夏川 夏子

 

言わずと知れた岩鬼心のマドンナ。中学時代は完全に岩鬼の片想いで本人は野球部主将の長島に気があったはずなが、高校編に入って長島がフェイドアウトするといつのまにか岩鬼とカップルのごとくなっていました。といってもはっきりと彼女の岩鬼に対する気持ちが恋に変化する過程が描かれてないので、付き合ってるのかどうか微妙な感じが長く続いたのですが(高二夏の対横浜学院戦の時点で「夏子はんの恋人がホームをふんだふんだ」と騒ぐサチ子に反論していませんが、事実恋人だからなのか単に場の空気を読んで否定しなかっただけなのか)、高二秋・白新戦の時の岩鬼失恋騒ぎが一つの契機になったのか、『大甲子園』ラストでは岩鬼のホームラン取り消し(エンタイトルツーベース扱いになった)のさいに「そ そんな・・・・・・私たちの愛が・・・」と呟いていて、これ以降(つまり『プロ野球編』)は完全に自他ともに認める恋人同士という位置づけになりました。

夏子さんのキャラクターの面白いところは、美人じゃないのにある意味悪女、男心を弄ぶような言動をたびたび見せていること。この場合の「男」とは100%岩鬼ですが(笑)。夏子さんの言動を見るに中学時代、長島に気のあった頃から彼女は岩鬼が自分を好きなことに気がついていたはず。面と向かって付き合ってくれとか言われたようではないのでわざわざ他に好きな男がいるからと説明して岩鬼を振る必要はないにしても、初登場早々に「岩鬼くん それだけのたくましいからだは暴力のためだけにあるんじゃないやろ」と言いながら岩鬼の胸板を撫でるなど、積極的に誘惑してるのか?という態度を取るのは何なのか。
学内の猛者たちや転校生の山田に暴力行為に及んだ(及ぼうとしている)岩鬼を止める必要上、岩鬼が自分に惚れてるのを利用して彼が骨抜きになるよう振る舞ってるということでしょうか。それにしてもわざわざスキンシップにまで及ばずとも夏子さんになら言葉でたしなめられたというだけで岩鬼は素直に言うことを聞くだろう。実際のところ、夏子さんは自分が体を接触させることで岩鬼があからさまに真っ赤になったりメロメロになるのを楽しんでる気分が強いのでは。世間的には決して美人といえない夏子にこんな態度を示すのは岩鬼くらいのものでしょうから、男にチヤホヤされる、自分が男に影響力を行使しうるのが嬉しさに、こちらからは恋愛感情を持ってるでもない岩鬼をあえて何かと構ってるんじゃないか。その粗暴さで学校中の鼻つまみ者になってる岩鬼に夏子が友好的なのもそれゆえでしょう。
岩鬼の方が夏子の自分に対する態度を恋と誤解してたか単に彼女の優しさの表れと解してたかは不明ですが、ただ一人自分を怖がりも嫌いもしない夏子の存在にかつてのおつるさん同様の温もりを感じていたものと思います。ちなみに夏子が「ただ一人」岩鬼を怖がらない、嫌わない女だったのは中一の間の話。中二以降はもう一人、サチ子という存在が現れ、当時は幼女だったもののやがて成長とともに岩鬼の花嫁に立候補することになるわけです(笑)。

