リアンナ・ミゴール

 

 『コズミック・ゲーム』登場。銀河連邦軍のミゴール将軍の一人娘。大学の研究テーマである「自然主義者」(現代でいえば「アーミッシュ」みたいな感じか)の生活様式を調べるため彼らのコロニーに向かう途中で、そのコロニーをわけあって追い出されたロックを拾う。

 私は『炎の虎』を先に読んでいて、ここで〈ロックがはじめて心を開いた少女〉と説明されていたため15、6歳だと想像していたのだが、実際には大学生なので(後には連邦軍に入隊したし)もう少し年上のようだ。リアンナに生き写しのマリアンが21歳だからリアンナも20歳前後といったところか。

 いかにも親に愛情を注がれて何不自由なく育った(母親の姿がないのでおそらくすでに亡くなってるのだろうが、かえってその分も父親に溺愛されたんではないか)お嬢さんらしい大らかさと怖い物知らずの大胆さを持った少女。とはいえ初対面の少年をろくに事情も聞かずに自宅に連れ帰り、そのまま居候させてしまったのには驚く。犬や猫を拾うんじゃないんだから。

 それも普通の家庭とは違う、父親は連邦軍将軍という要職についていて暗殺者やスパイに狙われる危険だってあるはずなのに(家の周辺にSPが張り付いてる気配がないのが不思議なくらい。機械による高度なセキュリティシステムがあるから人間のSPはいらないということなのか)、身元のよく分からない人間を同居させるというのは将軍の娘という立場を思えば軽率と言わざるを得ない。まあこれはむしろ娘の我が儘を掣肘できない将軍の方が問題という気もするが・・・。

 もうひとつ「ん?」と思ったのはリアンナがロックを引き合わせようとしたときにミゴール将軍が「また新しいボーイフレンドかい?」と尋ねていること。ボーイフレンドといっても恋人ではなく親しい男友達というニュアンスだろうが、それにしても付き合ってる相手がころころ変わるないしは複数いるのか?ロックをあっさりと拾ってきたのも移り気な女の子の気まぐれなのか?と感じてしまったのだ。まあロックについては〈男性〉というより〈子供〉として捉えてるようだし、だからこそ同居までさせることに抵抗がないんでしょうが。

(余談ながら『コズミック・ゲーム』のロックの外見年齢はいくつくらいなのか。個人的には10歳程度に見えるのだが『インフィニット計画』のロック・マクミランはもっと、絵柄の変化を抜きにしても外見も性格も幼く見えるのに12歳だったし、ミゴール将軍は「(ボーイフレンドには)ちょっと若すぎ」と言ってるのだが、エリカは「あんたみたいな子供」と言っている一方でロックがリアンナの名を口にしたとき「恋人?」と尋ねてるので、恋人がいてもおかしくない年齢(13歳くらい?)にはなってるのかとも思える)

 ただそんなリアンナだからこそ一時だけでもロックの〈帰る場所〉に成りえた。彼女が自分を拾ってくれた時、コロニーを追い出され孤独感を深めていたロックは、なぜこんなに親切にしてくれるのか不信感も抱いたろう。本当になんの裏もなしに純粋に同情と優しさだけで助けてくれたのだとわかった(少し思考をのぞいてみたかもしれない)時ロックは驚愕し、そして心底嬉しかったと思う。ロックは彼女に惹かれ、同時に正体を知られて彼女の好意を失うことに脅え、そんなロックを見てリアンナは「あの子にはあたしが・・・・・・ 必要なんだわ!」と感じる。ロックを愛した女性は数多いが、「超人」ロックに〈自分が守ってあげなくちゃ〉との想いを抱いた女性は珍しいのでは。

 そしてこの同情、保護欲はいつか本人も自覚しないうちに愛情へと育っていった。けれどそれをまだ実感できないうちに彼女はロックの正体を知ることになり・・・。致命傷を負ったはずが平然と起き上がってくるという状況、しかもバレンシュタイン大佐から「彼は人間ではない」なんて聞かされただけにその瞬間は畏怖の念が先に立って思わずロックの握手を拒んでしまったが、別れを告げて去っていったロックを追って宇宙港に駆けつけているから彼に会いたい、もう一度会ってちゃんと釈明したいという思いはあったはずだ。のちにロックは『炎の虎』でリアンナのことを〈ぼくを受け入れようとして できなかった〉と話していたが、このときリアンナが間に合って話ができていても同じ感想だっただろうか。ディナールから戻った後に再会するものの、そのときはもうリアンナはすっかり性格からして変わってしまっていたし。

 このリアンナ再登場時の変貌は多分に意外だった。連邦軍人になってたことにもだし、そもそも爆弾がアンデス市を直撃したのに巻き込まれたのがひっくり返った車の絵で暗示されていたので五体満足で生きていたこと自体に驚かされた。そのうえあの無邪気だったリアンナがすっかり冷静沈着になって、かと思えば妙にヒステリックな部分もあり、いずれにしても以前の彼女には見られなかった言動だ。

 変化の理由はすぐに明らかになる。爆弾直撃のさいに彼女をかばってアントノフ大尉が亡くなったこと、リアンナ自身も放射線を浴びてあと数年しか生きられない体になっていたのだ。短期間に何度も倒れたりしてるところを見ると、まだ一応勤務はこなせているもののまともに動けなくなるのもそう遠くないだろう。そんな状態でありながら、リアンナは自分に残された時間を自分をかばって死んだアントノフ大尉のために使おうとしている。彼女は「あのひと・・・ あたしを愛していたのよ!」とだけ言い、現在自分が彼にどんな感情を持っているかには触れていないが、残り少ない余命を捧げようとする、それはやはり“愛”であろう。

 戦争が終結した後リアンナはどうしたのだろう。大尉の敵というべきレイザークは死に、彼のために何かしたいという想いには一区切りがついた。軍の中でもプライベートでも庇護者であったはずの父も戦死した。ロックも彼女のもとを三度去っていった。おそらくは退役して闘病生活に入ったのであろうが、せめて彼女に残された日々が穏やかなものであってほしい。

 

 

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