高三春・甲子園前〜通天閣戦

 

結局里中の故障は癒えぬまま春のセンバツ開幕を迎える。この時期のトピックスは謎の医師河内山が正か邪か。河内山の腕は本物なのか、ニセ医者だとすれば彼が進んで里中の治療を買って出た裏に坂田三吉の意志が働いているのか。大事な右肩と登板がかかっているだけに里中の煩悶は深いが、結局はベストの結果にたどりつく。この春の甲子園で一番株を上げたのは連続ホームラン記録の山田より三吉の方だったかも。


・旅館近辺の病院を訪ねるも、「おまえのような患者はもう知らん」と乱暴に追い返される里中。他にも里中が思いかえす医師の台詞は患者=顧客に対するとも思えない乱暴さ。会話の内容からしてこの患者があの明訓のエース里中だと分かってるはずなのに。よっぽど強硬に故障の程度も顧みない無理な要求をしまくったんでしょうねえ・・・。
二年春の時は山田も一緒に医者に行ったのに今回は一人で行ったこと自体、二年春よりもっと状態が悪い、絶対的なドクターストップがかかるに違いないと察してたからでしょうしね。

・本当の症状を隠して試合に出られると笑顔で宣言する里中に、いかにも怪しげな男―河内山医師が近付いてくる。自分なら里中の肩を治せるという河内山の言葉に、どこをどう見ても怪しいにもかかわらず里中は飛びついてしまう。
そして止めようとする山田に「なぜ止める山田 おれの肩だぜ!!おまえにこの苦しみがわかるか おれはワラをもつかむ思いなんだ」と逆ギレ。努めて明るくふるまっていても秋からずっと故障を引きずってたわけですから言いたくなるのも無理ないんですが。一年秋の催眠術といい、カルト宗教とかにも走りかねない危うさがあるなあ里中。

・里中と口論した直後の渚を連れ出す山田。山田は里中が渚に「怒りにも似た忠告」をしたのは「さすが里中も第一戦には間に合わないとあきらめたからさ」という。
以降「あきらめた・・・・・・あの人が」「おれもひとつおまえに忠告しておくことがある」「はい」「投手として実力以上に大事なのはナインへの信頼感だ 先輩にああいう態度ではバックの信頼は得られない」といった会話が続くのですが、多分誰もが「先輩にああいう態度」のあたりで、一年夏の里中は土井垣先輩や大川先輩にどんな態度だったよ、とツッコミを入れたことでしょう。最近は渚にも普通に優しく接してる山田が久々に厳しい表情を見せていますが、思えば入部当初の渚に山田が最初にキツい態度だったのは、渚が里中再起不能を前提とした言動をしてたためだった。山田が渚を叱るのは全部里中がらみですか。

・開幕前日?の練習風景。記者たち曰く「けど監督 かんじんの投手力が落ちまんな」(中略)「渚もけっして悪い投手やないが優勝投手ではないな・・・・・・ やっぱし里中と比較すると落ちるで・・・・・・」。二年夏の時点でスピードだけなら渚の方が里中より速いと言われてますが、里中が明らかに渚に勝っている点=優勝投手らしさってなんだろう。やっぱりコントロール他の安定感ですかね?

・投げられない分打撃練習に励む里中を、記者たちは「打者としてもAクラスには入る」「代打起用だけじゃもったいない」と評する。個人的には打者としての里中も大好きなので、記者たちの高評価が嬉しかったです♪
山田や岩鬼のようなミートの瞬間にホームランとわかるようなダイナミックさでも、殿馬の秘打のようにユニークでもない、コンパクトにスピーディに振り切る感じのスイングが格好いいです。

・河内山の怪しげな治療の甲斐もなく、前夜になっても一向に里中の右肩は回復する様子がない。ここに至って里中のフラストレーションも頂点に達する。「なぜだ なぜこれだけこいつを大事にしてきてやってるのに治ってくれないんだ!!情けない情けないよ!! ナタでもオノでもなんでもいいから山田 ぶった切ってくれ・・・・・・・・・くそ〜〜〜」「おまえは投手をやったことがないからそんなことがいえるんだ 投手が投げられない こんなさみしい気持ちはだれにもわからん たとえ恋女房のおまえでもな・・・・・・」。
山田を相手に怒って泣いて自暴自棄な台詞を吐いて・・・。もし本当にいつの日か再起不能になっちゃったら、いったいこの人どうなっちゃうんだろ。きっと山田もこんな里中を見てるのは我が事以上に辛かったでしょう。何よりこれだけ気遣ってるにもかかわらず、山田は投手じゃないから分からない、と言い切られてしまったのだから、さぞさみしくてやるせなかったことだろうなあ。

