『ブレイン・シュリンカー』

主なキャラクター:ロックリュウ・ハントフォン・ノイマンナターシャ(リコ)、ジンノ

 生物博士ラーセンは60万年前に存在した古代種族のDNA復元に成功、そのDNAには宿主を不老不死にする能力があったが、DNAを植えつけられたマウスは一匹を残して死亡する。しかし遺伝子の専門家としてフォン・ノイマン博士が呼ばれた直後、最後のマウスがラーセンと助手らを襲い、フォン・ノイマンは行方不明に。警察がノイマンを犯人と目して追うなか、私立探偵ハントはノイマンの娘・ナターシャから父親を探してほしいと依頼される。ハントと助手のロックはラーセンの背後にいるランスロットコーポレーションを調べる一方、ノイマンが潜伏するボロホテルを突き止め乗り込むが、古代種族のDNAに「適合」した結果不死身不定形の怪物と化したノイマンに襲われる・・・・・・


 現在に至るまで断続的に発表されている「探偵」シリーズの最初の作品。不死ないしは非常な長寿のキャラクターは他にもいるものの、ロックの仲間で長い長い時間を共に生きることができる人物──ロックを彼が本質的に背負っている孤独から救うことができる唯一の人間と言えるのが今作のリュウ・ハント。それゆえに彼がらみのエピソードは年表からは外されてますが(彼とロックの共同生活は必然的に何十年にも及んでいるはずなので、ロックがハントと知り合って以降の物語にはすべてハントが出てこないと矛盾してしまうためパラレルワールドのような扱いにせざるを得ない)、だからこそかえって〈あの二人はずっと仲良く難事件珍事件に立ち向かってるんだろうな〉と楽しい方向に想像を広げられるのが嬉しいです。

 もっとも不死であることがもたらす悲哀や虚無がクローズアップされるのは続編の『不死者たち』であって、今作の時点では結局ハントが不死になったかどうかもはっきりとは描かれていないし、「ネオ・イモータル」という呼称もまだ登場しない。ただ不死化することを嫌い、「人間以上で不死身ってことは 化け物になるってこった」「そんなもんになっちまったら 女にもてなくなっちまうじゃねえか」というハントにロックが「ですかね やっぱり」と寂しげな笑顔で答える場面には、ロックの不死者ゆえの哀しみがはっきり表れている。〈もてなくなる〉という笑いを誘う表現もロックの返しも軽妙でありつつ、かえってさらりとした表現だからこその切なさがあって、個人的には『ブレイン・シュリンカー』でもっとも印象に残った箇所である。

 ところで昔から気になっていたのだが、タイトルの「ブレイン・シュリンカー」とは何のことだろう。直訳すれば〈脳を収縮させる者(物)〉だろうが、「適合」の際に特に脳が収縮するという記述はない。何かしら隠された意味があるのだろうか。もう一つ気になるのが扉絵に『聖者の涙』に登場するアフラとしか思えない人物がいること。『ブレイン・シュリンカー』と『聖者の涙』はほぼ同時期の作品であり、『聖者の涙』の第二部から出てくるアフラについての構想をこちらでちょっと前置きしてみたんだろうか?

 

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