徳川 家康

 

明訓四天王入学時の明訓高校監督。本名はなんと徳川家康。そのまんますぎます(笑)。四天王にとっては(秋季大会前に転校してきた三太郎にはなおさら)在学中の三人の監督の中で一番在任期間が短かったのはこの徳川監督なんですが、甲子園初優勝の時の監督として、常勝明訓への道筋をつけてくれた人として、FA後にまた監督として付き合うことになった土井垣と同じかそれ以上に印象深い存在と思われます。
それは何気に在任期間が土井垣より長かった太平監督が『プロ野球編』以降(『プロ編』冒頭のドラフト場面以外では)すっかり忘れ去られているのに対して、98年の五人衆自主トレの際に大音寺雪舟なる仙人に扮して肩の故障に悩む山田に助言したり、翌年の自主トレにも飛び入り参加したり、『スーパースターズ編』では里中とサチ子の結婚式に招待されたりと節目ごと(?)に登場していることにも示されている。
しかも無印以来の酒びたりが祟ったというか、登場するたびに仙人のフリした詐欺で小金を稼ぐ→年齢と酒のせいですっかり体がガタガタでまともにノックもできない→ホームレス、とどんどん落ちぶれていく。特にノックさえできなくなった自身を恥じて酒を断つ決意をする場面があったのに結局数年後にはホームレスと化しているダメっぷりには妙にリアリティがあります。
こうした「ダメ」な現状が描かれているからこそ明訓監督時代を「思えばわしの人生で一番輝いていた時じゃった」と評し、里中とサチ子が結婚すると聞いて出会ったばかりの頃の二人を思い出して感慨に浸る場面がしみじみと生きてくる。こうした『プロ野球編』以降の山田たちとの接触シーンは、徳川監督がどれだけ明訓時代を、野球部員たちを愛していたのかがじんわり伝わってきます。

なのになぜそれだけ愛したチームを早々に(山田たち当時の一年とはまだ半年そこそこしか付き合っていない)捨てて、それどころか「打倒明訓」を目標にかかげて方々の野球部を渡り歩いたりしたのか。明訓の、五人衆の強さを認めればこそ彼らを倒したくなった、というのではおそらくないでしょう。むしろ彼らにつくづく惚れ込んだからこそさらに彼らを強くしたい、そのためには彼らを成長させうるような強力なライバルが必要だという考えから、明訓のためにそのライバルを自ら育成しようと計ったんじゃないでしょうか。
徳川監督の“明訓愛”、五人衆(やサチ子)への思い入れをうかがわせる言動を(一方で他に在籍したチーム、たとえばクリーンハイスクールや信濃川高校、東郷学園、室戸学習塾のメンバーを懐かしく思い出してる場面はとくにないのを)見るにつけそんな気がしてくるのです。一つのチームを徹底して鍛えるのでなくワンシーズンのみで次のチームへと流れてゆくのも、なるべくさまざまなタイプの強敵との戦いを明訓ナインに経験させたかったからなのでは。
だとしたら明訓成長のために利用された格好のクリーンハイスクール他はいい迷惑という気がしますが、まあ徳川監督のおかげでチームの力が上がり勝ち進むことができたと考えれば誰も損はしてないわけで、結果オーライというべきか。

ところで上で徳川監督が「出会ったばかりの頃の二人を思い出して」と書きましたが、正確には徳川監督が里中に初めて出会ったのは里中高一の時点ではない。というのは高二春土佐丸戦中の里中回想の中に、東郷中学野球部入部直後の里中のケンカ沙汰をフェンスの向こうから目撃した徳川監督が「里中か・・・」とつぶやくシーンが出てくるから。里中視点の回想とはいえ状況からして里中の方は監督に気付いてなさそうだから「出会った」というより「監督が一方的に見かけた」が正しいんでしょうが。
徳川監督がこんなとこで何をしてたかを想像するに、おそらくリトルリーグ世界チャンプの小林を見に来たんじゃないでしょうか。この頃明訓は土井垣が一年で入ってきた直後のはずなので、中学ですでに高い評価を得ていたろう土井垣とバッテリーを組むに足るピッチャーを先々に向けて探していてもおかしくない。そのときたまたま里中が目についたのでは。
里中の投球自体を見たわけではないのでピッチャーとしての実力は関係なく(投手の座をめぐっての争いなのは聞こえてたでしょうから投手とはわかってただろうけど)負けん気の強い少年として印象に残ったんだとは思いますが。このシーンは特に後々に生かされはしませんでしたが、里中が中一の時点――不遇の時代にすでに後の甲子園初優勝の時の監督とニアミスしていた(徳川監督目線でいくと、明訓がさして強くなかった時代に後に明訓黄金時代を築くピッチャーと出会っていた)と思うと何だか感慨深いものがあります。

ちなみに「小林真司」「渚 圭一」の項で“彼らには『ドリームトーナメント編』での再登場はしてほしくない”と書きましたが、徳川監督には再登場してほしい気がします。さらに落ちぶれているのかはたまたもう一花咲かせるのか、どちらにせよ旧明訓メンバーと関わることによって生き生きとする徳川監督の姿を見てみたいような、そんな気がするのでした。

 


(2012年9月7日up)

 

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