ニア(『ライザ』)

 

 『ライザ』登場。ロックの友人。ロックに「お姫さま」と言われていたがいわゆる王女なのか詳細は不明(どこかの星の地方領主の娘でも「お姫さま」と呼ばれうるだろう)。本人が「いくら貴族っていっても働らかなくっちゃくえないもの!」と言ってるから貴族階級なのは確かなようだが、代々の財産で遊んで暮らせる立場ではなく、ロックが過去に関わった事件を調べていたのも「仕事の一部みたいなもの」だそう。身上調査の会社でも経営してるのだろうか。一方で政府の監察官と会うなど外交官的役割もこなしているなどいろいろと謎である。ロックについて調べていたのも、その内容をロックに報告していることと「よく調べたね ニア 大変だったろう」というロックのねぎらいの言葉から彼自身の依頼なのかと思いかけたが、熟知しているはずの自分の経歴をわざわざ他人に調べさせる理由がない(自分の過去の行動がどの程度どんな形で記録に残っているかに興味があったとか?)。あるいは他人から超人ロックについての調査依頼を受け、その人物がロックに何らかの害意を持ってる可能性を危惧して〈こんな調査を依頼してきた人間がいた〉のを友達甲斐に知らせにきたのか。それなら依頼を受けた時点で(実際に調査をする前に)すぐ報告に来そうなものだ。このあたりやはり謎である。上で「ロックの友人」と書いたが二人の関係がどんなものなのかどんな経緯で知り合ったのかも全く描かれず、レオパードに襲われた後の消息にも一切触れられないまま物語から退場してしまう。何だかすでに他のエピソードに登場済みの既知のキャラクターが少しばかりゲスト出演したような扱われようなのである。

 ところで『ライザ』をリアルタイムで読んだ人は『ライザ』前後編の間で商業誌に連載された『新世界戦隊』を読んだとき大いに戸惑ったことだろう。『新世界戦隊』にもニアという名前の、しかし外見も性格も職業?も似ても似つかぬ少女が登場するのだから。戸惑いつつも同名の別人、直前に描いた『ライザ』のニア姫の名前が聖先生の頭に残っていて、うっかり使っちゃったんだろうなーで片づけたのではないか。そして数年後、『光の剣』の連載が始まったときに古くからのファンは再び驚かされることになった(と思われる)。ここに登場するニアは明らかに『新世界戦隊』のニアのその後でありつつ外見は『ライザ』のニアとよく似通っていて、実は惑星ラフノールの「お姫さま」であることが明らかになるのである。『ライザ』『新世界戦隊』から数年を経て、当時は全くの別人としか思えなかった二人のキャラクターが一つに繋がった。『光の剣』序盤に出てくる数年前のニアの写真は、基本的には『光の剣』のニアの顔でありながら、やたらに暗い目と仏頂面に『新世界戦隊』の浮浪児ニアの面影を漂わせていて、二人のニアのギャップを埋める機能を果たしている。おそらく『ライザ』を知るファンはニア姫が「政府の監察官」と会う場面を思い起こし(レオパードに「いつもの方は・・・」と言ったことからして本物の監察官とはこれまでに何度も顔を合わせているようだ)、『光の剣』第一話の時点で早くも〈ニアがロックの協力のもとグルン・ベルクを倒して地位を回復、ロスト・コロニー・ラフノールが連邦に加盟する〉未来を予測したのではないか。『ライザ』前編の時点ですでにニアについて〈クーデターのために身一つで故郷から逃れ浮浪児にまで身を落とした王女が、やがて故郷へ戻り復権する〉設定が組み立てられていたなら、『ライザ』の彼女が〈他エピソードで登場済みのキャラ〉のような描き方になっているのも頷ける(聖先生以外の作品だったら全然頷けないところだが、『ライザ』でニアがロックの過去関わった事件を報告する中に、すでに『コズミック・ゲーム』で描かれてるディナール戦争と並んで当時まだ描かれていない「サイバー・ジェノサイド」と「ロンウォール革命」がさらっと出てきてるように、『超人ロック』では〈後に描かれる予定の作品やそのキャラクター、内容が既出作品のごとくに扱われる〉のは珍しくない。こうした〈未知のことを既知のことのように描く〉手法が『ロック』世界の宇宙史を実際の歴史のようにリアルに感じさせてくれる大きな要因になっているように思える)。『新世界戦隊』から『光の剣』を経由して『ライザ』へと至る遠大な流れに思いを致して、ファンの方々は多分にわくわくしたのではないかと思うのである。

 しかし続く『アウター・プラネット』で思いがけずこの流れはぶっつり切られることになった。ラストでラフノールは結局連邦に加盟しないまま、エネルギー吸収ボールで惑星を覆うことによって、以後何十年にも渡る完全な鎖国状態に入ってしまう。となれば「ニア姫」が政府の監察官と頻繁に会うようなシチュエーションは成立しようがない。加えて『アウター・プラネット』開始の時点ですでに彼女はランと結婚し、ラフノールの女王となっている。もはや「お姫さま」ではないのである。かくて『アウター・プラネット』が描かれたことによって『新世界戦隊』〜『光の剣』のニア=『ライザ』のニアという線は崩れた。いや、この時点ではまだしもエネルギー吸収シールドが1、2年で解除されてラフノールが連邦に加わりニアが女王でありつつ外交官として連邦の役人と折衝するようになる可能性はゼロではなかった(とうに女王である彼女をロックが「お姫さま」と言ったのは〈高貴な身分の若い女性〉程度のニュアンスで、数年越しの付き合いならではの軽口と解釈できなくもない)。しかし『スター・ゲイザー』でラフノールの連邦加盟は『光の剣』の80〜100年後なのが確定、老女の姿のニアも登場し、二人のニアは結局別人だったと結論づけざるを得なくなった。おそらく『光の剣』の執筆を開始した時点では二人のニアは同一人物だったんだろうに、それを崩したのは〈エネルギー吸収シールドを張ることでラフノールが真のロスト・コロニー=アウター・プラネットになる〉展開を思いついたからでは、と想像してます。

 ともあれ『ライザ』でのロックとニアの関係はなかなか好きだったりします。お互いに相手が男性として女性として魅力的であることを(とくにニアの方は)認めつつ恋愛感情の入り込まない、さらっとした友達関係という感じで。もしも万が一、以前ちょこっと話が出ていた〈ラフノール・サーガ〉全作アニメ化が実現する日が来たとしたら(来るのか?)、『ライザ』制作の際にはどうにかつじつまを合わせて『ライザ』のニア=『新世界戦隊』ほかのニアの設定でやって頂きたい。ロックとの会話の中で「最近うちのダンナがねえ──」なんてセリフが出てきたら狂喜乱舞ものです。そうなるとレオパードは早々にランに血祭りにあげられてロックやダンディの活躍する余地がなくなりそうだが(笑)。

 

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