ランは電子使いか?

 

 ・・・とタイトルには疑問符がついているが、これははっきり結論が出ている。『ミラーリング』連載時の読者コーナー(「ずーぱーまん倶楽部」)でコーナー担当の潮藍さんが聖先生の発言として「一応ランは電子使い」と書いているからだ。

 これを読んだとき正直いって驚いた。考えてみれば〈コンピューターの天才〉〈連邦にもそうはいないレベルのエスパー〉という二つの才能が別個のものとして存在しているよりは、〈超能力者(電子使い)だからこそコンピューターの天才たりえた〉というほうが自然ではある。

 にもかかわらずランが電子使いである可能性を思いつきもしなかったのは、帝国時代を通じて登場する電子使いの家系に由来する。リートもフリーマン教授もミーシャも能力がエレクトリックスキャンに特化しているようで、それ以外のテレポートやテレキネシスを使う場面がおよそ出てこないからだ。ランやラグ、レオンのような戦闘向きの超能力を複数使いこなすタイプのエスパーは、一芸一能的な電子使いとは別の流れだと思っていたのである。

 (もっとも『光の剣』では専門のエスパーでなければ除去できないはずの「死人ごけ」を消滅させたりもしている。単純に〈愛の奇跡〉と理解していたのだが、エレクトリック・スキャンという専門的能力を持ちあわせて(一般戦闘型エスパーの常識から外れて)いるのなら、普通に死人ごけ中和能力をも持っている可能性が出てくる。ラフノール人の超能力は厳しい自然環境に適応するために開発されたものなので、ラフノール人でないランにそれが発現するものか微妙なのだが。)

 ロックは戦闘向け能力とエレキトリックスキャン双方を兼ね備えているが、彼はR−1(分類不可能)という特殊なタイプのエスパーであり、また、『ファイナル・クエスト』で「ぼくではコンピューター相手に時間がかかりすぎる」とミーシャを仲間に引き入れたり、『ミラーリング』でもエレナのプログラムが複雑すぎて理解できず「ランがいればなあ」とつぶやいているあたり、「コンピューターは苦手」と本人が認めるとおり電子使いとしてはさほど優秀とはいえないらしい(前述のセリフからすれば(エレナの作者という点をさっぴいても)ランの方がコンピューターに関しては上であるようだ)。

 もう一つ、ランがハードの補助を介さず直接プログラムにアクセスしているシーンがないせいもある。むしろ常にハードを用いていることが彼が電子使いでない証拠だと思っていた。電子使いなのにハードを必要とする、とは要するに、〈素質は十分にあるがトレーニングをつんでいない&電子使いとしての自覚がないために能力は眠ったままである。ただしその素質ゆえにコンピューターへの適性がきわだって高く、後天的な(人間レベルでの)天才教育とあいまって、コンピューターの天才となりえた〉というところだろう。

 ただ、一度だけランが(無意識に)電子使いの能力を使っていると思われる描写がある。『ミラーリング』の終盤、感覚置換インタープロセッサを使ってエレナ(ネオン)と戦う場面だ。これ以前にエリアル・グラントがネオンと対決したときにプロセッサは壊れており、「通信機としてなら使えなくもない」程度の状態だと説明されている。

 私はコンピューターにはうといのだが、つまりこれはネオン−エレナにアクセスは可能だが攻撃をしかけたりはできないという意味だと解釈している。しかしランはエレナのバックアップをつぶしていたし、プロセッサとの接続をエレナに切断されてもグラントのようなダメージを受けてはいなかった。これらは彼が電子使いだったから可能だった現象ではないのか。ロックはともかくエレクトリック・スキャンの能力のない(たぶん)ニアがエレナに干渉できたのも、ランとテレパシーでつながっていればこそだったのだろう。

 ところでランはプロセッサに初めてさわったとき「ぼく・・・これ使えると思う!」と言い切っているが、システムが壊れてることに気づかなかったらしいのが不思議である。ただこれも逆に考えれば、自分は普通に(超能力で)動かせるからこそ気づかなかったということかもしれない。

 ともかく無自覚でこれだけ力を使えるなら、ランは訓練さえつめば結構優秀な電子使いたりえただろう。その彼が白黒写真レベルのテクノロジーしか持たないラフノールに永住してしまったというのは、皮肉というかまさに〈宝の持ち腐れ〉感がある。彼の生涯を見ていると、才能を遺憾なく発揮できることがその人間にとって一番の幸せとは限らないよなあ、としみじみ感じるのでありました。

 

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