ニムバス

 

 『ソード・オブ・ネメシス』『オメガ』登場。宇宙海賊(リメイク前の『ニンバスと負の世界』では「スカイシャーク」という名前だったが、リメイク後はISCの艦がニムバスの乗る船を「キャプテン・ニムバスの「ネメシス」です」などと呼んでいるので「キャプテン・ニムバス」がチーム名でもあるようだ)で強力なエスパー。「生きている岩」の力を使って「むこうの世界」にアクセス、「むこうの世界」を拡張させて「この世界」を飲み込み全てを滅ぼそうと企む。

 社会からはみ出したエスパーたちを集め、自由な生き方を求めて海賊になるというのは「エネセス」やその後身というべき「自由の船」にも通じるものがある。というよりエスパーが海賊になる場合、だいたいエスパーであるがゆえに受けた迫害が背景にある。エスパー差別と無関係に海賊になったとはっきり言えるのは家族の敵討ちのため海賊になったロード・レオンくらいでは。

 それはさておき、リメイク前と後で別人のように変わったキャラクターが多いなか、ロックをのぞけば一番原型を留めてるのが彼だと思います。戦闘中でも紳士的な態度、クールかつダンディ、本心がまるで窺えない非人間的な雰囲気・・・。もちろん大きく改変された部分もあって、その最たるものが実は1500歳を越えているとの長命設定が消え、それに関連してコンピューター・オメガに洗脳され傀儡とされた設定もなくなったこと。その代わりというべきか、長命キャラ(?)として18万歳以上の「生きている岩」が登場、ニムバス自身も『オメガ』において閉じられた「むこうの世界」で数千年もの時を生きることになる。『ニンバスと負の世界』『この宇宙に愛を』が描かれた時点では単に〈最強のボスキャラ〉という意味合いで付けられたんだろう「オメガ」という名前を、始まりも終わりもない時空で無限増殖し続ける自分自身の最終形態、「アルファ」に対する「オメガ」へと転用したのは見事。ニムバス=オメガになったことで実は機械の傀儡にすぎなかったガッカリ感が払拭され、より魅力的な悪役へと成長した。

 その一方で彼の動機についてはますます謎が深まった。なぜニムバスは元の世界を消滅させようとしたのか?「憎悪」を「最も身近な感覚」と呼ぶほどの深い憎しみはどこから来たのか?ヘルガが垣間見たニムバスの荒涼たるインナーワールドと封じ込められた記憶の毒に満ちた雰囲気からは、彼もヘルガと似たようなエスパーゆえの差別と迫害にさらされてきたことが窺えるのだが、あれが本当の記憶である保証もない。憎悪と悪意が剥き出しの「オメガ」に対し、『ソード・オブ・ネメシス』の頃のニムバスは憎しみを原動力に生きているにしてはいささか態度が冷静すぎる。それだけ自制心が強くて、自ら記憶を封じることで表面的には平静を保てているのだと解釈すべきなのか。しかしあの記憶が本物であるなら、似たような体験をしてきたヘルガにはもう少し同情心を発揮してもよさそうなものなのに、それどころか『オメガ』の終盤ではヘルガを利用し自身の捨て石にしようとしている。あれは一人で数千年を生きて歪んだ果ての行動で、かつてのニムバスはヘルガに対してもっと人間らしい情愛を持っていたとも取れるが、肝心のヘルガが「気がついていたの 初めから 利用されてるだけだって」とニムバスは一度たりとも自分を愛したことはなかったと明言してしまっている。完全に人間やめてしまった感がある「オメガ」はともかく、人間やめる前のニムバスもそんなに情がないものなのか。彼が本当は何を考えていたのかは、どんな経緯で「岩」を手に入れたのかと並んで、結局よくわからないのだった。上で書いたように、この内面が窺えないミステリアスさが彼の魅力なんですが。

 

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