アイシャ・トラウトマン

 

 『ソード・オブ・ネメシス』『オメガ』ほかに登場。新銀河連邦軍の大尉でクラスAの優秀なエスパー。見た目は妙齢の美女だが、本人いわくアイザック・ヨシノ長官と同年代(50歳くらい?)だそう。アイザックからの応援要請によって海賊ニムバス追跡のためにISCに派遣され、以来ニムバスがらみの事件でたびたび長官と関わりを持つうち、向こうからのアプローチを期に恋仲に。『オメガ』ラストで無事結婚の運びとなる。

 ISCに応援にやってきた当初からアイザックの軍人・管理職としての能力を見抜き、仲間のエスパーたちに比べてアイザックを高く評価していた(「たいした戦略家だわ」)。とはいえ当初は男性として興味がある風は全然なく、アイザックの方もそんな素振りもなかった(二度目にトラウトマンが派遣されてきたときも「また君か?」と驚き呆れるばかりで特別喜んでる感はなかった。もっとも任務が危険すぎて彼女の身を案じてたあたり、すでに気になりだしてたのかも)。両者が急接近したのは『オメガ』になってからである。

それにともない、これまではクールながらもコケティッシュな色香もあるデキる女性という雰囲気だったのが、何かと可愛げのある言動が見られるようになってきた。優秀な遺伝子を求めてロックにコナをかけるセス・ハーンへの反感を露わにする場面がその代表例だろう。性愛抜きの憧れの相手である超人ロックを種馬にしようとしてることに対する怒りと、子供は両親の愛の結晶であるべきという倫理観。とくに後者については「男の人と女の人が愛し合ったときに  そのごほうびとして神さまから授かるのが「子供」だと 教えられましたから」というカマトト的名言を残してくれた。その美貌と年齢からすれば華やかな恋愛経験を持っていそうなものだが、この発言を見るかぎり彼女も恋愛についてはアイザックとどっちこっちのウブさのようだ。

 こんな二人の恋模様は周囲からも好意的に迎えられたようで、トラウトマンの部下のエスパーたちも総じてドライな性格らしいのに(だからこそ?)、「やさしく見守」ってくれていたとか。トラウトマンによればエスパーだというだけで差別を受けたなんてのは昔の話であり(辺境ではまた事情が異なる。ヘルガの例に顕著)、身近にもエスパーと人間のカップルがいるのだそうだが、相手がISCの長官という要職にある人物だけにもっと大騒ぎになっても(特に長官サイドで)おかしくないところである。それこそ切れ者のニエミネン中佐あたりが、エスパーと結婚することでアイザックが社会的に被る不利益を懸念したりしそうなものだが、実際にはニエミネン中佐はもっぱら歓迎ムード、トラウトマンとはいつのまにか友達になっていてアイザックがニエミネンに何も打ち明けないうちから二人の恋の進行具合もしっかり把握していた。トラウトマンとの結婚前にアイザックが長官職を退いた(おそらく軍自体も辞めた)のも影響してるかもしれないが、ヤマキ長官がジェシカと結婚した時代(ジェシカ及び彼女との間の子供たちがエスパーであることは秘密にしてある)とは何もかも違うんだなあと痛感するのだった。

 

 

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