『不死者たち』

主なキャラクター:ロックリュウ・ハントフォン・ノイマンセラフィムミール大佐、ハスキン

 『ブレイン・シュリンカー』事件から15年、ハントのもとを尋ねてきた連邦軍情報部のミール大佐はノイマンが連邦軍の基地から高速偵察艦を盗み出したことを告げ、内戦の続く辺境惑星トソールに潜伏するノイマンを探し出すよう要請する。依頼を断われば200万人が暮らすトソールごと吹き飛ばすことをほのめかすミールを前に、ハントはやむなくトソール行きを承知する。

 トソールに下りたハントとロックは情報部のエスパー・セラフィムの案内で内戦の前線近くの町を訪れるが、ノイマンの配下によってすでに町は壊滅させられており、ノイマンの足跡を追ったハントたちも攻撃を受け別々に捕らえられてしまう。そこで15年ぶりにノイマンと顔を合わせたハントは、彼の目的が「すべての人類を不老不死にすること」にあると知る・・・

 


 『ブレイン・シュリンカー』に続く探偵シリーズの第二作であり、前作が提起した古代種族の残したDNAから生まれた「不死者」=ネオ・イモータルの実態に本格的に踏み込んだ作品。前作では「同化」をぎりぎり免れたのか否かはっきりしなかったハントが、まず15年を経ても外見がまるで変わってないことが示され、ついで重傷を負っても自然に治ってしまう描写によって、やはり「同化」させられてたことが判明する。とはいえ、フォン・ノイマンらのように身体の形をアメーバ様に変えることはできなそうだし(もしその気になれば可能だったとしてもハントは絶対その気になることはないだろう)、本人も認めるとおりなぜか彼はもともとの人格・感性をまったく失っていない。だからこそ事件以前と同じ貧乏探偵生活を続けてるのだしロックも彼のそばに居続けてるわけだろうが。

 フォン・ノイマンはハントの「同化」を「不完全」だったというが、完璧に同化すれば地位や名誉や快楽を求めなくなるのみならず、ロックいわく使命感も誇りも夢も望みもなくただ無限に続く時間があるだけ──。フォン・ノイマン自身も同化前と後では別人のごとくだが、不死身の身体になるなどという途轍もない転換を経ていることを思えば人間これくらい変わるよなという範疇、つまりまだしも人格の連続性は保たれていたのだが、ノイマン以上に完璧に同化したネオ・イモータルたちに至ってはもはや同化以前の人格も個性もかけら程度しか残ってなさそうだ(ラストでハスキンが「人間だった時のくせ」で日記をつけたりしてるので「かけら程度」は残っているのだと思う)。これでは不老不死を手に入れたどころか同化の時点で元々の人格としては死んだに等しいじゃないか。同化後は死体が不死のDNAに操られて動いているゾンビも同然だ。こんな不死に何の意味があるのか。むしろ元々の人格を一切損なわずに不老不死と不死身の肉体を手に入れたハントこそが「同化」体─不死のDNAの操り人形─としては不完全であるゆえに理想的な「不死者」なのではないか。もっともハント自身は不死身になりたいなどとは一切思ってなかった。不死を望まないハントが不死となり、200万人の人命をかたに不死を手に入れようとしたミール大佐が同化失敗によって悲惨な死を遂げるのだから皮肉なものである。

 

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