ラフノール・王位の変遷

 

 『アウター・プラネット』の時点でのラフノールの王はニアである。ランはライオットに向かって「ラフノールの王」と名乗っているが、これはあくまで、ニアともどもラフノールを治める立場としてラフノールの国民を守ってみせる、という気概を表したものであって、ラフノールの閣僚?もロックもラン自身も、ニアを「女王」と言っているのだから、正式のラフノール王はやはりニアのはずである。

 が、80年後(100年後という記述もあり。どっちなんだ?)の『スター・ゲイザー』では、「国王陛下」と呼ばれているのはランの方だ。連邦軍にもラフノール王は「ロドス・モルク・ラン国王」だと伝わっている以上、彼が正式の国王と見て間違いなかろう。どうも『アウター・プラネット』から『スター・ゲイザー』の間でニアからランに譲位が行われたらしいのだ。

 『アウター・プラネット』でしばらくラフノールを留守にしてても何ら支障がないらしいあたりに単なる〈女王の夫〉(女なら王妃にあたるんだろうが)にすぎないランの立場の微妙さがうかがえるので、彼にしかるべき身分を用意した、という感じだろうか。よそ者が王様になるほうがもっと微妙な気もするが・・・。

 じゃあニアの身分はどうなったのかというと、スコラ版以降の加筆部分で「ラフノールの司祭長」と名のる場面が出てくる。司祭長(祭司長)とは、かつてのグルン・ベルクの役職であり、要はラフノールの宗教におけるトップである。しかし『光の剣』でグルン・ベルクが「ラフノールの祭司長」と名乗っていたところからすると当時彼は国王と祭司長を兼任していたようだが、ニアが司祭長になったのが『アウター・プラネット』以降なら、彼の死後当分は祭司長不在だったのか?

 ここからは完全に想像になるのだが、おそらくグルン・ベルクの死後は前祭司長(名前が初出のさいにそう紹介されている)だったヴェルト・ニムが祭司長に返り咲いたのではないか。「グルン・ベルクのワナにはまって殺された」と思われていたということは、事実はともかく〈グルン・ベルクによって不当に地位を奪われた〉と解釈されるような状況があったんじゃないか。

 ならばグルン・ベルク亡きあと、彼が〈あるべき地位を回復〉するのは自然なことだし、ニアが王位を取り戻すにあたってのヴェルト・ニムの貢献度を考えれば当然の処遇といえる。年若い女王夫婦の後見役として見ても最適の人物だ。そのヴェルト・ニムが引退したかあるいは亡くなったかしたので、空位になった司祭長の位にニアがついたのだろう。

 ではなぜランが司祭長になるのでなしに、彼に王位を譲ってニアが司祭長になるなんてややこしいことをやったのか。おそらくこれはランが「沈黙の神殿」での修行をしていないためだと思われる。ラフノールの行者=エスパーはみな沈黙の神殿で修行をするものらしい。王女だったニアも幼い頃にこの神殿で学んだらしい様子が『ミラーリング』の回想シーンに出てくる。それに対しランは前祭司長のヴェルト・ニムからじかに超能力の手ほどきを受けているものの、行者としての正規の修行コースを経てはいない。ゆえに司祭長にはなれなかった、ということであろう。

 ただこれについてはやはりよそ者のラグがのちに祭司長になった例がある(作中でははっきり書いていないが、『TO YOU』所収のキャラクター座談会の人物紹介で「ラフノール祭司長」となっている)。ラフノールに住み着いたのち、レマと一緒に修行したんだろうか。ラフノールに定住を決めたとたんに結婚やら奥さんの即位やら前王権残党との対立やらで忙殺されたろうランと違って時間的には余裕があったかもしれないし。

 ともあれ、ラフノールに政教分離はない、というのは間違いなさそうである。

 

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