イアン・ムトウ

 

 『ソリティア』登場。「エリック・コンバーター」の発明者であるマーク・ムトウ博士の息子。両親の仇を討つため祖父の形見のサイ・エクスパンダーを身に旅立つ。途中カジノで数年勤務。

 この文章を書くにあたって、ずいぶん久しぶりに『ソリティア』を読み返して驚いた。イアンってこんなにいい男だったっけ?子供の頃から年相応のあどけなさに混じって時おり男っぽい感情を見せているが、青年期はさらに、水商売で鍛えられた冷静沈着さ・愛想の良さ・行動力と威圧感が備わった。そして「いっておくが 自白剤などというあてにならんものは使わんからな」「答えろ! しゃべれない傷じゃない」といった台詞に表れる、事に臨んでの冷酷さ・・・。ううむかっこいい。なんと言うか、プロフェッショナルな感じにシビれます。その一方で震えながら「おちつけ おちつけ」と自分に言い聞かすシーンも初々しくて好きなんですが。

 彼が冷静さを失うのは、父が生きていたとわかり、その父に殺されかけた後の事。父を操っている連中への怒りが傷の痛みとあいまって、ここで初めて「死ね」という台詞に表れる明確な殺意が彼を動かすようになる。けれど結局彼は鬼になりきれなかった。他人を思いやれる余裕を失わなかった。「憎しみからは何も生まれない」というのは『超人ロック』のテーマの一つだと思うのだが、イアンはこのテーマを自らの行動をもって体現している(驚くべき寛容さで敵をたびたび赦しているロック自身もこのテーマの体現者である)。思えばイアンは正当防衛以外では一人も殺していないのだし。

 まあこれについては肝腎なところでサイ・エクスパンダーがパンクしたおかげ(タイミング的にルーファス=ロックの細工?)で結果的にそうなっただけという感もなくはない。とはいえ本来の実力か深い憎しみのゆえか生身のままでも相当強かったから、やはりイアンが自分の意志で矛を収めなければ死人が出ずには終わらなかったろう(余談だが、彼のサイ・エクスパンダーなしでの強さにギブソン元大佐が相当驚いていたことから、この時代には旧連邦時代のような強力なエスパーがほとんどいなくなっているのがわかる)。

 ともかくも“鬼”になりきれなかったイアンは、きっとお父さんと二人どこかで平穏に暮らすのだろう・・・。カジノの仕事は存外水があっていたようだから、またカジノに舞い戻るのもいいんじゃないかな。

 

 

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