リュカーン

 

 『黄金の牙』登場。「書を守る者」のクローンの一人。少年の外見をしてることもあり、クローンたちの中で一番ロックに似てる気がする。品の良さと落ち着き、誇り高さ、颯爽と自信に満ちた態度などどこか貴族的な雰囲気を備え、そのカリスマ性をもって反帝国の軍事行動を大規模に展開する。部下たちが彼を「リュカーン」と呼び捨てにするのもかえって「カリスマ」という感じである。

 『黄金の牙』の項でも書いたが、私にはリュカーンがロックの言うような「ただの道具」とは思えない。確かに喜怒哀楽をさほど顔に出さないし、常人にに比べて迷ったり悩んだりは少ないようだが、自分の意志を持っていないとは見えない。むしろ「意志」があればこそ、あれだけ多くの人々が自身の意志でリュカーンに従ったのではないか。また部下のみならず敵の血もなるべく流すまいとする、マスターバルカンなどとは対極にあるリュカーンの〈甘い〉部分も人を惹きつける要因だったろう。単に強力なエスパーだからというだけでない、彼に夢を賭けてみようと思わせるものがリュカーンにはあるのだ。

 ジョアンがクーガーに賭けたように、閉塞感溢れる時代の中で少なからぬ人々が革命をなしうる英雄を求めていた。いかにも沈着冷静に見えるオーリイ大佐が無鉄砲なリュカーンの計画に乗ったのも、内から腐りかけている帝国にうんざりしていたのがまず根底にあったはず。このへんリュカーンは彼自身意識していた通り、ナガトに似ている部分がある。そしてその〈英雄〉ナガトは銀河帝国を築いて銀河に秩序を取り戻し、銀河コンピューターという〈システム〉がそれを支えたが、その結果人類がコンピューターに支配される世界を作り出してしまった男でもある。ロックが「人類を救うことができるのは英雄や「システム」ではない」というのは帝国を成立時からずっと見てきた(トレスの時代には内政に関わりもした)ロックの重い実感だったのかもしれない。

 

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