セス・ハーン

 

 『オメガ』登場。ネットの教養番組(「各地の研究所をまわって 最新のテクノロジーをわかりやすく解説する番組」)のインタビュア。天体物理学の博士号を持つ才媛で、アイドル女優のごとき可愛らしい容姿(見た目は20代前半くらい)だが、結婚5回・35人もの子供がいるという猛者(?)。自分が生きた足跡を後世に残すために〈優秀な遺伝子を手に入れて優秀な子供を作る〉という選択をした結果であり、ゲートの暴走事故をきっかけに知遇を得たロックに、自分の子供の父親になってほしいと持ちかける。

 トラウトマン大尉は自分にとって幼少期からの「ヒーロー」だった超人ロックを「子づくりの道具」にしようとしているセスに反感を抱いていたし、同様の理由から彼女を嫌う読者も多いんじゃないかと想像するが、個人的には結構好きなキャラ。頭の回転も行動も早く、科学者として一定以上の能力は持っていてもハンザ博士のような天才ではないと自分を客観視できる冷静さもある。ロックに対しても変に色仕掛けに出たりはせず、優秀な遺伝子を継いだ子供を残したいから子供の父親になってほしいとストレートに持ちかけている(ロックとの会話を通して小細工の通用しない相手と見切ったからかもしれないが、それはそれで優れた洞察力の証である)。何よりその好判断と人脈(いろんな研究機関の要職についている実子の存在)を通じて一連の事件の解決に大きく貢献した。オーティス・グエン博士に最初に連絡を取る場面〜小型のジェネレーターを作るよう彼を説得するシーンあたりのてきぱきした行動力は胸がすくようである。

 セスを見た人間が真っ先に反応するのはやはりその美貌なのだが、彼女の番組に出演したハンザ博士が「天体? 物理学博・・・士 あれが?」と白目になってたり、「おかたい番組」を想像しつつ視聴したアイザックとロックがセスの顔を見たとたん、「おっ」「「おかたい」・・・ですか?」と目が点になってたりするあたり、なまじ可愛すぎるがために学者らしく見られない、不当にその能力を低く見積もられてしまっているように感じる。ただ一方で最初に能力を低く見誤ったぶん、話すうちに彼女の優秀さを悟れば評価が(初印象から優秀と思っていた時以上に)爆上がりするだろうし、小難しいイメージの教養番組が彼女がインタビュアを努めることで素人にも取っつきやすくなっている面もあるだろう。おそらくセス効果で番組の視聴率は結構良いんではないだろうか。

 また彼女が〈子供の父親〉探しをするうえで、容姿がプラスが働いている部分も当然あると考えられる。5回結婚してるということは、相手の男性が単に精子を提供するだけでなく結婚という形式を望んだ、もしくは今は「恋愛なんて ただの幻想よ 子孫を残す本能を美化してるだけ」と言い切るセス自身がかつては恋愛や結婚に「幻想」を抱いていたかのどちらかで、恋愛とその結果としての結婚にはやはり美形の方が有利だからだ。セスが美貌によるマイナス効果も経験しつつ、若返りを繰り返して(はっきり若返りに言及してはいないがあの若々しさは当然そうだろう)美貌を保ちつづけているのは、マイナスを覆すほどのプラス面がやはり大きいからではないか。

 ちなみにソトマイヤー博士(12番目の娘)をロックに紹介した件について、トラウトマンは「取引もちかけたんじゃないの? 専門家紹介するから DNAよこせって」と疑い、ロック自身も「まだあきらめてない・・・?」と尋ねていたが、セスは「私は ただ よいお友達になりたいと思っているだけです」と回答し、実際その後ロックに迫った形跡はない。そうそう大人しく引っ込むタイプとも思えないのだが、やはりアイザックの言う通り「ハーン博士が古ぎつねだとしても ロックはそれ以上の 古だぬき」だったためにさすがのセスも太刀打ちできなかった、ということかな。

 

 

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