『虚空の戦場』

主なキャラクター:ロックナガトラグレマクミドメニコ、オクタヴィアス、ナナテオロザンナソイアデル、マール・オドファ、J.S.コーバック、オルク・サト、ストロンボー、フェリーヌ、オルソ、クロー、サントス・デュモン、ラングセン博士、E.K.、「ママ」

 崩壊するラフノールから脱出したもののレマとはぐれてしまったラグは、レマを探す途上で立ち寄った惑星スレトで、ロンジット鉱山の奪いあいに発する戦いに行き掛かり上参加し、いろいろあってレマと再会し二人で旅を続ける。

 コーバック提督率いる艦隊が農業惑星ファーゴに進駐、ファーゴ議会はあっさり彼らに実権を渡すが、やがて彼らは次々ウイルス性の死病に倒れる。ファーゴの議員となっていたナガトと、農家で暮らすロックもまたウイルスに感染する。

 血清で命をとりとめた二人は、ライガーがこの星に密かに設置していたコンピューター「ライガー1」の存在を知る。ナガトは「ライガー1」を使って銀河の再建を目指すが、ロックは教授の後継者となることを嫌ってナガトと袂を分かつ。

 巨大軍事産業会社UAIは悪辣な手段によって戦争をあおり利益をむさぼる。その摘発に乗り出した連邦のエスパー部隊は証人の身柄をめぐってUAIのエスパーと衝突、偶然証人を救ったロックはUAIの機密を知ったためにUAIと連邦の双方から追われることに。そのころ敏腕記者クミ・ニールセンとその相棒ドメニコ・ルスカもまたUAIの不正の証拠を追っていた・・・


 汎銀河戦争における群像を描くオムニバス風の長編。故郷も家族も失い、よそのコロニーを守るため戦っているオルク・サトや、後輩への情と愛国心(あるいは軍人の誇り)に殉じたストロンボー大佐のエピソードは、ストーリー全体の流れには直接関係ないものの、逆境における人間の底力や精神の崇高さを描いて物語に厚みを与えている。

 本筋を担うのはロックとナガトで、ファーゴでともにウイルスに苦しんだ二人がライガー教授の遺産・銀河コンピューター(ライガー1)に出会い、ナガトは有効活用を目ざし、ロックは拒絶してそれぞれの道に分かれてゆく。

 二人はやがてそれぞれにUAIの社長オクタヴィアスとの対決に向かうわけだが、この時点でナガトは星間共和国(のちの銀河帝国)の総裁として艦隊を率い、ロックは友人や子供たちのサポートを得て動く、とずいぶん立場は違っている。彼らの対照的な、けれど目的を同じくする戦いがこの作品の支柱であろう。

 一方戦時下にありながらも一応の穏やかな生活を営んでいる人たちもいる。後編のラグ一家がその代表だが、ラグの勤務先はなんとUAIの下請け工場だったりする。彼らの暮らす惑星スラグ自体がUAIに大きく依存している。市井の平和が軍需景気によって支えられている、ごく善良な人間が自分と家族の平穏な生活のために殺人兵器製造の一端を担っている、という皮肉もまたしっかりストーリーに折りこまれているのである(それも単なるゲストキャラじゃなくてラグだもんなあ・・・)。

 総括すると――多くの利害、心情がからまって泥沼化する状況の中で、それぞれの形で懸命に生きる人間たちを描写した傑作戦争文学だと思うんですが。

 

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