『ひとりぼっちのプリンセス』

主なキャラクター:ロックハントナオミ、アリス、バーチ、ピーター、ハンナ、ハンセル、クレイトン

 

 「ローグプリンセス」を名乗る凄腕の「電子使い」ナオミは、偶然ネット内で〈年を取らない男〉リュウ・ハントの存在を発見する。ハントが同じ星に住んでいると知ったナオミは、相棒のアリスを通じてプロの格闘家・バーチにハントを路上で襲わせ、通りすがりに介抱すると見せてハントのDNAを採取する。アリスが恋人?の医師・ピーターにそのDNAを調べさせた結果、ナオミはハントが不老不死だと確信、一方でハントもバーチの顔情報からたどってアリスの存在に気づく。ナオミは不老不死の謎を探るべく、改めてハントに接近を試みる・・・


 人気のリュウ・ハントものの第四弾。相変わらずの熱血で何げに有能だけれど女に弱い二枚目半のハントと、のほほんとしてるようで仕事が早い助手のロックの名コンビの活躍が楽しい。

 個人的に今作で興味深かったのは、ハントとナオミの不器用な恋愛模様以上に電脳世界の描き方。これまで『ファイナル・クエスト』や『ミラーリング』で描かれた人間対コンピューターとの戦いとは違いネット空間での人対人、ネット上での姿も『ミラーリング』のような本来の外見そのまま(ただし全裸)ではなく、本体とは多分に違う外見−アバターとなっている。ネット空間も岩場や洞穴や城があり、重要な情報は宝箱に入っていたりするファンタジー風の外観となっているが、これはもっぱらナオミ視点のシーンなので、彼女の好みが反映されているものと思われる。ナオミ視点だとトレーサーがミニ恐竜の姿で表現されたが、SF好きの「電子使い」なら普通にシーカーの外観に見え、ホラー好きならもっとおどろおどろしいクリーチャーに見えるのではないだろうか。

 この「電子使い」についても、リート→フリーマン教授→ミーシャと続く電子使いの家系のような超能力(エレクトリック・スキャン)ではなく、凄腕のハッカーという意味で使われているように感じられる。ナオミがネットに干渉する時は眼鏡のあたりが光る描写があり、ハンセルやクレイトンがネットに侵入するときも片目にコードのついた眼鏡のような装置を付けている。ナオミ自身も本格的にネットに侵入するさいは専用の長椅子?に横たわって眼鏡にコードを接続しているので、これらの眼鏡がネットに入るためのデバイス─「永遠の真理教会」の施設からの脱出時にナオミがコードなしでもハッキングを行っていたように、無線状態でも使えるが有線ならより操作性が増す─なのではないか。ハンセルがナオミを「ちゃんとしたハードがあったら 私なんかじゃ手も足も出ませんよ」と評する場面もあり、ネットへの干渉に眼鏡その他のハードを必要とするというのは、彼女らが超能力由来の「電子使い」ではない証拠のように思えるのだ。

 とはいえハンセルに関しては片眼鏡なしでネットを操作する場面があり(アバターが網を張っている描写があるので、キーボードなど通常のデバイスで操作してるわけではなさそう)、アリスの発言からもエスパーであることがほぼ確定している。クレイトンもまた接触テレパスを使う場面がありエスパーなのは確実だ。そもそも超能力由来の電子使いであることが明言されてるランも、システムに干渉するさいは必ずハードを用いていた(「ランは電子使いか?」参照)。ナオミにしても、ロックがハントとナオミを連れてテレポートで敵地を脱出した時「ハントはEなのか?それともあの女に「電子使い」の他に能力が?」と言われたりしてるので、やはり彼女たちが行うエレクトリック・スキャンは超能力由来のもので、ただし能力を発揮するにはハードが必要、あるいはハードなしでも力を使えるがあればなお良い─といった感じなのかもしれない。ナオミが眼鏡なしでネットに侵入したり麻痺フィールドでなくEジャマーで動けなくなったりするシーンがあれば、彼女がエスパーかどうかはっきりしたのだが。

 そんななかで唯一ハードを用いなくてもネットに干渉しまくっているのがロック。さすがに「あらゆる城や洞窟に忍びこむことができ 誰も その姿すら見たことのない」「伝説の魔導師」と言われるだけのことはある。『ミラーリング』で「これだけ複雑になるとさっぱりわからん!(中略)ランがいればなあ」、『ファイナルクエスト』で「ぼくではコンピューター相手に時間がかかりすぎる」などと言っていた、コンピューターは苦手なイメージ(電子使いではあるのだがミーシャやハードありのランには及ばない)だったロックだけに感慨深いものがある。まあ前者はエレナ、後者はドラム及び銀河コンピューターというその時代最高峰のコンピューターが相手だったからこそかもしれないが。「ローグプリンセス」ナオミなら、エレナや銀河コンピューターにも侵入できただろうか?

 

 

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