『黄金の牙』

主なキャラクター:ロックリュカーン、オーリイ大佐、トラヴィス、フラト・イマーニブラコフ准将、カル・ダームIV世

 

 某惑星の前領主を倒して領主となった海賊あがりのトラヴィス侯爵は暴虐を欲しいままにしていた。そこへ現れたエスパーの少年・リュカーンは、トラヴィス操る重装甲「バーサーカー」を倒す。その後彼はトラヴィスに捕らわれていたオーリイ大佐率いる傭兵部隊に接触、自身の国を築くのに手を貸してほしいと語るリュカーンの気概に感じた大佐は彼に協力することに。

 一方「ダークライオン」に続くクローンの反帝国活動を予期していたロックは、着実に勢力を伸ばしていたリュカーンとクローンのステーションで出会う。リュカーンもまたクローンの一人だったのだ。リュカーンはロックに協力を呼びかけるがロックはリュカーンのやり方は間違っていると拒否、リュカーンと戦いになったロックはステーションの崩壊によって鏡ごとブラックホールに閉じ込められてしまう・・・


 三人目のクローン登場。「書を守る者」の名もわかり、帝国VS書を守る者の図式が明らかに見えてきた。今回のクローン・リュカーンは、悪逆な領主を倒す登場シーンも、なるべく犠牲を最小限にとどめようとするところも・・・はっきり言っていい奴じゃないか。先の二人に比べても、「戦士」時代のクーガーと比較してもずっと表情は豊かだし、使命自体はプログラムされたものでも彼は自分の「意志」でその使命を果たすことを選んでいた気がする。

 くわしくは「リュカーン」の項に譲るが、私は結構リュカーン好きなので、あまり彼が「書を守る者」の操り人形だったとは思いたくない。ロックも「君はただの道具だったんだ」(これって死にかけてるリュカーンに言う台詞としてあんまりなんじゃ・・・)とか言いつつリュカーンのことを認めていたように思える。自分を攻撃し、ブラックホールの中に見捨てたリュカーンの死をロックが悼んでいるようなのは、彼の「本気」を感じていたからではないのか。本気なればこそ彼はカリスマたりえたし、リュカーンに従った人たちは皆彼に夢を見たのだろう。クーガーの夢に付き従ったジョアンのように、彼らがグチ一つ言わずその夢に殉じて散ってゆくシーンは悲壮に美しい。

 そしてロックの言葉と部下の死に迷いを覚え、それでもやるのだ、と繰り返し自分に言い聞かせるリュカーンは充分人間くささがあった。それは「書を守る者」のクローンとしては明らかな「ミス」なのだろうが、彼は幼いリオラに接触したときも無理に彼女を覚醒させなかったし処分もしなかった(スコラ版『赤いサーペント』では冒頭にリュカーンがリオラの誕生時に「不完全なままで生きているとしたら 処分しなくては」と語るシーンがある)。リオラの誕生は教育プログラムの故障によるものだと言うが、リオラのミスを修正するため早く生まれたクーガーも直接には教育プログラムの事故によって誕生している。リュカーンはリオラが早く生まれた理由―リュカーンのミスを修正するため―に思い至っていたろう。なのにいずれは自分の命も狙ってくるかもしれないリオラを害そうとせずそのまま放置した・・・彼は先の二人に比べたら〈甘すぎる〉のだ(ダークライオンにも甘さの片鱗があったが)。しかしその甘さこそがリュカーンを魅力的な人物たらしめている。『黄金の牙』の主役はロックよりもリュカーンの方かもしれない。

 

 

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