『愚か者の船』

主なキャラクター:オーギュスト、クミドメニコ・ルスカリサ(レマ)ロック

 

 惑星セレンのコンステレーション造船は彼らの不正を調べているエスパーの女記者クミ・ニールセンにエスパー専門の殺し屋をさしむける。一方、宇宙船撲滅を叫ぶテロ集団・インナークロスのメンバーを捕らえた警察は、「精神爆弾(サイコボム)」という謎の言葉を聞き出す。

 宇宙船「ペネロープU」に搭乗していたクミは、記憶喪失の女リサに危険を警告された直後に部屋で何者かに襲われるが危うく命拾い。船中で知り合ったセールスマンのドメニコ・ルスカは事情を聞いて部屋の交換を申し出るが、実は彼こそが殺し屋本人だった。自分の正体に気づいたクミをドメニコは殺そうとするが、そこにリサが立ちふさがる。

 その頃エスパーの少年オーギュストは薬で狂わせた犬の狂気をESPで増幅放射して船員の精神を破壊、発狂した彼らは自ら殺し合い船を壊しはじめる。これこそが「精神爆弾」の正体だったのだ。乗客のパニックの中、リサはクミの力を借りて反応炉の暴走を止めようとする・・・


  インナークロスが登場し、『マインド・バスター』『虚空の戦場』と続く汎銀河戦争のプロローグとなる作品。ミステリー的要素を折り込んだパニックもの、といった感じで、船員の狂気や乗客の恐怖の描写は大迫力である。

 なぜオーギュスト(あるいはライガー教授)は乗務員を殺すのでなく発狂させるという手段をとったのか。おそらくは単純に船員や乗客をESPで殺すよりも、客の安全を守るべき船員が全員発狂して暴れだす方が乗客のパニックが大きくなると踏んでのことだろう。乗員の命よりも人間性を奪う方が主眼だったのだ。たしかにその方が社会的なインパクトは大きい気がする・・・もっとも乗員全員死んだ場合精神爆弾の何たるかも伝わらないが。

 ともかくも狂信者の少年一人(仲間はいちおういるが大したことはしてない)に最高級の客船が破壊されてしまうわけで、なにやら無常感が漂ってくるのだが、読後感がさわやかなのはクミとドメニコの〈友情〉のゆえだろう。

 二人は殺し屋とそのターゲットという関係であり、ましてドメニコはエスパーに憎しみに近い偏見を持っていた。その彼らがぎりぎりのところで助けあい、最後は笑顔で別れる。無常感のなかにも希望を最後に残したラストは『超人ロック』の世界観を象徴しているようでもある。

 それにしてもここでインナークロスのテロ被害者の一人だったロックが、『マインド・バスター』でともかくもインナークロスに参加してしまうのは何とも皮肉な展開である。

 

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