『永遠の旅人』

主なキャラクター:ロック青年(偽ロック)、ライザ、オルドレン、レールモント、モノダ卿、ド・ラージュ、ターグ議長

 

 帝国の大臣ド・ラージュは、超人ロックの首に高額の賞金をかける。その目的はロックを帝国に不満を抱く民衆の救世主にまつりあげ、偽ロックたちに各地で反乱を起こさせて不満分子を一網打尽にすることにあった。

 辺境惑星オルソポスでは、帝国の任じた提督オルドレンとその地位を狙う有力貴族のレールモントが対立しており、レールモントは自称「ロック」の女エスパー・ライザを雇う。一方オルドレンもロックを名乗る青年を雇うが、彼はライザと密かにわたりをつけ、オルドレン・レールモント双方から金をしぼる計画を立てる。

 またオルソポスの田舎で老夫婦と暮らしていたロックは、その力のゆえにオルドレンの部下モノダ卿のエスパー狩りに遭って老夫婦を失い、町で再びエスパー狩りによって警察に捕らわれてしまう。ESPで同じ拘置所内の人々を連れて脱走したロックは、その中にいた革命評議会議長に乞われて、彼らの「超人ロック」となる・・・。


 帝国全盛期も終わろう頃(このときの皇帝はカル・ダーム三世かすでに四世か?)の物語と思われる。各地で頻発する独立運動のうちの一つにスポットを当てる。ロックが革命軍と名のつくものに関わるのは、ロンウォール革命についでこれが二度目だろう。(ディナール戦争のとき行きがかり上レジスタンスグループに一時身を置いていたけど)。

 罪なくして囚われ、そこで革命軍のリーダーと出会ってそのESPゆえに革命への助力を頼まれる、というシチュエーションもよく似ている。「なぜ同じことをくり返すんだろう」と内心つぶやいたときのロックの心には、ロンウォール革命の記憶があったのかもしれない。そして今回もロンウォール同様、革命成功の後にすべてが水泡に帰し巨大な権力に呑み込まれてしまった。

 ロンウォールはトア発見によってようやく真の独立を果たしえたが、オルソポスは結局帝国の版図に留まり続けた。それでも、「結果はたとえどうであれ なにかをしようと努力することと なにもせずにあきらめるのとでは大きなちがいがある!」のだ。オルソポス革命評議会議のターグ議長も、「いざ戦いになれば多くの犠牲が出るだろう それでも勝てるかどうかはわからん だが やらねばならんのだよ」と語っている。このオルソポスの他にも多くの独力運動がさまざまな経過で潰えていったはずだが、彼らの思いはラフノールの反乱支援の失敗を経て、ルハラを中心とするSOEによって惑星独立の礎になった、と思いたい。

 ここでは革命側についたロックだが、『魔術師の鏡』では結局ド・ラージュと組んで銀河コンピューターと帝国を守った。オルソポスの反乱はオルソポス一星の独立を求めるものだった(革命軍をだしに自身が総督になろうとしたモノダ卿も帝国に盾をつく気は皆無であった)のに対し、ラフノールによる各地の反乱支援は帝国それ自体の存亡に関わるものだったからだろう。帝国支配の下での抑圧増大はオルソポスの一件で十分感じていたに違いないが、連邦解体後ナガトが銀河帝国を築くまでの混乱を知っているだけに「いま・・・帝国が崩壊すれば大変なことになる」と考えざるを得なかった。『失われた翼』では〈浄化計画〉〈比較的穏健なやり方で力を伸ばしているSOEという組織の存在〉〈一切血を流さず虐殺を止める手段(フリーマン教授による「ジェノサイド」のデータ書き換え)〉がほぼ同時に揃えばこそ、反帝国の立場をとったのではないか。

 話は変わるが、『魔術師の鏡』で反帝国軍の男が、〈ロックに会ったことがある。革命を助けようという申し出をすっかり信じてたら、そいつは帝国のスパイで同志が大勢死ぬはめになった〉と語っている。この男の話が、オルソポス革命評議会がロックが加わって間もなく壊滅的打撃を受けたのをロックのせいだと誤解されたものなのだとしたら、なんだか悲しい。

 

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