『新世界戦隊』

主なキャラクター:ロックランエレナ長官アゼリアニアエノ、名無しのエスパー(OVAのウモス)、ツアー

 

 突如一切の記憶を失った5人のエスパーたちは、「ツアーを殺せ」という謎の暗示に導かれて集結、記憶を奪った「敵」の手がかりを求め、「ツアー」を捜す旅に出る。コンピューターに侵入して「ツアー」という無人惑星の存在を知った5人はツアーに向かうが、以上な猛暑に苦しめられ、自動機械によって仲間の一人を失う。残る4人は「ツアー」と名のるエスパーによって救われ、惑星ツアーの上空に浮かぶ人工惑星に保護される。

 2万人のエスパーを擁し、連邦からの独立をはかるというツアーに、4人のエスパーの一人であるロックは奇妙な違和感を覚える。一方連邦内ではコンピューターの天才少年・ランと連邦最大のコンピューター「エレナ」によって「皇帝計画」なるものが進められていた・・・


 私事になるが、『光の剣』でランの熱狂的ファンになった私が、数年後にこの話を読んだときのショックったらなかった。ロックたちの敵だというのも、エスパー消去計画をやったというのも、ニアの前に女がいたのも、それがコンピューターだというのも――。

 そしてきわめつけは長官!人もあろうにランになんてまねしてくれたー!!(いやランの側に責任がないとは言わない、絶対言えないのがまた辛い)しかも掲載が少年誌じゃなかったおかげ?でベッドシーンまで出てくるよ、もう(泣)。といいつつ最初のショックから立ち直り、くり返し読むうちにどんどん好きになった作品である。気づけばランにも前以上に惚れこんでしまってたり。

 ストーリーに関しては、皇帝計画について被害者のエスパーサイドと加害者の連邦サイドと両方から描いていて、ラストで二つの流れが一つになってやっと全体像が見えてくる、という構成がかっこよくて好きである。ラン自身がエスパーだというあまりに皮肉なオチも。

 好きなセリフやシーンもたくさんあるが(たいていランがらみ)、一番好きなセリフはエレナの死ぬまぎわの言葉(くわしくはエレナの項で)。一番好きなシーンはロックに連れられてランがコンピュータールームを出て行くシーン。作中ではずっとあの部屋に閉じこもりきり(実際には食事や風呂のために外に出てると思うが、シーンとして存在しない)だったランが「外の世界」に出てゆく、というラストが印象的だった。

 この話は絵柄的にもとてもいい時期に書かれたという気がする。個人的に一番好きなのは『アウター・プラネット』〜『マインド・バスター』あたりの絵なのだが、幻想的な美しさを持つこの作品には、この時期の淡くはかなげな絵がとても似合う。

 ところで興味深いのはエスパー消去計画を扱ったのはこの『新世界戦隊』と『ジュナンの子』『ミラーリング』の3つだが、ランはエスパー、『ジュナンの子』のアコ・メディオスらは純粋種(ESP因子を全く持たない特殊な人間)と、エスパー消去をたくらむのはなぜか「人間」ではないということである。

 『ミラーリング』の場合、カサンドラとバーコフは人間だが(もっともESPが効かず、異常なエスパー嫌いのバーコフはやや純粋種っぽい)、要は皇帝計画の再現であって、イニシアチブはエレナにあったので、やはり「人間」によるとはいいがたい。

 むしろ『新世界戦隊』の頃の「人間」は、エスパーを「害虫」として消去するより「道具」として利用する方向へ行っている(『ジュナンの子』では人間とエスパーの関係ははるかに良好になっており、人間たちはエスパー消去計画への参加を拒んでいる)ようだ。それを、彼らのエスパーに対する怖れを利用して、「害虫」消去の方向へ向けたのが「皇帝計画」だった。

 『アウター・プラネット』で連邦軍長官は、ライオット一味に対して、「エスパーはじつに有効な「道具」だ 使い方さえ誤らなければ!たしかに! だが・・・もし千も二千ものエスパーが集まったとしたら 連邦にも会社にも属さず・・・野望をいだいてるとしたら? それは・・・だれにもとめられぬ 不可能を知らぬ不死身の・・・・・・ 怪物になる!」と危機感を抱いている。これと同じ状況を「皇帝計画」は意図的に作りだしたのだ(OVAでは「ミレニアム」をモデルにした、という設定があった。そのとおりかも)。

 その「エスパー=道具」論がまかりとおる状況を描いたのが『エネセスの仮面』『アウター・プラネット』『星と少年』である。エスパー迫害の加熱のきっかけは、エスパーに理解のあったヤマキ長官の退任だったと思われる。長官在職中だったら、軍が14歳の少年一人に手玉に取られてエスパー消去計画の片棒をかつがされるなんてことはまずなかったろうから、彼がいなくなったことで軍(あるいは連邦)全体のレベルも低くなったようである。

 この状況に一応の終止符が打たれるのは、多くのエスパーを擁するラフノールがともかくも穏便に連邦に加盟した『スター・ゲイザー』である。いわば「ラフノール・サーガ」はエスパー暗黒時代の歴史であり、『新世界戦隊』はその幕開けとなったのである。

 

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