『REPLAY』

主なキャラクター:ロック、エスパーの男、その相棒

 

 ファンブック(?)『TO YOU』のために描き下ろされた短編。何と全ページカラーという豪華さ。

 全16pと短いだけに内容はそう深くない、というか説明されない部分が多すぎるのだが、『ロンウォールの嵐』で明らかにされたロックの定期的「再生」がどんなものなのかを描いたという点で貴重。

 とはいえ〈ロックが赤ん坊になりました〉だけじゃお話にならないので、「再生」のためにロックが無防備になるスキをついて彼を殺そうとする〈敵〉が登場するのだが、この〈敵〉がまた謎に満ちている。短編作品で、とくにバックボーンが説明されずにロックの命を狙う人間というとたいてい賞金稼ぎか殺し屋なのだが、この男は100年もの間ロックをつけ狙っていたという。となると殺し屋(=誰かの依頼で動いている)とは思えないし、さしもの(?)ロックも100年間賞金首であり続けた(為政者から狙われ続けた)りはしないだろう。明らかにこの人物の行動は個人的な執念に基づいているが、だからといって復讐目的にしてはロックに憎しみを抱いている感じがしない。

 あと考えられる動機はもう、〈自身の強さを(自分に対して)証明するために宇宙最強のエスパーを倒したい〉くらいじゃないか。100年もの間ロックをストーキングして「再生」の間隔を割り出した(ということは100年のうちの最低でも2回は「再生」を行っているわけだ)恐るべき執念も、それなら納得できる。しかし他人がロックの「再生」の時を日にち単位まで正確に突き止めているのに対して、ロック本人は過去の女たちの幻を見て「そうか もう再生の・・・・・・」と気付くのんきさ。

 赤ん坊に返ったロックというと思い出されるのは『コズミック・ゲーム』ラスト。赤ちゃんロックは首尾よく通りすがりの人の良さそうな夫婦に拾われているが、これはたまたま親切な人が通りかかったということではないだろう。赤ん坊になってしまえばさすがのロックも生き延びるために親代わりになってくれる人が必要なわけたから、「再生」前にあらかじめ良さげな人(たち)に催眠暗示をかけて自分を拾うように仕向けてるんじゃなかろうか。『コズミック・ゲーム』の夫婦が赤ん坊に「ロック」と名をつけたことからしてもその可能性が高いだろう。きっと『ロンウォールの嵐』でもそれ以前にもこうしたことを繰り返してきたに違いない。

 それだけに『REPLAY』を読むと、こんな人里離れた場所で「再生」を始めてしまったら拾ってくれる人が現れるまで生き延びられるのか(『スター・ゲイザー』ではラグともども空気がない宇宙空間でも平気だったから一般人レベルで彼の生命力を量ってはいけないのだろうが)、そんな人がいつ現れるのかと心配になってしまう。「再生」のおよその時期を念頭においてそろそろとなったら、親候補を物色し暗示をかける、少なくとも最低限人が通りかかる環境で「再生」を迎えるよう事前準備しとくべきだろうに。

 ラストで思いがけずロックの「再生」に巻き込まれてロックともども赤ん坊返りしたとおぼしい男は結局どうなったのか。いつか誰かが通りかかって拾ってくれるまでロックの命はどうにか持ちそうだが、この人がロック並みに生き延びられる気がしない。相棒が異変に気付いて迎えに来て、赤ん坊の正体を悟って里親を探してくれるといいのだが。悪役&自業自得とはいえ赤ん坊がのたれ死ぬのでは後味が悪いですから。

 

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