モニカ・セイヤー

 

 『クランベールの月』登場。惑星クランベール開発チームの地質班チーフ。見た目には30歳前後ほどの色っぽい美女だが、実際には結構なお年。さっぱりした根に持たない性格の反面、若さに対する執着心が強く、「若返り」を繰り返して若い外観を保っている。チームの新人男性は基本口説いてみることにしてるようで(本人いわく「相手しだい」だそうだが)、ロックにもさっそく言い寄っている。狭い人間関係の中に彼女の過去の男が何人もいるわけだが、そのことでチームの雰囲気が悪くなってないのは、「月」に住む「彼ら」の精神コントロールに拠るだけでなくモニカ自身のさっぱり跡を引かない性格もあるのではないか。そもそも男に迫りまくってたこと自体が精神コントロールの影響大のようだが。

 ロックいわく「僕は 彼女が必要としているものを持っていないんです」。この「必要としているもの」とはキャプテン・タカニの補足によると「若さ」を差すらしい。彼女がこれまで関係した男たちの属性は明らかでないが、若い男揃いだとすれば、若者と付き合えば自分も若さを保てるような気がしていたのだろうか。

 ところでなぜモニカは「若返り」を繰り返しているのか。その容姿からすれば美貌を保つためだと解したくなるが、「何のために 寿命を延ばさなきゃいけないんだろって」「開発できる惑星が2つ せいぜい3つ増えるだけだわ」という台詞からすると、彼女が保ちたいのは美貌ではなく寿命、それもやるべき仕事を成し遂げるための健康寿命=心身の若さだ。しかもそうした自身の執着に「何のために」という疑念を抱きつつある。タカニの部下であるジャクソンが怪我を機に退職して故郷へ帰還しようと密かに考えてたのも合わせ、そろそろ〈チームの皆が一丸となって惑星開発に勤しむ〉よう仕向ける「彼ら」のコントロールに限界が来ていたのではないか。

 モニカが「最初の夫と別れてからすぐに」初めて「若返り」を行ったのは、これからは家庭人でなく仕事に生きよう、そのためにも若く疲れにくい体を、という考えだったのか。ラストで「月」が消滅した後モニカはロックに〈休暇を取って孫の顔を見に行こうかと思ってる〉ことを告げているが、これも「月」とともに「彼ら」が消え、付き物が落ちたことで家庭人としての側面を取り戻したということかもしれない。

 

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