ウインストン・ハシェック

 

 『女神と伝説』登場。フォートブラジリア士官学校の卒業生でヤマキの後輩。全科目においてヤマキを上回る、学校始まって以来の好成績を残しながらもバレンシュタイン将軍の妨害により出世できず輸送艦の副長職に甘んじていた。その待遇に対する不満から(?)部下ともども船を乗っ取り軍に対する反乱を決行する。

 バレンシュタイン曰く〈たしかに優秀で人の上に立つ能力もあるが、正義を愛する心がない〉。彼が何をもってそう判断したかは不明だが、E弾を恒星にぶちこんで近隣惑星に多大な被害を与えながら「能書き通りの 効果があるかどうかのテスト」だとしれっとしているあたり、バレンシュタインの判断は正しかったといえるだろう。ハシェックの出世を邪魔したのとは対照的に、まだ20代のヤマキを歴代最年少の若さで長官に抜擢したのも含め、バレンシュタインの人を見る目は実に確かである。なまじ閑職に追いやったことが彼に不遇感を与えて反乱に繋がった可能性が高いとはいえ、能力と成績相応の重要なポストに付けていたら、もっと取り返しのつかない大事件を引き起こしていたかもしれないわけだから。

 もっともロックに関してはその能力を正確に見抜いた反面、過剰に危険視しすぎたきらいはある。エスパーと呼ぶに足る能力者がロックとレイザーク(エリカ)くらいしかいない時代だったから無理もないのだが(このあと数十年で強力なエスパーがどっと増えた。だからこそ「ミレニアム計画」なんてものが可能になった)、彼がヤマキのようにもっとロックと友好的な関係を結べていたら、難事件にロックの力を借りることもできたであろうに。まあヤマキ長官のあの人柄あってこそロックと仲良くなれたわけで、バレンシュタインに限らずヤマキ以外の連邦の高官の誰もロックと親しくなってはいないけど(太陽系連合時代の軍人ならカトー中佐がいる)。

 話をハシェックに戻すと、物事に恬淡としているヤマキでも全ての科目で自分以上に優秀だったハシェックを意識せずにはいられなかったように、おそらくはハシェックの方もヤマキを意識せずにいられなかったのではないか。全ての科目で自分より劣っている(それでも十分すぎるほどに優秀なのだが)男が若くして連邦軍情報局長官になっているのに、自分は輸送艦の副長にすぎないことは彼のプライドを大いに刺激しただろう。そしてハシェック自身も、本当は自分が成績では量れない根本的なところでヤマキ長官に及ばないのをわかっていたのかもしれない。ハシェックは秀才で行動力があり顔も美形、カリスマリーダーたる資格は十二分にある。部下たちが彼に従って反乱に加担したのもわかろうというものだが、デイマン大佐に言わせれば「ハシェック中佐は 80人しか部下を集められませんでしたが 長官には・・・ この船だけで200人の志願者が いるのですよ」。これは降下作戦の志願者数なので、立場上志願しない(できない)長官の支持者は当のデイマン大佐も含めもっと多いはずである。カリスマ性、人間的魅力においてはヤマキの方が圧倒的に上なのだ。同時代にヤマキという傑出した軍人がいなければ、ハシェックの立場はもう少し変わっていただろうか。バレンシュタインが上官である限りどのみち出世はできなかったろうけど。

 

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