アイザック・ヨシノ

 

 『ソード・オブ・ネメシス』『オメガ』他登場。ISC(独立星間コマンド)の長官。デスクワーク嫌いの現場主義で人情に厚い熱血漢。その分言動が空回りすることも多く単細胞のような印象も与えるが、実際には観察力・洞察力に長けていて体術にも優れている。本当なら提督になっていてもおかしくない経歴ながらある事件で視神経を損傷・失明したために戦艦勤務からは外れたらしい。とはいえ特殊ゴーグルのおかげで日常生活どころか軍務にも何ら支障がなく、むしろ真っ暗闇でも普通に動ける、呼吸数・脈拍・発汗量などで他人の動揺を見抜けるなど、常人以上に「見えて」いる。海賊ニムバスによる一連の事件をロックとともに追うことになる。

 上記の説明からうかがえるようにヤマキ長官やカトー中佐、リュウ・ハントらと共通する性格で、特に軍のトップである点、年甲斐もなく恋愛経験がゼロに等しいところなどヤマキ長官とよく似ている。それだけにロックとは相性が良く、何十年にわたって公私とも付き合いが続くことになる。ただ初登場時ですでに50歳くらいと(初登場時の)ヤマキ長官らより大分年上なだけに重厚感というか渋みが備わっている感はあるが。惑星トル消滅・ISCの艦隊全滅の時、戦没者の遺族を訪ねる予定について語る時などの激しい怒りと悲しみを懸命に抑えた態度も、感情をストレートに表すヤマキ長官と比べて「大人」な印象だ。

 ニムバス同様、リメイク前の『ニンバスと負の世界』『この宇宙に愛を』と名前と立場が変わらなかった数少ない人物。とはいえ上で書いた設定・性格付けの多くは新たに加わったもので、特にトレードマーク?のゴーグル(前作では単なる黒眼鏡)に〈失明したためその視力を補うもの〉という意味を持たせ、ゴーグルに由来する能力を追加したこと、年齢も大分年上にしたことで、格段にキャラに厚みが増した。さらに以前は描かれることのなかったプライベートな部分も結構掘り下げられていて、その最たるものがトラウトマン大尉との恋模様だろう。ハンザ博士も呆れるほどの純情ぶりで右往左往する姿は年甲斐もないがゆえに何だか微笑ましい。ほとんど彼が一方的に熱を上げてアプローチしてるのだが、いつのまにか自然とカップルらしくなりそのままゴールイン。軍務の方が実に紆余曲折あるだけに(多くの部下と惑星トルの住人の命を守れなかったことで犯罪者にされかけたり逆に被害を最小限にとどめ宇宙を救った英雄視とみなされたり)こちらがすんなり行ったのはおめでたいかぎりである。

 そういえばこの〈自身は普通の人間なのにエスパーの女性を伴侶に選ぶ〉というのもヤマキ長官と共通している。〈エスパーはあきらめがよい〉という噂を「エスパーだって人間だ」と一蹴し、なぜエスパーが〈特別〉視されるのか全く理解できないようだった。エスパーも人間も変わらず恋愛対象にも友情の対象にもなる──だからこそロックとも仕事を越えて仲良くなれたんだろうなあ。

 

 

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