さて、岩鬼に対しては“愛されてる自信”があるゆえに夏子さんは時にものすごい発言もする。野球部に転部した岩鬼がノーコンに悩んでいた時「なんとかしなきゃ」と考えて「岩鬼くんあの的はわたしのハートよわたしを射とめて」などと口にするのはその最たるもの。こんなくっさい台詞、よほど自分に、相手の自分に対する好意のほどに自信がなければ言えるものではない。ゆえに普通ならこうした台詞は男にモテモテの美人キャラが発するものと相場が決まっている。それを不美人の彼女が堂々と口にするのが(審美眼の狂った岩鬼相手だから成立するとはいえ)夏子をキャラクターとして面白い存在にしています。
しかしあからさまに自分も岩鬼に気があると言わんばかりの発言をして岩鬼が完全にその気になったら後々面倒だとは思わないんでしょうか。仮に長島と上手くいったとしたら、二人で歩いてるところを岩鬼に見られて修羅場、なんて展開にもなりかねないのに。まあ長島はあの岩鬼を素手で殴り倒せる実力者なので意外と身の危険はなさそうだし、実際高二秋にニセ学生と歩いてる現場を岩鬼に目撃された時は、岩鬼はショックのあまり黙って立ち去り一人でひたすら落ち込んでいた(ゆえに夏子さんは見られたこと自体気づかなかった)。単純かつ思い込みの激しい男だからあっさり言いくるめられるとタカをくくってる部分もあるのかも?
プロ入りが決まった後、今が大事な時期だから一年は会うのを我慢しようと申し出たり、さらにそれをもう一年延長したり、果ては言われたままに会わずにいるうちに事情が事情とはいえ何も言わずに他の男と結婚・出産していたという、普通の男なら不審がったり激怒したりするところで素直に納得して暖かな労わりの言葉までくれるような奴ですからね・・・。

この「他の男と結婚」ですが、夏子の父の会社が倒産寸前の状態に陥り、夏子の夫となった大蔵氏が融資の条件として夏子との結婚を希望したため、夏子は父の会社を救うべく人身御供となったのだとか。なんだか『男どアホウ甲子園』の朝野あゆみを彷彿とさせる状況ですが、誰もが認める美人のあゆみと同じ設定を不美人の夏子が背負うことになる流れが意外というかそこが面白いというか。時期的に見て岩鬼に会わないでいる期間をもう一年延ばそうと言った時には、もう大蔵氏との縁談が動き出してたんでしょうね。いや、結局一年を待たずにオールスター後に会いに行ったらもう子供が生まれてたのだから、その時点でもう結婚していたのかも。
まだプロ入り一年目で、しかもすでに輝かしい成績を上げつつあった岩鬼を、だからこそ気持ちを乱して成績を落ち込ませるような事はできないと思ったのかもしれませんが、ずっと隠し通せるわけがなし、ずいぶんひどい仕打ちじゃあないか。高校時代の戦歴からいって結構な契約金をもらい年棒もそれなりだろう岩鬼なら金銭的な相談にも十分乗れたんじゃ。
・・・と思いましたが、岩鬼の実家も高校時代に倒産して家を取られているので、親思いの岩鬼は当時誓いを立てた通りに実家の家屋を取り戻すため契約金と初年度の年棒をつぎ込んだ可能性が大ですね。○億円プレーヤーになったに違いない数年後ならともかく、さすがにルーキーの岩鬼の金を当てにはできない、何より“岩鬼に迷惑をかけたくない”想いが強かったということでしょうね。
まあ夏子政略結婚のエピソードについては、岩鬼−サチ子を後々カップルにするために夏子さんを退場させるべく急遽仕込んだ匂いが濃厚なので、夏子さんはストーリーの都合で(後に岩鬼と再婚に至るいきさつも含め)体よく振り回された犠牲者みたいなもんですが、上で書いたように中学・高校時代から何気に悪女ぶりを発揮していたので、意外と彼女の行動には違和感はない。岩鬼と再会→再婚までの流れもやはりさりげなく悪女ぶり(自分と娘の生活を確保するため涙で岩鬼を釣った感がある)が滲み出ている。なにせ再会そうそう涙ぐむ岩鬼に言い放った言葉が「だめ 抱いちゃだめ・・・・・・ 涙を流しちゃだめ・・・・・・さりげなくよ」(←ママ友たちの目があるから)なのだから凄い。普通なら憂いを帯びたセクシー美女にしか似合わないような台詞を自然に口にしてのける。やっぱり夏子さんだなあと妙に納得できるものがあったのでした。

 


(2012年8月28日up)

 

 

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