アンドレ・ミゴール

 

 『コズミック・ゲーム』登場。連邦軍の将軍(提督)であり、リアンナの父親。温厚ながら威厳も備えた紳士という趣だが、一人娘には全く頭が上がらない。直接の部下かはわからないが階級が下のバレンシュタイン大佐に、超能力者探しに協力させられたり自分の部下でもあるユーリィ・アントノフ大尉を通してプライベートを監視されていたり、好人物であるぶん正直あまり切れ者という感じはしない・・・。「リアンナ」の項でも書いたが、正体不明の少年(ロック)の居候を許してしまったのは、娘可愛さとはいえ連邦軍の高官という立場上やはり迂闊といわざるを得ないだろう。まあおかげでバレンシュタインがロックを発見し、最終的にロックがレイザークを倒して地球を救うことになったのだから、結果オーライとも言えるが。

 ディナールから戻ったロックがリアンナと再会したさい、リアンナが「地球とディナールが戦争してるってことを知っただけよ」と語る場面があるが、この台詞はなかなかに深い。もちろん知識としてディナールと戦争中なのは誰だって知ってただろうが、それを実感をもって捉えたのは自身が爆撃の犠牲になってからだった、それまでは迎撃ステーションがミサイルを全て防いでいたおかげで地上に被害が出ていなかったため、実際に火の粉が降りかかるまで戦争している実感がわかなかったということで、一般人の感覚としてはごく自然だと思う。

 しかし彼女の場合連邦軍高官の身内であり、一般人とは言えない。父親が地球を守るべく日々心身をすり減らしている立場であり、一般民衆に対しては伏せられてる情報についても知り得る環境にいる。にもかかわらず彼女のが一般人並みに戦争を他人事のように感じているというのは、すなわちミゴール将軍がなるべくリアンナを自分の仕事から遠ざけておこうとした、地球の危機の事など考えずに普通の生活を送らせてやりたいと考えていたということだ。彼は同僚らしい人物に毎晩ディナールのミサイルが地球に襲来する夢ばかり見ると吐露しているが、そうした不安は一切リアンナには見せず、彼女の前では明るく鷹揚な父親であり続けたのだろう。軍人としては甘い部分もあるものの、克己心に優れた最高の父親というべきだろう。

 だからそのリアンナが軍に入ることを希望したのは彼にとってはつくづく痛恨事であったと思う。彼があれだけ怖れたミサイル直撃が現実になり、最愛の娘がその犠牲となって長く生きられない体になってしまった、それだけでもたまらない苦痛だったろうが、せめてその余生を静かに穏やかに送ってほしかったろうに、リアンナは体の不調を押して地球のため戦うことを選んだ。痛々しくてならなかったろうし、事ここに至るまでにレイザークを倒すことができなかった自身の無力を責めもしただろう。

 そして最後にはレイザーク=エリカに精神を操られて味方の艦を砲撃したあげくに体当たりをかけて共に死亡、しかもその無残な最期(なにせ末期の台詞が「皇帝陛下 万歳!」である)は無線放送を通じてリアンナをはじめ多くの軍人たちに知られてしまった・・・。およそ軍人としてこれ以上ない不名誉な死に方であり、リアンナの載る戦艦ヒュぺリオンを攻撃しなかったのがせめてもである。レイザークがエスパーだということは戦争の終盤にはバレンシュタイン以外の軍幹部にも認められるようになってたようなので、ミゴール将軍以下旗艦の乗務員のそろって発狂したとしか思えない死に様はレイザークの超能力によるもので将軍ら自身に責任はないと皆判断してくれたと思いたいが。

 ディナール戦争終結からしばらくして植民星だったディナールが独立したさい、首都はミゴール将軍の名にちなみミゴール・シティと命名された。独立したわりにいかにも地球の意向が反映されたネーミングではあるが(ディナール人にとってレイザークは無理やり人民を従わせた暴君だったとはいえ、レイザークに殺された地球軍の提督が英雄になってるということもないだろう)、ミゴール将軍の名誉が失われていなかった、少なくともこの時点では回復されていたのがわかって、ちょっと嬉しい。この頃まだリアンナが存命だったら喜んだことだろうが、さすがにちょっと難しいかなあ。

 

 

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