『超人の死』

主なキャラクター:ロックアンドレ・モリノナミー・アナカルマスター・バルカン、ヒューガ、エンナ、アーノルド、ポロ、ビンセント・ヨリック

 

 ESPのコントロール不能(サイコ・ブラスト)に陥り、「闇の僧院」に閉じこもっていたロックを、「マスター・バルカン」の部下・ヒューガが連れ出しに来るがロックは拒絶、力あまってヒューガを殺してしまう。

 そこへ現れたESPの研究者アンドレ・モリノは、ナミー・アナカルという少女ならロックの力を中和してサイコ・ブラストを止められるかも知れないと説得。ロックはアンドレとともに山を下りナミーのいる惑星エブロを目指す。

 しかしマスター・バルカンの部下であるエスパー・エンナとポロは行く先々でロックに攻撃を加えてESPの暴走を誘発、心ならずも大勢の人を殺し、テロリストとして手配されたロックは、力の暴走を恐れて寝ることもままならず心身ともに疲れ果ててゆく・・・


 個人的に『ロック』シリーズの中で一番辛かった話。〈暗い〉という点では『ロード・レオン』や『サイバー・ジェノサイド』だって暗いのだが、この話のロックはあまりにも痛々しすぎて。

 とっさにバリアを張ったために思いがけず街を破壊してしまった時の自失の姿、アンドレに引っ張られながら「ESPを・・・使うつもりじゃなかったんです・・・」と弱々しくつぶやく無防備さ、地面ごと惑星外にテレポートしたりあわてて地面ごと戻ったりのめちゃめちゃな行動、寝不足で朦朧とした鬼気迫る表情、親切にしてくれた隣席のおばさんに「どうかほっといてください!」と叫ばざるを得ない必死さ(あのおばさんは助かっただろうか)・・・。

 関係ない回りの人を殺された怒り、命の恩人を救おうとしたときの不安とためらい、彼らを自分の手で死なせてしまった苦しみ――それら全てが切々と伝わってくる。それは同時にロックのごく生々しい人間的な感情を見せてくれるということでもあって、心理描写に優れた名作だなあと思います。

 敵のエスパーも、「軍人」たらんとして死を招いたヒューガ(この時代もやっぱりエスパーは軍で出世できないのか・・・)、登場当初は冷たい女と見えたが「そんなに人殺しがしたいのか」というロックの言葉に動揺し「私が殺すのと同じことなのよ!(中略)耐えられないわ!」と泣いたエンナ、この計画をエンナに冷然と指示しているようでいて〈これもマスター・バルカンと銀河の平和のため〉と自らに言い聞かせ良心の痛みに耐えていたポロ、これまでの生き方を投げうってエンナへの愛のためロックに無謀な戦いを挑んだアーノルド・・・と何だか憎めない面々が揃っている(まあヨリックも憎めないけど)。そんな彼らの親玉であるマスター・バルカンはおおよそ人間味を感じさせなかったが。

 ところでナミーは「私の中にある超能力を受け入れようと待っている 無数の命が」と言っているが、アンドレが言っていた通りエスパーの減少とロックのサイコ・ブラストに因果関係があるのなら、そして「超能力はいま歪んだかたちで展開されているのです」というセリフを考え合わすなら、ロック(やその他一部のエスパー)が強大なESPを持ちすぎている=「無数の命」から我知らずESPを吸い上げているがためにエスパーが生まれてこなくなっている、ということになるのか。だとすると「歪んだかたち」とはすなわちロックを指すことに・・・。しかしナミーに「歪んだかたち」うんぬんの話をしたのはロックなんでは?ロックがなぜナミーを探していたかも含め、いろいろと疑問は残るのだった。

 

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