『冬の惑星』

主なキャラクター:ロックエレーヌ、アルフレッド・クラウス、カトー中佐ストロハイムジュリアスキノ

 

 一応の独立を果たしたロンウォールだが、まもなく評議会議長となっていたジュリアスが暗殺される。議長代理に就任したアルフレッド・クラウスは革命軍時代の仲間を次々と粛清する一方、相変わらず地球から押しつけられる移民を受け入れた上で「事故死」させるという恐怖政治を行う。

 ロンウォールとの折衝にあたっていた太陽系宇宙軍のカトー中佐は、アルフレッドのやり口に憤るも移民制度の無理を知るだけに何とも動きようのない無力感を感じていた。

 エレーヌ達かつての仲間の窮状を知ったロックは、彼らを救出、ともにアルフレッドを倒そうとするが、仲間の一人の裏切りによって彼らは全滅となり、とりわけエレーヌの死に激怒したロックは単身アルフレッドのもとに乗り込み彼を殺害する。

 その後ロックはカトー中佐と合流、人口爆発解消のため一縷の希望を持って、新しい惑星探しに乗り出す。一方ストロハイム大佐は二度の敗北を喫したロックを倒すべく、軍の秘密兵器「ニケ」を持ち出してロンウォールを目ざしていた・・・


 『ロンウォールの嵐』の続編だが、さらに重いストーリー展開である。名目ばかりの独立を果たしても移民を押しつけられる現状は何も変わらない。〈自分たちのやってきたことは何だったのか〉 かつて革命に全てをかけていたロックをはじめとする元革命軍のメンバーにはこの徒労感がつきまとっている。

 移民を受け入れて殺すアルフレッドのやり方を、「ロンウォールを救うにはこれしかない」とある意味肯定せざるを得ない状況。それでも彼らは破れた理想の代わりに「どんな理由があっても こんな無意味な大量殺人が許されるはずがない」(理由があるなら「無意味」ではないから逆説的な表現なのだが)というヒューマニズムのもとに心をふるいたたせて再び〈革命〉を起こそうとする。

 しかし結果は仲間の裏切りによる全滅だった。アルフレッドによる粛清の嵐、そのアルフレッドを革命軍の英雄であったロックが殺したことも考えあわせると、地球軍の干渉があったとはいえ、革命軍はまさに内部抗争によって完全崩壊したのである。そしてアルフレッドの後任には地球から知事がやってくる・・・。ここで物語が終わっていたら、『冬の惑星』は大悲劇になっていただろう。カトー中佐の言う「袋小路」の暗さが、この前半部には横溢している。

 しかしここで事態は新惑星トア発見という奇跡によって急速にハッピーエンドを迎える。ロックが惑星探しを提案した直後のことなのだから、ロックが引き寄せた幸運というべきだろう。そしてロックはトアに移民する。ラストの台詞「長い冬が 終わったんだ」は『ロンウォールの嵐』序盤のジュリアスの台詞「長い冬になりそうだな」と対になる名文句。「生きている限り希望はある!」というロックの言葉がこの二作品をつらぬくテーマだったのかもしれない。

 ・・・ただあくまでロンウォールの〈真の独立〉をなさしめたのは(そして人口爆発問題を解決したのも)トア発見であって、ロンウォール革命とその顛末は多くの犠牲者を出しただけ(のちの完全独立をスムーズにする基盤を作ったという成果はあったと思うが)、と考えるとやっぱりヘビーな話だよなあ。

 

back    home

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO