リサ・メノン

 

 『聖者の涙』登場。少女時代にスラムで薬の密売人(?)に襲われかけたところをパパ・ラス(ロック)に救われ、彼のもとで「聖者の涙」製造を指揮するように。常にミニのボディコン着用というおよそ医師らしからぬスタイル。もっともフィクション世界の女医はたいがい美人で露出度の高い服を着ている気もする(笑)。

 第一部最終回に合わせて発売された『聖者の涙』のスペシャル本(『月刊OUT9月増刊号』。第一回から最終回手前までの全話を再録)巻末の木野聖子(こいずみまり)さんによるキャラクター紹介で「彼女が実はロックじゃないかとかなり有力視された。」と書かれていたが、実際私も彼女がロックではないかとまず疑った。もっともこの増刊号で第一回の冒頭部、パパ・ラスとリサの出会いが書き足されて以降パパ・ラスのロックらしさが増すと同時にリサのロックぽさが減少した感があるが。

 もともと医師を目指して正規の教育を受けていた、つまりはそれなりの家庭の娘さんだったはずのリサがスラム暮らしへと転落したのは、父親が麻薬で廃人になったためだった。父を廃人へと追い込んだ仇であるはずの麻薬に自身も染まってしまったのは皮肉だが、どうにも耐えがたい現実に直面したときに母親のように自死を選ぶのではなく薬に逃げたというのはある意味〈生きようとする力〉が強かった証である。その精神的強さが彼女を「パパ・ラス」と引き合わせ、彼の片腕として「聖者の涙」普及のため苦しい状況にめげず前進を続ける力となっていったのではないか。

 イセキいわくロックに惚れているそうで、本人も否定はしなかった。婉曲的な言い回しではあるが、リサの方はロックに惹かれていたがロックにその気がないのが明白だったために仕事上のパートナー以上にはならなかったということのようだ。リサはロックを誰に対しても父親のように優しい(つまり女を性的な目で見ない)と評しているが、確かに1000年以上生きてるだけに大分油っ気は抜けてるものの完全に枯れてしまってるわけじゃない(笑)。『聖者の涙』より後の時代でもロックが女性に恋愛感情を抱いた例はあるのだから(ミラがその代表格)、たまたまリサはそういう対象じゃなかったんだろう。彼女のことを名前で呼ぶことさえないしなあ。まあロックに限らずホークもいつのまにかリサといい雰囲気になっているイセキも彼女を「ドク」としか呼ばないんだけども。

 もっともリサの方も、ロックを慕っていればこそ彼と男女の関係になることを望んでいなかった可能性もある。父のために夢もそれまでの生活も失った彼女を拾い上げ、正道ではないながらも医師になる夢を実現させ、麻薬に冒された人々を救うという生き甲斐も与えてくれた「パパ・ラス」は、いわばリサにとって第二の父親というべき存在だったのではないか。

 とすればそのパパ・ラスが「ソーマ」のために正気を失って自分たちを襲撃したというのは、かつての父の惨状を想起させるショッキングな出来事だったはずだが、リサは意外と冷静に事態に対処している。イセキをたきつけてロックの心の中を探らせ、さらには「聖者の涙」を使うという判断によってロックを正気に返すことに成功している。アフラに操られて仲間を攻撃しながらもぎりぎりのところで死傷者は出していないロックへの信頼感、そしてロックとともに9年間修羅場をくぐりながら麻薬中毒患者の治療にあたってきた経験値があればこそだろう。

 そんなリサをロックも医師として人間として最も信頼していた。表向きは死んだことにして「工場の星」に向かうにあたって、ロックが「聖者の涙」の今後を託したのはリサだった。心から敬愛する人からそれだけ信用を置かれている、それは恋人として選ばれること以上にリサにとっては最大の勲章だったのではないかと思えるのである。

 

 

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