『ELANA −0368−』

 主なキャラクター:ロックキャリアン

 

 銀河連邦の中枢を担う巨大コンピューター「エレナ」がささいなミスを繰り返すのを案じた連邦軍のキャリアン少佐は、ロックにエレナの調査を依頼。エレクトリック・スキャンによってエレナのネットワークに侵入したロックは、謎の笑い声を聞きつけ発生源を探ろうとして熊のぬいぐるみのヴィジョンに出会う・・・


 OVA『新世界戦隊』(前編)の付録マンガ。サブタイトルにあるように『新世界戦隊』の外伝であり、時間軸からして前日談にあたる(年表によると本編は宇宙歴0375年の出来事なので、この作品は7年前のエピソードということになる)。しかしこの話、謎を投げかけるだけで答えは一切描かれていない。単独で読んだ場合(付録なのでそういう人はまずいないだろうが)まず意味不明、本編を見て(読んで)いてさえ何が言いたいのかよくわからないという人も多いんじゃなかろうか。

 エレナのシステムに潜ったら熊のぬいぐるみ(のイメージ)がいたという事実が描かれるだけで、それが何を意味するのかは説明されない。そんな奇妙な現象が起こる以上、キャリアンの危惧通りエレナはどこか〈異常〉なのだろうが(専門家が「初期トラブル」と判断したにもかかわらず、エレナの「欠陥」を察知した彼の慧眼は大したもの)〈だから何?〉という感じである。熊のぬいぐるみは子供の存在を示唆し、エレナに関係ある子供といったら当時は9歳だったはず(アニメ版では16歳設定のため。原作設定に従うなら本編が14歳なのでこの時点では7歳ということになる・・・)のランしか考えられないが、〈そんな小さい頃からもうエレナのエンジニアとして働いてたのか?天才ってのはすごいねえ〉としか言いようがないというか、それ以上のストーリーがないというか・・・。

 ただランの大ファンである私にとっては、なかなかに印象深いエピソードである。特にぬいぐるみが登場した場面は胸をつかれるようだった。キャラクター紹介のランの項で書いたように、私はランのエレナに対する感情は男女間の愛情というより幼児が母親に対して抱く愛着に近いと解釈している。10歳にも足らない時期ならなおさらそうだったはずで、「こんな巨大なシステムは見たことがない」とロックが評するほどのプログラムを管理・改良している(本編およびこの外伝では、ランがエレナのプログラムを1から作ったとは書かれていない。誰か他の人間がエレナの原型を作り、それを飛躍的に発展・向上させたのがランだという方が彼の年齢からして自然である。「エレナはぼくが 作ったんだ」とランが明言するのは数年後に描かれた『ミラーリング』においてである)ほどの天才が、同時にヴァーチャルなぬいぐるみと仮想空間内で戯れるような無邪気さを持った子供であるということが何だか胸に沁みるのである。ロックが聞いた笑い声はエレナのシステムの中で遊ぶ幼いランのものなのかランをあやすエレナのものなのか。いずれにせよ連邦の中枢を支える最新鋭のプログラムとその技師との密やかな母子愛は、倒錯しているゆえになお美しく切ない。エレナの技師がほんの小さな子供だとロックないしキャリアンが知っていたら、ぬいぐるみのイメージを見た(という話を聞いた)時にもっと別の反応があったことだろう。

 ちなみにエレナがたびたび繰り返しているという「故障といえないようなエラー」は、後の銀河コンピューターがわざとミスを作り出していたことを連想させる。銀河コンピューターの場合はより完全な存在となるための布石だったが、エレナの場合はどうだろう。彼女の密かな使命が〈ランを理解し受け入れる〉ことだったのを思うと、銀河コンピューターとは逆に不完全な存在=人間に近づくため、人間的な感情・考え方を理解するための行動だったのかもしれない。

 

 

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