『夢使い〜DREAM MASTER〜』

主なキャラクター:ロック、ラウア

 吹雪のために小さなドーム状の建物に閉じ込められた二人の男。うちロックの外見をした男は「ラウア」と名乗り、自分はラフノールの高僧「ドリームマスター」で他人に望み通りの幻覚を見せられること、「超人ロック」の暗殺を依頼されて実行したが偽者だったため、今や仕事ではなくプライドのためにロックに「夢」をかけて殺すべくロックを追っていると語る。そして今度こそ本物のロックを発見した、今目の前にいるもう一人の男こそロックであり、とっくに「夢」は始まってるのだと告げて姿を消してしまう。もう一人の男─ロックは元の姿に戻るとラウアを捜すために(?)外に出ると、そこには先とうってかわって花咲き乱れる野原が広がっていた・・・


 16ページの短編、それもメインキャラが二人だけというシンプルな小品ながら、深い読後感を残す物語。夢をかけられたと見せて最初から罠に気づいて返り討ちにしていたのがラストでわかるどんでん返しの醍醐味もさることながら、やはり印象深いのはロックの「夢」の内容だろう。

 男女問わず彼にとって思い出深い人たちがそろって彼を出迎えてくれるという──。ラウアに殺された偽ロック=ロデリックの名誉欲・英雄願望が前半に出てくるだけに、比較してロックの望みのささやかさとそれゆえの切実さが胸に迫ってくる。

 特に誰のものなのか「ずっと一緒よ」という台詞。愛する人たちと生涯を共にする──ごく普通の人々が当たり前に手に入れている(もちろん得られない人間もたくさんいる)ものがロックには遠い存在だということ。永遠の命を持つゆえに愛した人たちと確実に死に別れなくてはならない宿命、その決定的な別れを避けるかのように、数年ともに暮らした人々の元からさえ、彼らが新たな生活基盤を見つけたと感じたら行方も告げずすっと立ち去ってしまう。今回ライザが名前を挙げた三人のうちミルバを別とすればリアンナともナガトとも、袂を分かったのはロックからだった。だけど本当はロックだって皆と「ずっと一緒」にいたかったのだ。銀河最強を謳われる伝説のエスパー・超人ロックの望む夢がこれだということが何とも切ない。

 ラストで実はロックが逆にラウアに夢をかけていたことが判明するが、つまりそれはロックの夢の内容もまたラウアの見た夢の一部ということになる。しかしあれは単にラウアが自分に都合よく思い込んだ幻想ではなく彼が垣間見たロックの本心だったのだと、人々に出迎えられた時のロックの切なげかつ幸せな表情も本物だったのだと思いたい。

 

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