われナベにとじブタ −ラン&ニア−

 

 なんだかもうこのコーナーは彼らのネタしかないみたいで恐縮だが、またもやランとニアの話である。

 トップページにも書いてあるように私はランのフリーク的ファンなのだが、そのくせ(だからこそ?)彼の欠点なら山ほど数えあげられる。短気だし、思い込みは激しいし、キレるととことん過激に走るし・・・。そんなところも含めて好きなんですけども(笑)。

 一方彼の伴侶たるニアの方も相当欠点だらけである。真面目さ・責任感の強さゆえにしょっちゅうピリピリしてるし、それが高じたヒステリックな言動が散見されるし、ときどき高飛車だし、しっかりしてそうで存外神経が細いし・・・。

 しかしこの二人が上手くかみ合うと結構なパートナーシップを発揮する。わかりやすい例が『ミラーリング』だろう。そこそこ優秀なエスパーだけどもいかんせん体力がなさすぎて力を使うたび倒れるニアとコンピューター関係には万能ながらときどきポカをやらかすランが、もひとつ頼りないながらも互いの欠点をフォローしあいながら旅をする過程はなんだか微笑ましい。

 単に能力的な問題だけではない。ニア一人では神経質すぎて、ランだけではのんきすぎて目的に到達するまえに自滅していただろう。二人の対照的な性格が幸いしたといえる(ちなみに上手くかみ合わないと『ミラーリング』導入部のような悲惨なことになるわけだが)。

 上でも書いたが、常にイニシアチブを握っていること・ESPが強い(『光の剣』の半ばまでは)こと・本人の言動などからニアの方がランより精神的に強そうな印象があるが、実際にはランの方がはるかに神経は太いと思う。たとえば『ミラーリング』で、連邦の船に潜りこんださいエレナの暗示で飛び起きたニアを気遣うシーン。ランにも暗示は届いているのだが、ニアが動揺しているのに反して彼はかなり冷静である。まあこれはランがニアやロックと違ってエレナを完全には〈敵〉と見なしていないせいでもあるだろうが。

 また『光の剣』で「祖先の島」に向かう船上、殺人鬼エルミの手にかかった行者フレックの斬殺死体が発見されたさいの二人の反応の違いも興味深い。ランが一目みて顔をそむけたのに対し、ニアは目をそらさずに死体の始末を命じている。一見度胸が据わってるようだが何気なく服の袖で口元を押さえている。この晩悪夢にうなされたとしたらそれはきっとランではなくニアの方だったろう。ランは感情がすぐ表に出るしそもそも隠そうとすらしてなさそうだが、ニアは出来ない無理もして内に溜め込んでしまうので思わぬところで折れてしまうのだ。

 それがもっとも如実に表れたのがドラクサ山?(『光の剣』)でニアが倒れる場面である。「すこし休もう」というロックに「だい・・・じょうぶよ」と答えた矢先である。しかも高熱でそのまま寝込んでしまう。本当にとことん限界まで我慢していたわけだ。

 一方いかにも都会育ちらしく山登りがしんどそうな様子で当初から文句たらたらだったランの方は、山を降りるかどうかをめぐってロックと派手な立ち回りをやらかしその後ヴェルト・ニムとも一戦交えるほどに元気である。小学校のころ先生から「山登りのときは辛いの苦しいのとグチをこぼしてる奴は案外平気で、文句をいわず黙々と歩いてる子の方があぶない」と聞かされたが、この二人それを地でいっている。

 そもそも精神面の問題のみならず、上でも書いたとおりニアはとにかく体力がない。あの華奢な体格では無理もない気はするが、そのためにせっかくの能力を生かしきれていない感じがする。

 一方のランは少女めいた外見に似合わず、その体力は異常なほどである。何といっても殺人鬼エルミに「いますぐは 動かせない」ほどの重傷を負わされ、ロックの治癒能力のおかげでなんとか命をとりとめた(治癒能力は新陳代謝を加速させるので体力を相当に消耗させる)その数時間後(夜明け頃)には「祖先の島」へ向けての総攻撃に普通に参加、雑魚敵を倒しまくり、グルン・ベルクを倒し、ニアにとりついた「死人ごけ」を中和までしてピンピンしてる・・・。ヒーローの特権ですかね。

 『ミラーリング』でのデコボココンビぶりも可愛くてよいけれど、個人的に彼らの関係がベストの形におさまっているのは『アウター・プラネット』であると思う。『ミラーリング』や『光の剣』と大きく異なるのは、明らかにイニシアチブがランに移っていること。自然にランに甘えられるようになったことでヒステリックな態度の消えたニアは、雰囲気も体の線も女らしくなった感がある。出番は多くないものの、『アウター・プラネット』のニアは本当に綺麗で可愛いと思います。

 ランに関しては、『アウター・プラネット』で最初に登場した場面(ニアとのツーショット2ページ分)を見たとき、ずいぶん大人びたなと感じた。内面はもとより外見も。しかし後のG・F社に乗り込むシーンなんかを見ると『光の剣』ととくに変わらない。だがラスト少し前、ニアとの再会シーンを見るとやっぱり大人っぽく見える。ニアとの身長差からすると背は伸びたようだが顔は別に変わっていないはずなのになぜだろうと考えた結論――ニアに向ける目がものすごく優しいんである。穏やかで、いたわるようで。G・F社に潜入する意志をニアに告げるシーンでも、〈自分もいっしょに行く〉というニアの願いを「だめだ!」の一言で簡潔に却下(『光の剣』以前では考えられない台詞だ)したあと、子供に言い聞かせるような言い回しで却下の理由を丁寧に説明し(少し後にロックも同じ内容の台詞をニアに語っている。これと比較するとランの言葉の〈優しさ〉がよりきわだつ)、それでも不安気な彼女に「心配ない」と自信を込めた笑顔を向ける・・・うーむ完璧。

 『新世界戦隊』を読むとわかる通り、ランは本来頭の回転も速く、行動力・判断力にも優れている。なのに『光の剣』でそれらの資質があまり表に出てこないのはひとえに彼に自信が欠けていたからではなかったか。ニアにはエスパーとしても人間としても半人前扱いにされ(実際この時点ではニアの方が強いんだが)、すぐそばにはロックという全方向に秀でた到底越えられそうにもない巨人がいる。「本気でぼくを殺す気なんだ ぼ・・ ぼくが半人前だとおもって」「ニアにとってぼくは いつまでたっても半人前なんだ そりゃ・・・ロックにくらべりゃ半人前かもしれないけど」なんて台詞に彼のコンプレックスの深さを感じる。

 しかるにニアの愛情を勝ち得たことでこのコンプレックスは雲散霧消したようだ。どうもロックに対するコンプレックスの大半は「ニアは ロックが好きなんだ」という〈誤解〉に基づいていたものらしい。かくて自信を得たランはかつて持っていた美質をとりもどし、それがあの余裕の笑顔につながったものだろう。

 〈打たれ強い〉ランがリードし、〈打たれ弱い〉ニアがちょっと彼にもたれるというスタンスが、この二人には一番ふさわしいのではないだろうか。・・・なんか今回「考察系」というより感想文みたいになってしまった。

 

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