・河内山と三吉が一緒にいるのを見つけた里中。思わず「あっ」と声をあげる。山田「どうした里中?」里中「いやなんでもない」岩鬼「いや今の声はなんともない声とちがう どけえ」。二人の会話に笑顔であっさり割って入れる岩鬼。そういえば最初に里中の故障を見つけたのも岩鬼だった。
山田が里中を気遣うゆえにあえて踏み込めない部分にも岩鬼はずかずかと入っていって結果真相を見つけ出す。謙虚な思いやりゆえに山田が後手に回ってしまうところを岩鬼がカバーする形になっている。岩鬼もまた里中にとって無くてはならない存在ですね。

・川原で素振りにはげむ山田のそばに殿馬がくる。「どうやらとうとう里中はあきらめたようづらな 打って打って渚を援護ちゅう結論づらか すこしは協力するづらかな」「殿馬・・・・・・」。これは里中が出場をあきらめたというより山田が里中の出場をあきらめた、というニュアンスぽい。山田や里中が辛いときに横からさらっと助けの手を差し伸べてくれるのが殿馬流。

・試合開始前、三吉が話しかけてきたのに対し、三吉が河内山と組んで自分を陥れようとしたかのように詰る里中。二人が一緒にいるのを目撃した時点では「そんなきたないことをする坂田じゃない」と(一度戦ったことがあるってだけでそんなに三吉の人間性を知っちゃいないはずですが)三吉を信じようとしていた里中ですが、一向良くならない右肩の調子に次第に疑念が膨らんでしまったものか。また三吉が狙ってるかのように腹に一物ありげな表情&台詞だから・・・。

・試合開始直前、発表されたオーダーには何と投手として里中の名前が。太平監督(岩鬼?)は何を考えていたのか。里中は投げられないものと思って練習に励んできたはずの渚はさぞ面白くなかったろう。ところで突然名前を呼ばれた里中は驚いていましたが、オーダー発表の前にせめて本人には話通しておきゃいいのに。

・いざマウンドで練習球を投げてみたら、全く痛みが起こらず驚く里中。いかにも怪しげな外見に拠らず、河内山は真の名医だったのだ!里中が無事治った様子を見届けた河内山は、思ったより時間がかかったがこれでもう大丈夫だろうと判断する。
河内山の予想以上に治癒までが長引いたというのが気になります。やはりそれだけ右肩に数年分の無理がかかってたということでしょうか。それともまだ魚嫌いによる骨の弱さが影響してるのかな。そして治療した河内山さえ試合開始までに治ると確信しきれなかったろう状態の里中を、治るという根拠もなく先発させた監督の無茶っぷりにも驚かされました。

・里中「坂田三吉男だぜ 選手宣誓にウソはなしだ」と明るく言い放つ里中に、マウンドの三吉は「チャンスの山田に逃げたり 里中のでない明訓に勝ったところでなんの打倒になるかい」と内心で答える。これまで戦ってきたライバルの中でも最も潔い男なんじゃないでしょうか。夏の甲子園で優勝をさらったことといい、水島先生に優遇されてるキャラですね。『プロ野球編』でもいい感じに目立ってますしね。
そういや夏にお鹿ババアは入院が必要なほど体調を崩してましたが、河内山にも見せたんでしょうか。整形外科専門だろうか。

・9回裏ツーアウトで打者坂田。通天閣打法の球を山田捕球にいくが寸前で「きさまのホームランに当たって 子どもが病院に運ばれて危篤なんやで」のヤジが。『プロ野球編』でも山田はホームランボールを人(それもまた頭部)にぶつけてます。普通なら一生に一度あるかの椿事でしょうが、山田ほどポンポンホームラン打ってると数年間に二回なんてこともあるのかもしれない。

・危篤ときいてよろける山田に里中「山田〜〜なにをうろたえてるんだ ゲームセットのフライだぞ」。後の展開を見るに、里中にはヤジの内容が聞こえている。なのにこの反応。勝負の鬼です。

・試合終了後、マスコミの目をかいくぐって一人、ボールのぶつかった子供(マー坊)の見舞いにおもむく山田。試合中の不可抗力の事故だし翌日も試合を控えてることでもあり、直接見舞いに行かなくても責められはしなかったでしょうが、山田は母親に追い払われてもなお病室の外でマー坊の意識が回復するまでずっと待ち続ける。
こうした自己犠牲的ともいえる山田の献身的態度はなんだか中学時代を彷彿とさせます。理事長の銅像を守るために黙って長島のボールをぶつけられるに任せたり、小林の手術中ずっとキャッチャースタイルで過ごしたり、愚直であるゆえの一本筋の通った格好良さ。いまや高校野球界のスターだというのに、昔とちっとも変わらない彼の姿が何だか眩しいです。


(2011年9月3日up)

 

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