンシュタイン大佐というと、アントノフ大尉に生きて帰れる見込みのないディナール行きを冷然と命じたり、ロックが思い通りにならないからといっていきなり銃撃したり(それくらいで死なないと確信してたからだろうがそれにしても・・・)、果ては地球の恩人というべきロックを殺さない代わりにロボトミー手術で廃人にしてしまおうとしたりするあたり、いかにも冷徹非情の男という印象。実際〈ああ見えてよき家庭人〉とか〈飼い犬はなんだかんだで可愛がっている〉などの意外ないい人ぶりを示すエピソードも全く出てこない、一種小気味よいほどの悪役である。外見ものっぺりしていて常に黒ずくめ(『コズミック・ゲーム』時点)のせいか、アンドロイドめいて見える。

 作中でももっぱら嫌われ者で、会議の席で臆せず一人レイザークはエスパーだと(声高に熱弁をふるうのでなく淡々と事実を言ってるだけですよという態度で)主張して周囲から攻め立てられてもまるでどこ吹く風。ミゴール将軍いわく「君が出てくるたびにあの始末だ・・・・・・」というのだから結構な問題人物であろう。ミゴール将軍はあからさまに彼を嫌うような態度は示していなかった、むしろ他の軍幹部たちに比べたら友好的といってよい応対だったが、そんな将軍にこっそり監視をつけてるのだからひどい。盗撮盗聴もたいがいだが部下に娘を篭絡させるに至っては・・・。まあ恋人ではなく友達どまりだったし逆に篭絡されたようなものだったが。たぶんミゴール将軍だけでなく軍幹部全員に対して同様にスパイをつけてたものと推察される。

 ただ個人的にはこの人にそれほど悪い感情はない。やってることは相当にひどいが、彼には私利私欲というものが全く感じられない。手段はともかくも、地球のため人類のためを思って行動してることは間違いないと思えるからだ。

 その一例が自分の後任の長官にリュウ・ヤマキ大佐を選んだこと。この時ヤマキは28歳、最年少での長官職就任となった。熱血漢のヤマキはバレンシュタインとはおよそ正反対、とても気が合うとは思えないうえ、ヤマキは上官に媚びへつらうような性格でもない。いかに優秀とはいえ他の上司のもとではこんなスピード出世は叶わなかっただろう。バレンシュタインが私心なくフェアに彼の能力を評価し、おそらくは若年ゆえに周囲から反対意見も出たろうにそれを押しのけて、銀河連邦にとって最良と思える人選を行ったのがうかがえる。正直これこそがバレンシュタイン最大の功績じゃないかとさえ思える(一般にはロックを見出しレイザークにぶつけてディナール戦争に逆転勝利をもたらしたのは彼の功績とみなされてそうだが、実際にはロックは終始自分の意思でレイザーク=エリカに対している)。

 そのバレンシュタイン自身もあれだけ他の幹部たちから嫌われながらよく長官職につけたものだが、ディナール戦争でミゴール将軍やおそらくは他の上級職も大分戦死したうえ、早くから一人レイザークはエスパーだと主張しそれが当たっていたこと、上で書いたようにロックを見出し戦争を勝利に導いた(と思われてる)ことが評価された結果だろう。むしろ部長になれたことの方が不思議かも。まあ部下に上官のスパイをやらせてたことからして、対抗馬や上司の弱みを掴んで追い落としてきたのかもしれない。自分の欲望のためでなく、自分こそが銀河を守るにふさわしい人材との自負心ゆえに。

 長官就任後もマリアン・リュイス少尉を〈リアンナに似てる〉という理由でロック監視の任務につけたあたり、相変わらずという感じだが、結局顔だけでなく心ばえも多少似ていたのかマリアンはロックを愛してしまい任務を途中で放棄してしまった。かつてミゴール将軍の監視役をやらせたユーリィ・アントノフ大尉がリアンナを本気で愛してしまったことといい、たびたび監視役の人選を誤ってしまうのは彼が愛という感情をよく理解できないからなんじゃないかなあなどと思ってしまうのだった。隠居生活にも奥さんとか女性の影がない感じだったし。

 

home

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO