『ミラーリング』
主なキャラクター:ロック、ラン、ニア、エレナ(ネオン)、カサンドラ、バーコフ、エイブル、グラント、ジロン、アーバス
皇帝計画から2年。エレナの死の衝撃から幼児退行を起こしたランは、ロック、ニアとともにひっそりと暮らしていた。そんなある日天才ハッカー「カサンドラとバーコフ」のコンビがエレナのバックアップを発見・起動し、エレナは皇帝計画を再度実行、「暗示」をエスパーに向けて発信する。この「暗示」によってエレナ復活を知ったロックは単身エレナ破壊に向かう。また「暗示」をきっかけとして記憶を取り戻したランも、エレナを「止める」ためにニアとともに後を追う。
エレナは「城」にするため軍の要塞をのっとり、連邦軍のエイブル大佐とその部下グラントはこの事件を追ううちに、2年前に行方不明となった連邦のシステム技師ラン・スヴェンセンの存在に行きあたる。一方「城」の内部に侵入したロックは抗ESPのバーコフに追いつめられ、あげく男性型になったエレナ=ネオンに洗脳されて「ツアー」に仕立てられてしまう・・・
OVA企画が先にありその原作として書かれたという、『ロック』としては珍しい形式の作品。『新世界戦隊』と『光の剣』でのランのキャラクターのギャップを埋める作品、のはずだがかえって混乱させている気も(笑)。まあ話自体もほわほわしたランも大好きですが。『光の剣』読んでて感じた「いくらなんでもニアはランを子供扱いにしすぎじゃないか」という疑問(ちょい腹立ちまじり)が、なんか納得できてしまった。あれじゃ無理もないわ。
エスパーサイド、反エスパーサイド、どちらにも敵といえる連邦という三勢力がにらみあい、それぞれにコンピューターの天才がいるという『アウター・プラネット』的な構造を軸にストーリーは進んでゆく。
エスパーサイド(ロック、ラン、ニア)はロックが洗脳されて敵にまわるわ、ハッキングとESPというそれぞれの特技を活かしてツアー(ツアール)の城を目ざすランとニアは、かたやときどきポカをかまし、かたや力を使うたび倒れる、と何やらたよりないわ、そのランは連邦からマークされてるわでハラハラさせられる。
しかし今回の「皇帝計画」は、連邦のコンピューターであるエレナが廃棄された軌道要塞を手に入れるのが比較的簡単だったろう前回と違って、無理やり要塞を手に入れた時点でもう連邦軍と衝突し、最初のエスパーたちが来るよりまえに軍の艦隊に周囲を囲まれてる。この調子じゃ消去すべきエスパーが来るまで要塞がもつか怪しいもんだ(実際もたなかった)。
攻撃をかわしきる自信があったということだろうが、一方でロックをエスパーたちの救世主=連邦への反逆者である「ツアール」に仕立てている。すでに連邦の艦隊が攻撃しかけてきてるんだから、今さら連邦にエスパーのための惑星を要求ないし要求するふりをする必要はないのでは?
どうもエレナは状況の変化など無視してひたすら愚直にランのプログラム通りに動いているようだ。ロックが『新世界戦隊』で言ったように〈コンピューターに計画は立てられない〉ということだろうか(もっともランは「エレナは学習するんだ」と言っている)。私はこのへんにエレナのランに対する〈愛〉を感じてしまうのだが(この作品のメインテーマは「エレナの純愛物語」だと思う。詳しくはエレナの項で)。
その点カサンドラは先を読むことに長けていて、彼女がイニシアチブをとっていた短い期間はまさに軍を手玉にとっている感じだった。彼女が「ネオン」に懐柔されなければ事態はまた違っていたかもしれない。
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