『バーミリオン・デザート』

主なキャラクター:ロック、タク・オトワ、エマばあさん、リカルド、ウォン、シュナイダー

 

 賞金稼ぎに追われて某惑星の砂漠地帯へ不時着したロックは、砂竜に襲われてフライヤーを失い行き倒れているところを、近くの牧場で砂羊(サンドシープ)を飼育している少年タクとその祖母エマに助けられる。タクがロックに関心と好意を示す一方、ロックをエスパーと知ったエマは体が治ったらすぐに出て行けと言い渡す。

 その言葉に従いロックは書置きを残して去るが、賞金稼ぎが再度ロックに襲いかかる。彼らの一人・ウォンをロックは返り討ちにするが、そのころタクの家も彼らの土地を狙うシュナイダーの手の者に襲撃を受けていた・・・


 厳しい環境の中で細々と生きている老人と子供の生活を悪者が脅かし、そこへ追われる身の旅人が現れ彼らの窮状をさっそうと救う、という西部劇のフォーマットさながらの物語。とはいえ単純に勧善懲悪の世界というわけではない。悪役にも彼らなりの事情がある、そう悪い連中ではないことが示されているのである。

 シュナイダーはともかく、賞金稼ぎのウォンとリカルドについては、行動は悪辣ながらも真性の悪ではない。彼らは金を稼いで故郷のレトヴァに帰りたいという悲願を抱いており、リカルドがタクとエマを人質にしてまでロックを狙うのはウォンの仇討ちのためでウォンに対しては思いやり深い態度を見せている。あと悪者というわけではないが、ロックに好意的でないタクのおばあちゃんも、タクが微弱ながらもESPを持っていて「立派なエスパーになってパパをさがしに行く」望みを持っているために、彼を手放したくなくてエスパーに近づけまいとしているのが察せられる(タクの父親が戦争に取られたこと自体、彼がエスパーだったせいかもしれない)。つまりキャラクターが全体に憎めない連中なのだ。

 タクもただ守られるだけではなく、彼が使える唯一のESPでロックを危うく助けもしている。最後は行方不明だった父親が帰ってきて(今までどこで何をしていたのか、なぜこのタイミングで帰ってきたかは謎のまま)、ロックにもできない砂竜使いの技を発揮して砂竜を平和に追い払って家族のピンチを救うあたり、なかなかに清清しい好短編である。

 そういえばシュナイダーについてはとくにバチが当たったという描写もなく、リカルドの催眠暗示にかかったエマに土地の譲渡契約書にサインさせて「これで ここはわたしのものじゃ!」と喜んでいるのが最後の出番である。あの契約はいったいどうなったんだろう。ロックとタクたちが最後晴れやかな笑顔で別れているし、おそらくロックがどうやってか無効化したんだろうけど。ついでに今後タクたちに手出しができないようお灸も据えてくれたことだろう。これからは頼もしい砂竜使いの父親もいることだし。

 もう一つ気にかかるのが瀕死のウォンのその後。リカルドが死んだ以上世話をする人間がいなくなり、早晩亡くなったというのが妥当なところか。自業自得とはいえ、彼だけはちょっと気の毒な気もするのだった。

 

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