ジャフィット

 

 『ソード・オブ・ネメシス』登場。ニムバスの部下でエスパー。ニムバスがヘルガとともに「むこうの世界」に行ってしまって他のメンバーともども元の世界に取り残されたさい、もう一度ニムバスに会って真意を問いただすべく仲間と袂を分かってニムバスを探しに旅立つ。

 キャプテン・ニムパスの部下の中でヘルガをのぞけば一番目立っていたのがこの人。ニムバスから「むこうの世界」には順応できないと切り捨てられた立場ながらも、頭を失って大人しく軍に降伏した他の乗員と違いニムバスを追って話をしようという気骨がある、ヘルガと他メンバーの中間(よりは他メンバーよりだが)に位置している感じである。

 では彼と他メンバーの立ち位置を変えたものが何かといえば、ニムバスに対する信頼と期待感ではないかと思う。ニムバス不在時にヘルガが海賊たちに元の世界には戻れないことを説明した時にニムバスへの不信を顕した面々の中にジャフィットの姿はなかったし、ニムバスに置き去りをくらった後も混乱する他メンバーの中で一人冷静に状況を把握し、「おれたちは・・・結局こっちの宇宙を捨てられなかった」と自分たちに非があるような言い方をしてニムバスを責めることはしなかった。

 にも関わらずその直後にニムバスを追いかけるにあたって「なぜおれたちを捨てた!」と内心で叫んでいる。ジャフィット自身が口にしてるように彼らが「こっちの宇宙を捨てられなかった」からであってすでに答えは出ているのだが、それでも「なぜ」と叫ばずにいられない、捨てられたと感じずにいられないところに彼のニムバスに対する信頼の強さが見える。信頼し尊敬してからこそ裏切られたと感じるし、本人に直接会って恨み言を言わなければ気が済まないと感じるわけだ。

 その後ハインズマンやハシェットと組んで「むこうの世界」に向かい(明確に敵対していたわけではない─特にハインズマンはニムバスを間に挟んで直接には没交渉ながら同志のような関係だったが─それまで接点のなかった者たち、それもストーリー的にはやや地味な中年男の脇役が手を組んでそれぞれの特技や特権を生かして目的に進んでゆく展開はなかなか胸熱だった)、ついに「むこうの世界」にたどりつきニムバスに直接恨み言をぶつけることを果たす。得られた答えは「むこうの宇宙に戻ることを選んだのは おまえたちだ 私は ここを 選んだ それだけのことだ」で、まさにジャフィットが最初に予想したそのままだった。今さら新たに怒りも失望もわいてくる理由はないと思うが、ハインズマンを射殺したニムバスに「もう一度選びたまえ 「ここ」か むこう・・・か」と言われ、他の仲間を連れてくるとの口実で「外」に戻ったあとハシェットに「とにかくここを出るぞ! あいつの気の変わらないうちに!」と訴えている。これまではニムバスに怒りながらも「あいつ」呼ばわりにしたことはなかった。結局恨みの裏返しとしての敬愛の情を抱き続けていたのだ。それがここで覆ったのはハインズマンが口にした〈自分もジャフィットもそれ以外の人間もニムバスにとっては道具にすぎない〉という言葉が胸に突き刺さったためではないか。この台詞の直後にハインズマンがニムバスにあっさり射殺された、ニムバスが顔色一つ変えずにジャフィットにもう一度選択権を与えてきたその冷静・冷徹すぎる態度を見て、完全にニムバスに見切りをつけたのだろう。実際「気の変わらないうち」どころかニムバスは即座に後を追ってきて何も聞かず船ごとジャフィットとハシェットを〈始末〉しているから、ニムバスの側にはジャフィットに対する情など最初からなかったわけだ。それでももしジャフィットが口実をつけて元の世界に戻ろうとせず、「ここ」に残ると即答していたなら彼を仲間として受け入れたのだろうか・・・。

 ところでジャフィットが常に目をゴーグルで覆っているのは、アイザック長官や『久遠の瞳』のフレアのように視覚に障害があるということだろうか?時々ゴーグルにコードを接続してることがあるので単なるサングラスでないのは確かなようだが。彼がニムバスと出会った経緯は明らかにされていないが、ヘルガのようにエスパーゆえの迫害を受け、そのために目を損傷したのをニムバスに助けられたとかかな?と想像してみたりする。

 

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