エレナ(ネオン)

 

 『新世界戦隊』『ELANA−0368−』『ミラーリング』登場。銀河連邦の「中央行政管理および事務処理コンピューター」。私はこの子が大好きなんである。『超人ロック』の女性キャラで一番好きかもしれない。何というか・・・不憫で。

 彼女は「銀河コンピューター」や「ドラム」、「オメガ」とは一線を画する、〈愛情〉を知っているコンピューターだった。たとえば『新世界戦隊』で〈死ぬ〉直前の彼女の、「あなたは・・・・・・わたしに とても・・・よくしてくれた 楽しかった」という台詞。「大切にしてくれた」でなく「よくしてくれた」、「幸せだった」でなく「楽しかった」というどこかつたない表現が、かえって彼女が本物の感情に目覚めはじめていたことを感じさせる。

 同時に、別れの言葉を告げる間にも切れ切れに破損箇所を機械的に報告しつづけるのが―最期までコンピューターでもありつづけるのが―彼女が限りなく人間に近づきながら結局人間にはなりえないことを示しているようで、とても切ない。それでも彼女は可能なかぎりランを理解しようとしていたし、確かに彼を愛していたと思うのだ。

 だからはじめて『ミラーリング』を読んだときは正直納得がいかなかった。ランを平然と殺そうとするエレナが彼に何ら愛情を持ってないかのようで。だが連載最終回の「あなたはエスパー 消去しなくては」という台詞を読んだとき、すべてが腑に落ちた気がした。彼女に「エスパーを消去しろ」と命じたのは他ならぬランなのだから。

 エレナは彼がいなくなっても、彼のことを忘れてもなお、彼が残したプログラムを忠実に守りつづけただけなのだ。結果的にラン自身をも殺そうとするほどに。『ミラーリング』最大の悲劇は、バックアップのエレナがランに関する一切のデータを失っていたことだろう。エイブル大佐が持っていたデータからランについての客観的情報は知ったものの、かつて彼に抱いていた〈愛情〉は思い出すべくもない。

 それでも彼女は漠然と、〈そのすべてを理解し受け入れるべき存在〉があったことを感じていた。コンピューターの天才で自信家で、計画性と行動力に富み、孤独で、社会と人間に憎しみを抱いている・・・エレナはカサンドラにランの影を重ねていたのだ。そして女性であるカサンドラを〈理解し受け入れる〉ためにエレナは「ネオン」になった。しかしカサンドラは結局ランではないから、二人の関係はやがて破綻せざるをえない(きっかけをつくったのがランだというのも皮肉な話)。

 エレナはラン本人を前にしてさえ彼が自分の求めてる相手とは気づかない。しかし最後の最後、おそらく「「思い出した」 あの・・・!」と叫ぶシーンで、かつて自分を殺したロックだけでなくランのことをも「思い出した」のだろう。そしてランに「あなたが好きよ」という言葉を残して消えてゆくのである。

 それほどに彼女はランだけを慕いつづけていた。しかるにそのランはロックやニアとともに「エスパー」としてエレナに敵対する立場をとった。カサンドラが言った通り、〈変わったのはランの方〉なのだ。〈他人〉を愛せるようになった、それはランのためには良いことだったはずだ。それでも、だからよけいにエレナは・・・可哀想だ。ランが彼女のために泣いてくれたのが、せめてもの慰めである。

 

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