ユリアフ・ラインハルト

 

 『聖者の涙 Part2』登場。アフラ配下のエスパー。辺境惑星リノーラの出身。不幸な生い立ちからグレたあげくに捕らえられ、辺境特有のエスパー差別ゆえ残忍に処刑されかけたところをアフラの部下に救われる。以後アフラに心酔し、忠実に仕えるように。同じくアフラ配下のエスパーであるエルナが暗殺や敵襲への反撃などもっぱら荒事担当なのに対し、バロン・シナツエを殺さずに口封じしにきたついでにロックを「工場の星」に案内するとかサスーン・ハイデッガーのもとに待機してイセキたちを迎え撃つとか、荒事込みの外交担当といった感じ。まあエルナでは外交は務まらないから自然とそうなるんだろうが・・・。

 『聖者の涙』はイセキといいルイーズといい、表面的性格及び周囲との関係が別人のように変わったキャラクターが多いのだが、一番の変わりっぷりを見せたのは彼ではないだろうか。ロックやイセキのような敵に対しても丁寧でへりくだった態度を崩さなかった彼が、終盤はすっかりくだけた言葉遣いと雰囲気に。それ以上にアフラの忠実な僕だった彼が、アフラに反逆し彼を殺した(直後に生き返り最終的にはイセキが倒したが)のだから180度の転換といっていい。

 にもかかわらずなぜラインハルトが変心したのか、その理由はもう一つはっきりしない。確かにイセキとの戦いがもとで暴走して一応は味方側のはずのハイデッガーを襲って返り討ちにあったさいに、アフラが自分を見ていたはずなのに助けてくれなかったことに対し怒る場面があり、それが変心のきっかけだったような描写はある。ただ「なぜなにもしてくれなかった? なぜだ!」と言いながら〈神の沈黙〉の真意を知ろうと考え込むようでも突如湧き上がったアフラへの不信感に懊悩するようでもなく、早々に打倒アフラに走っているのはなんなのか。これまでの信仰心を思えばアフラを裏切るについてもう少し葛藤があってよさそうなものなのに。

 これはラインハルト自身が想像しているように、彼の忠誠心がもともと「何か「薬」を盛りやがった」ことによって作られたものだったせいなのだろう。辺境のごろつきだったラインハルトがアフラの部下になったのは処刑されかけたところを救われたからで、普通なら感謝の念が心酔に成長したのかと思うところだが、ロックの「で・・・ 君は そのアフラ様に忠誠を誓ったわけか?」という問いにラインハルトははっきり「いいえ」と答えている。最初は「助けたことを恩にきせて なにかに利用するつもりなんだろうと思って」、むしろアフラに不信感を持ってさえいた。それが実際アフラに会ってみて変わったのだという。「信じられませんでしたよ あんな人がこの世の中にいたなんて」という台詞は、アフラがよほどのカリスマ性なり客観的にはアレだとしてもラインハルトのような人間の心には響くしかるべき理念なりを有していることを匂わせていて、何に心酔したのか具体的な話はおいおいわかるんだろうと思っていたが、大分ストーリーが進んでもそのへんは明らかにならない。これも彼の忠誠心が薬によって喚起されたものとすれば、もともと具体的な理由などなかった、直接顔を合わせたさいに薬を盛られて洗脳されたことが、すでにこの台詞の曖昧さによって暗示されていたのだと納得がいく。おそらくはイセキと戦ったさいに精神の箍が外れたことによって薬の影響力が薄れ、本来の自我を取り戻したという流れなのだろう。

 ところで洗脳に用いられた薬とはなんだろうか。はっきり描かれてはいないが個人的には「ソーマ」の可能性が高いように思える。「ソーマ」に高い洗脳力があるのはアフラがロックに語った通りだし、終盤「ソーマ」に満ちたアフラの体液(唾液?)を注入された直後のラインハルトの態度が一時洗脳時代のラインハルトに戻っていたからだ。彼はソーマなしで生きられない体になってはいないが、アフラはロックに「ソーマ」を使ったさいに、〈「ソーマ」が中枢神経に到達すれば「ソーマ」なしでは生きられない体になる、それまでは不安定な状態が続き暗示にもろくなる〉と語っているので、中枢神経に到達するには至ってないのだろう。むしろ洗脳が有効なのはイコール「ソーマ」末期患者でない証拠といえる。だとすればラインハルトは「ソーマ」を使用したことはないかのようにハイデッガーに話していたが、実は知らないうちに使われていたわけだ。

 かくて洗脳が解けたラインハルトはアフラを倒し自由の身となったわけだが、その後何をしているのだろう?「聖者の涙」の普及活動を続けているリサ及びすっかり彼女の協力者(&パートナー?)となっているイセキと和気藹々と話していること、リサたちより早く「トロデフ」の最新情報つまりはルイーズの活動状況を把握しているということからすると、彼もまた「聖者の涙」普及のために宇宙を飛び回ったりしてるのだろうか?麻薬撲滅に興味持ちそうなキャラじゃない気がするのだが。ただラスト付近の彼の気の良さそうな、フットワークの軽そうな雰囲気を見るに、自身の信条うんぬんではなく〈友達甲斐に〉リサやイセキに力を貸してやろうと考えても不思議じゃないかも。「○○が気になるのか?おれちょっと行って様子探ってきてやるよ」みたいなノリで動いてくれそう。ともあれ彼の様子からは飄々と楽しく第二の人生を送っている気配が感じ取れるので、何にせよそれなりに幸せに生きているのには違いない。同じアフラ配下のエスパーで同じくアフラに反逆したエルナとは対照的なハッピーエンドを迎えたといっていいようである。

 

 

 home

 

 

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO