エネセス

 

 『エネセスの仮面』登場。宇宙海賊「エネセス」の艦長。常に仮面を着用し、部下たちでさえその素顔は知らない。実はどこかの会社が「エネセス」を倒すべく送り込んだスパイが、先代艦長が与えた「チャンス」を得て密かに艦長の座を継いだもの。

 彼の場合、脱走防止のために体内に細菌を植えつけられ、定期的にワクチンを接種しなければやがて体を冒され死ぬ運命にあった。彼が「エネセス」に潜入して7年、アモンに「連邦のスパイ・・・ 君をひろった時から知っていた」と言ったことからすれば、アモンが潜入した時点ですでに彼は艦長の座についていた。つまり潜入から2年足らずで彼は先代からエネセスの仮面を託されたわけだ。人柄を見込まれたというより、ワクチン投与の時期が迫っていた彼が2年を待たず艦長暗殺を図ったか、やはり会社のスパイだったらしい先代が細菌その他の理由でたまたま死を目前にしていたかであろう。

 ともあれ一度は先代を殺そうとしたのだろう彼は、遠からず細菌に冒され苦しんで死ぬことになるとわかっていても「自由に生きる」ことを選択した。もし素直に会社の命令に従い続けたとしても、アモンが担っていたような危険な任務を次々課せられていずれは殉職を余儀なくされていただろう。どうせ数年で死ぬのに変わらないなら、せめて命のある間は自由に生きる。彼がそう決意したのもわかるというものだ。

 ただ、「エネセス」艦長として生きることは本当に「自由」と呼べるのか。部下たちの前では常に素顔を隠して、先代艦長のふりを続けることになる。アモンのケースを見ても、仮面をつけて艦長に成り代わったさい部下たちに「連邦のスパイだ・・・ 私の命をねらった・・・・・・」と説明する口調はかつての彼のものからはかけ離れている。以降アモンはずっと艦長を演じ続け、かつてのアモンを「キャプテン」と呼んで慕っていたのだろう部下を〈アモンは艦長の命を狙ったスパイで、返り討ちにあって死んだ〉と欺いて生きることになった。それは「アモン」としては「死んだ」とも言える。同じことをかつてのエネセスも経験したのではないか。

 妹エルザの死を知ってもエネセスはさしたる動揺も見せていない。彼女が兄の仇を討とうとしていた、つまりは自分が帰らなかったためにこんな任務についたことにもおそらく気づいていただろうに。心の中では妹のために泣いていたのかもしれないが、それをおおっぴらにすることはできない。会社のスパイが身内だなどと周囲に知られるわけにはいかないからだ。彼はエネセスの仮面を継ぎ、会社には戻らないと決めた時点で妹とも訣別した。「自由」に生きるためには人としての恩愛も捨てざるを得なかったのだ。

 それでも。ずっと周囲をあざむくことになろうとも、家族も自分らしさも捨て去ることになろうとも、遠からず死ぬことになるとわかっていてさえ、〈自由〉は彼らにとって圧倒的に魅力だったのだ。それはいかに彼らがエスパーであるゆえに多くの制約と屈辱・虐待にさらされてきたかを浮き彫りにする。エルザの無惨な死に方も、かえってそんな非道な会社に従うことを止めたエネセスの選択が正しかったことを立証しているともいえる。

 それにしてもロックは何だって「自由に生きる」ための手段として仮面を作ろうと思ったんだか。エネセス艦長が部下に秘密で代替わりできるように?そもそも秘密裏に代替わりする必然性もよくわからない。次代艦長が実はスパイだったとかは伏せたまま「自分は病で余命いくばくもないのでこいつに跡目を譲る」と皆に堂々発表するんじゃいけないんだろうか。そんなこと言い出したらこの物語自体成り立たなくなってしまうんだが。

 

 

 home

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO