『星と少年』

主なキャラクター: ラグジュールテアキャプテン・ノーム、エスパーのおっさん、カシム、連邦のエスパー(名無し、ハロルド)、ロック(フラン)

 

 エスパーの少年ラグは、彼の力を狙うESPハンターに両親を殺され、ハンターを倒したものの、ひとりぼっちになってしまう。ラグはゆき倒れたところを、浮浪児集団のリーダー、ジュールに拾われる。彼らはラグをエスパーと知ってなお受け入れてくれるが、ラグを追ってきたエスパーのためにグループは壊滅。エスパーを返り討ちにしたラグは、ジュールらの好意は自分の力目当てだったと知って強いショックを受ける。

 一人さまようラグは不思議な女エスパーに出会い、ESPのコントロール法を習うが、連邦のエスパー2人組に追われていた彼女はいきなり姿を消してしまう。その後ラグは「エネセス」の残党キャプテン・ノームの海賊船「エクスカリバー」に乗ることになるが、無意識に放ったESP波が連邦軍を呼び寄せてしまう・・・


 強大すぎる力のために、ゆく先々で死を巻きちらし、追いこまれてゆくラグの心の軌跡。と書くと『ロード・レオン』と共通するものがあるが、レオンがひたすらな復讐の念に追いつめられているのに対し、ラグは超能力それ自身によって追いつめられる。

 両親やジュールたちの死も、ジュールたちがラグを利用しようとしたのも、彼が超能力者であるため、人間とエスパーの共存の困難さの現れといえる。じゃあエスパーの中で暮らせば幸せになれるかといえば、彼は「エクスカリバー」においてもESPがけた違いに強いがために結局はみ出してしまう。エスパーの悲劇が単に人間との軋轢によるものだけではないという好例であろう(人間間でだって傑出した存在は孤独である)。

 自分のミスで、最初から親切にしてくれたカシムをはじめとする仲間を死なせ、ついにはスパイとして攻撃を受けるラグ。たしかにESP波の放射にしろ、艦ごと知らない星へテレポートしてキャプテンたちに幻を見せたのにしろ、怪しい行動が多すぎるのは事実だが、なんといっても彼はまだ10歳そこら、保護されてしかるべき子供なのである。「どうしたらいいのかわかんないんだ」という彼は、むしろキャプテン達大人に助けを求めていたはずなのに。

 同じエスパーにさえ拒絶された狂気に陥ったラグを救ったのはフラン=ロックだった。彼女(彼)の存在はほとんどこの話唯一の救いである。ジュールたちやカシムとの一時の友情は、みな悲劇的な顛末を迎えているのだから。

 ラグの苦しみはロックもまた通ってきた道だったろう。ロックの方が他にエスパーがほとんどいない時代だっただけにより悲惨だったかもしれない。ロックがラグにしたように、彼を導いてくれる人はいたのだろうか・・・。

 ところでロックがフランシス大尉の姿をしているのは、ラフノールに置き去りにした彼女にそれだけ心を残していた、ということか。「フランシス大尉」と呼んでたのがいつのまにか「フラン」。『アウター・プラネット』以降会ってないはずなのに。80年(100年?)ほどの歳月の間にロックの中で彼女の存在が(会ってないのに)次第に大きくなっていったということなんだろうなあ。

 

back    home

 

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO