高二春甲子園後〜夏の地区予選前

 

春の甲子園優勝直後、気勢が上がるのが本当なのに、里中・北は故障で休部(里中は退部?)、殿馬も今度こそ音楽に戻るため部活を辞め(退部届は出してない)、普通に練習に参加してる山田も甲子園で痛めた右手首が本調子でない、と不安だらけの明訓野球部。一年夏の大会後も里中故障&殿馬音楽へ復帰、とこれに近い状況でしたが、なんといってもあの時は山田が元気だった。殿馬も秋季大会前に野球部に全面復帰、里中も投げられないもののキャプテンとして部に戻ってきた。今回はこの三人が総崩れなわけですから。土井垣さんも本当に苦労の種が絶えない。

またこの時期目を引くのは新入生の渚と高代の存在。中学編では柔道部でも野球部でも全員同級生のような描写だったし、高校に入ってからは一年生ながらにレギュラー、と山田たちは後輩を持ったことがなかった。彼らは果たしてどんな先輩ぶりを発揮するのか。
・・・・・・結論としては初期土井垣さんよりよほど怖かったです(笑)。いきなりバットやささら竹で殴りつけたりはしないけど、渚と高代に便所掃除の仕方を説く岩鬼の偉そうなこと。あんた二年生でしょキャプテンじゃないでしょ。まあこれは岩鬼らしい言動ともいえますが、渚に対する山田の怖さといったら。三太郎も問題無用で頭から水をぶっかけるし、殿馬はうるさい事も言わない代わりに先輩らしい事も一切しないし。秋から入った三太郎はともかく、残り三人は(一見従順な山田でさえ)一年次から先輩を先輩とも思わない態度をとってたくせに、自分が先輩になったら後輩の礼儀に厳しいんですよねー。二年生の中で彼ら(というか渚)に一番最初に先輩らしい温かみを見せたのは意外にも里中だったという・・・。よく二人とも逃げ出さずに頑張ったものです。


・音楽室で一心にピアノを弾く殿馬を見て先生(音楽教師?)が「しかしよくあれだけ音楽をはなれていてリズム感が狂わないものだな」と言うのへ土井垣は「殿馬は音楽をずっとつづけていましたよ」「あいつの野球そのものが音楽ですよ」と答える。
高一秋、三年生が合宿所を退去する日に殿馬が手伝いにこないでピアノを弾いていたときも呼びにいこうとする山田を止めたり、ミーティングに出て来ずピアノを弾いてる殿馬を「あれがやつのミーティングだよ」と放置したり、土井垣さんは殿馬がピアノを野球に優先させることに対して非常に寛容です。この時も殿馬はこのまま野球には戻らないつもりだろうと思いながら引きとめようとはしていない。
じゃあ殿馬がいなくてもいいかといえば、春季大会前に殿馬が帰ってきたときは心底嬉しそうだったし、山田たちに「秘密兵器」の話をするときもほとんど浮かれていた。殿馬に野球部に留まってほしいと切望しながら、里中のように殿馬に直接持ちかけられず彼が自分から戻ってくるのを熱い期待をこめて待っている。そんな土井垣さんのスタンスは殿馬の自由意志を尊重しているから、そして殿馬のピアノの才能もまた得がたいものとして惜しんでいるからなんでしょうね。

・殿馬の脱退は確実+北、山田、里中の故障を気にして考え込む土井垣に「こらあ〜〜どえがきなにしとるんや 新入部員がまっとるやないけ」と岩鬼が怒鳴る。不意をつかれたとはいえ怒りもせず「ああ ああすまん」と苦笑しつつ応じる土井垣。ずいぶん丸くなって。新入部員の手前、部員が監督にこんな口をきくのを放置したら顔が立たないだろうに。もっとも入部早々に土井垣のスパルタに見舞われた新入部員たちは土井垣をなめるどころじゃなかったようですが。

・土井垣モノローグ「元気なのはあの岩鬼だけだ なんだかんだといってもたいしたやつよ ケガのないほど名選手というがあいつは本当はすごい男じゃないのかな・・・・・・つまり将来のプロ球界をしょって立つような・・・・・・・・・ウフフまさかまさか」。
今から思えば岩鬼の将来性を最初に見通したのは土井垣だったんですねえ。しかし「岩鬼だけ」って三太郎あたりは物の数にも入ってないのか。

・渚と高代に便所掃除のやり方を指図する岩鬼。なぜキャプテンでなく岩鬼がしきってるんだ。「くそ一たれとも残しなや」とか偉そうです。自分が一年のときは雑用一切山田にまかせて何もしてなかった(たぶん)というのに。まあ岩鬼はああ見えてお坊ちゃんなので掃除も洗濯も使用人にやらせて当然という環境でしたからね。

・里中が合宿所から消えたことに慌てる山田たち。日頃明敏な山田が「でも里中は病院にいってるはずです」「どうして荷物をまとめて・・・・・・・・・」などと山岡や岩鬼に比べてえらく鈍い発言をしていますが、里中が自身の再起不能を悟って出て行ったなどかりそめにも考えたくない心理が働いているのでしょう。

・そこへやってきた殿馬は里中が音楽室に訪ねてきた話をする。「そんな悪いづらか」「殿馬たのむからおまえ野球をつづけてくれ」という殿馬・里中のやりとりが殿馬回想の形でシンプルに紹介される。
この時殿馬は深刻な話の内容にもかかわらずピアノを弾く手を止めず表情もいつもの気負わない笑顔。なんら動揺も重大視もしてないような殿馬の態度ですが、その実殿馬が野球部に戻ってきたのは里中の頼みが直接原因だったように思えます。野球と音楽留学の間で揺れる殿馬の心を野球側に振れさせる決定打になったと言うべきか。

・この回の最終ページは夏春の優勝旗を背に立つ学ラン姿の里中の絵に「連続優勝を果たした明訓 その栄光を背に去っていくのかエース里中 がんばれ里中!!よみがえれ里中!!」というナレーションが付されている。キャラクターにストレートに肩入れした気恥ずかしいようなナレーションに70年代の気風を感じます。
この絵、実は連載時はこの回の扉絵だったのが、コミックス化のさいにナレが追加されてラストページにきたもの。たぶん1p余るから(通常コミックス化のさいには収録されない)扉絵を入れておこう、ストーリーと絵を繋げるためにナレーションも入れておこう、という流れだったのだろうと推測。

・その頃の横浜学院。春甲子園の研究メモを出す吾朗に土門は「みる必要はないおまえさえわかっていれば」。シンプルな言葉のなかに吾朗に対する土門の厚い信頼がこもっています。「はい 一生けんめい練習して一日も早く正捕手になるようにがんばります」と言う吾朗に「今日から正捕手だ でなきゃ甲子園まで わざわざいかすか」と答えるのにも。
かつては野球下手な吾朗を野球部から追った部員たちが、吾朗が正捕手になったことを素直に祝福してくれたのにも心温まる思いがしました。吾朗のひたむきな努力と忍耐強さが認められた結果ですね。

・偵察にきた里中を取材しようとする新聞記者を、土門は「傷ついた男にそこまでする必要はないでしょ」「投げられないならせめて明訓のために相手チームを研究しようという里中の気持ちをさっしてやるべきです」と諭す。本当に土門さんは人格者だ。記者より土門の方がずっと大人みたいです。
そして里中が見てるのを承知で剛球を投げ込む。記者「な なんという土門だ偵察にきてるのならふつうは手の内をみせないはずなのに全力投球だ」「でかい!!投手としての心が一まわりでかくなった」。土門さんは最初から心のでかい人だったと思いますが。

・左手一本でマシンの球を打つ練習してる雲竜。里中に気づいてちょっと冷や汗をかいている。そのまま練習を続行してるので練習を見られたくないのではなく、右手のケガに気づかれる可能性を思って一瞬ヒヤッとしたのかも。

・音楽室で2時間もピアノを弾きっぱなしの殿馬。暑くなってきたのか学ランを脱ぐ間も、片手ずつ演奏を続行している。先生たちは殿馬の熱心さを高名なピアニスト(アルベルト・ギュンター)が見に来てるせいだと言ってますが、殿馬の表情からするにギュンターの存在など頭になさそう(もともと来ることも知らされてなかったようだし)。服を脱ぐ時さえ手を止めず引き続ける姿には、片時もピアノから離れたくない、興に乗ってピアノと一体化してさえいるような殿馬の心境がうかがえます。殿馬が本当にピアノが好きなのがよく伝わるワンシーン。このシーンがあることで、後にそのピアノを後回しにして野球を選ぶ決意をする場面がより重いものとなっています。

・練習後、サチ子から明訓校内に外人が入っていったと聞いた土井垣は緊迫した表情で「とうとうきたか」と考える。側で岩鬼が「ついにきたか わいを買いに大リーガーがよォ」と言ってますが、まさか土井垣までそう考えたわけではないでしょう。彼は明らかに外人の目的が殿馬にあることに気づいている。おそらく殿馬のピアノを聞かせるため高名なピアニストを連れてくるという話をある程度事前に聞かされてたのでは。音楽室を覗いていた先生たちはギュンター訪問を全く知らなかったようでしたが、野球部員の殿馬を引き抜くようなものだからと監督の土井垣には一応の断りを(ギュンターを連れて来た先生?が)入れていたのかも。

・ギュンター訪問ののち、海沿いの柵に腰掛けてひとり船を見つめる殿馬は、白い船に白鳥を幻視する。一年夏の地区予選優勝翌日といい、土井垣プロ初打席の夜といい、殿馬は複雑な思いを抱えているときはいつもひとり海沿いに佇んでいるイメージです。殿馬が見た白鳥は「秘打・白鳥の湖」すなわち野球への思いを示唆するものなのか、それともピアノ曲「秘打・白鳥の湖」=音楽への情熱を反映したものなのか。

・不平を鳴らす一年生二人に水をぶっかけた直後の三太郎は、マウンドに佇みオーダーに悩む土井垣の姿を窓から見て「夏・春と連覇して期待が大きいだけにこのピンチははかりしれない重圧だ いっそ日本ハムに入団しちまえばこの苦しみもないんだろうが」と思いやる。
いつもニコニコ顔であまり怒ってるところをイメージできない三太郎が後輩相手に厳しいところを見せたかと思えば、自分より年上の土井垣に対しては対等の友達に対するような目線でそのプレッシャーを気遣っている。しごかれてる下級生よりしごいてる土井垣の方が(自分も一部員としてしごかれる側の立場でありながら)大変なのだとちゃんと理解している。四天王に比べクローズアップされることの少ない三太郎の、大人びた一面がうかがえる場面です。

・岩鬼になんとプロ球団「大阪ガメッツ」から誘いがかかる。岩鬼が「東京メッツ」のファンという設定ともども『大甲子園』にさきがけ『野球狂の唄』とちょこっとコラボした場面。春の大会中に倒産した父の会社の再建を援助してもらえると聞いて、父のため家族のため迷わずガメッツ入りを承諾する岩鬼と、岩鬼の気持ちを尊重して入団をきっぱり断る岩鬼父との親子の情が眩しいです。
このエピソードは「わしは当てにしてるんだぞ 二年後のおまえの契約金一億円を それからみりゃおまえの学費くらいスズメの涙じゃ」という岩鬼父の発言の暖かさと腹の座りっぷり、再建の希望が潰えて涙を流す岩鬼母がそれでも夫や息子を責めず岩鬼に「カゼひくんじゃないよ」と優しい言葉をかける場面、母親としてごく当たり前の台詞に「お おっかさんがわ わいに初めてやさしいことばを」と涙ぐんでしまう岩鬼がどれだけ母の愛に飢えていたか、などさして多くもないページ数の中にいいシーンが目白押しです。

・白新高校の練習風景。この高二初夏の時点で白新のキャプテンは不知火ではない。夏の地区予選で不知火がエース兼監督を務めているから、てっきりキャプテンも不知火兼任なのかと思ってました。

・山田攻略法について散々頭を悩ませたあげく何か(後から思えば超遅球)を思いついた不知火は、偵察に来た里中に気づいて「神奈川予選はフロックで勝てるほど甘くはないということだ ウフフフ」と不敵に笑う。土門・雲竜・不知火と三者三様の里中への態度。すでに夏・秋と二度里中に(明訓に)敗れていると思えないほど不知火態度でかいです。不知火は土門同様に里中が再起不能を宣告されたことを知ってるのだろうか?この不知火の台詞とその後の里中の台詞とでフロック=まぐれの意味だと知りました。

・腹立ちまぎれに石を投げたのがきっかけで南海権左にからまれる里中。本当に権左は石に当たったんだろうか?頭に石ぶつかってあの程度で済むものなのか。権左ならアリか。むしろ石が当たれば普通にケガするだろう一般人に当たらなくてよかったというべきかも。

・権左に石がぶつかったと訴えられて、最初は素直に詫びる里中。この時ちゃんと帽子をとって一礼しているのが、当然とはいえ礼儀正しいなーとちょっと感心。全国的に顔が売れてる立場上なるべく顔隠しときたい局面だろうに。

・権左の言葉にちょっと上向いた里中に眉が。里中に眉があるほぼ唯一の貴重なコマとして名高いシーンですね。実際には高一夏土佐丸戦のラストにもちょっと眉の見えるコマありますが。

・あからさまに金をたかろうとしてきた権左に、落ち着いた笑顔で冷静に対応する里中。何だか初登場当時の癖者な里中を彷彿とさせてつい惚れ惚れ。雲竜と大立ち回りやった時も思いましたが、妙にケンカ慣れしてます里中。武器もったヤクザ三人も余裕でノックアウトしてましたし。山田が止めに入らなければ権左相手でも(右腕が使えなくても)結構いい勝負になったかもしれない。

・あまりにもいいタイミングで駆けつけ里中の身代わりになって権左にボコボコにされる山田。このとき里中は「おれにやらせてくれ どうせ野球はできないんだ」と口にしている。一見冷静に見えたけれどやはり内心自棄になってたのがわかります。山田の台詞からいっても彼が里中をかばったのは里中自身を心配しただけじゃなく、気持ちの荒んでいる里中が事件を起こすことで野球部が出場停止をくらう危険を恐れたからですね。
そしてこの時山田が里中を「うちの大事なエース」と呼んだことが結果的に里中を再起をかけてのリハビリへと向かわせた。この一点を取れば権左は明訓にとっては悪霊どころか福の神かも。

・気絶した山田に駆け寄った里中は権左に「ちょっと背負わせてくれ」。右腕を故障した里中一人の力じゃ山田を背負い上げるのは困難でしょうが、だからといって気絶させた張本人に当然のように頼むか。言われた権左のほうも「はい」と素直なお返事。そのあと「なにィ」と言ってるので、思いがけないことを言われて思わずイエスと答えてしまった、というところでしょうか(でも山田に「待ってください」と呼び止められたときも「はい」と振り返ってるのでこういうキャラなのかも)。本当に負ぶわせてやってるしなあ。

・里中・山田と入れ違いにこれまたいいタイミングで権左の前に現れた通りすがりの谷津吾朗。しかも路上なのにキャッチャースタイルで固めた異様な風体。それはまあトレーニングのためなのでいいとして、状況を見ていたらしいのに不良少年相手にあっさり山田と里中の素性を教えてしまうのはどうよ。これで二人が今後権左につけ狙われるようなことになったらどうしてくれる。・・・ある意味そうなっちゃいましたが。

・権左のやりたい放題に脅える吉良高校の校長と教頭。なのだが、「コーチョ」「キョート」と呼び合い、「南海権左が卒業すればまた健全なスクールにもどるてば」「そ それが甘いのよコーチョ」てな口調が面白すぎて悲壮感も緊迫感もなく、権左のキャラともあいまって何だか愉快な印象。暴力高校としてもっと恐ろしげな敵になってもおかしくないところを、ユーモラスな味わいのライバル(キワモノだけど)に仕立てたのはナイス。

・土井垣の猛ノックで腹に顔面にボールの直撃を受け倒れながらも、「まだよまだよ」と起き上がってくる岩鬼。打たれ強さと負けず嫌いは岩鬼の信条ですが、いつも以上の迫力を感じさせます。やはり父が会社再建の近道を捨てても岩鬼の自由を優先してくれた、その思いに応えるべく自分が家を取り戻してやると燃えているがゆえでしょう。

・夜に部屋を訪ねてきた渚のヒジの遣い方に文句言った後、ひとりになった部屋でキャッチャースタイルでミット構えながら「里中・・・・・・」と内心呟く山田。これは単に友人として里中を心配してる、恋しく思っているというのではないでしょう。里中が神奈川の強豪校(土門の横学など)を偵察してまわってると聞いたときの「里中 土門などいい ここへきてこの渚をみろ(中略)どうきたえたって土門や雲竜の敵ではない」というモノローグに表れているように、山田は渚の実力を可哀想なくらい認めてないので、渚にダメ出しした後だけに投手里中が、彼の投げる球が恋しくなったんでしょう。だから里中を思うのにキャッチャースタイルをとっている。――と解釈はしてみても一人夜の部屋でわざわざこのポージングで里中の名前を(心で)呟くというのはなんかこう・・・(苦笑)。この時点で山田は里中がリハビリを開始したことを知ってるんでしょうか。

・登校途中の吾朗は不知火のチェックメモを思い返しつつ「このところ速球一本やりだ・・・・・・ いろいろ悩んで結局速い球しか打倒・山田はないと結論をだした」と考える。つまり不知火は超遅球の練習をやっていない。まずは速球を存分に投げ込んでからそのフォームのままチェンジアップを投げる練習にかかるつもりだったのか、吾朗が偵察してるのを見越して超遅球は秘密特訓してたのか。夏の地区予選に間に合わせることを考えたら、すでに秘密特訓開始済みの方がありそうでしょうか。

・猛練習を課す山田と土井垣を前に心身とも完全グロッキーの渚と高代。高代などほとんどイジメを受けてるようにしか見えないスパルタぶり。まだ一年、それも夏前なんだから練習についてこれなくても当然なのに、といささか気の毒になります。しかし山田たちが一年の時にはこうした悲惨さは感じなかった。打たれ強さと根性は一級品の山田と岩鬼、華麗なフットワークで体格のハンディを補ってあまりある(ピアノを長時間弾くのに慣れてるので意外にスタミナもある)、そして苦痛を表に出さない殿馬、体格は劣っても根性なら誰にも負けない里中と入部当初から一筋縄でいかない面々ばかりでしたからね。

・殿馬が野球部に戻ってきたと聞いたライバル校のピッチャー陣の反応。雲竜が「そうかとうとうきたとバイ」と豪快に笑い、土門が「だんだん常勝・明訓の姿にもどりつつあるな(中略)しかしそれでもおれは勝つ!!」と穏やかな笑顔なのに対し、不知火は「えっ殿馬がもどってきた」とちょっとこわばった顔。殿馬苦手意識が出ているような

・春季大会での神奈川の強豪チームの戦績紹介の最後に吉良高校のコールド負けも説明。この時のナレーションの「あっとそれからどうでもいいことだが〜」という導入が笑える。そこまではナレーション真面目だったのに。

・春季大会の後、病院帰りに山田の右手首のケガを指摘する里中。「ほかのやつらはごまかせてもおれはだまされん おまえのすべてを知っておまえにほれて明訓に入ったおれだ」。さすがの眼力ですが、「おまえのすべてを知って〜」ってのはなんだ。中学時代どれだけ山田をストーカーしてたんだ。

・「山田 おれはどんな苦労でもするぜ 全国数多い投手の中で日本一のキャッチャーとバッテリーが組めてるんだからな」(涙ぐみつつ微笑む里中)。「そ そんな大げさな」「山田 まっていろ 必ず治っておまえに長打を期待せんでもいい失点0投手になって明訓にもどるぞ」(山田の右手を左手で握ったまま)。「里中・・・・・・・・・」。
このやりとり、最初は何故里中は山田の手を握ってるんだろと思ってたんですが、前のページで山田のケガを指摘したとき右手を掴んでそのままだったわけですね。
印象深いのは里中が山田に「長打を期待せんでもいい」と言っていること。自分もリハビリを頑張るから山田も早く手首を治してあの打棒を取り戻せとは言わない。里中にとって山田はホームランバッターであるよりまず名キャッチャー、恋女房であることが感じ取れます。
同時に春の土佐丸戦に顕著なように、これまで里中は山田が打てないと非常なショックを受ける傾向があった。土井垣の言う通り山田だって人間なんだから打てない時があっても当然だろうに。山田が打てないことに必要以上に動揺してしまう、山田の打棒に精神的に依存してしまってる自分を変えていこうという意志もこの台詞に滲み出ているような気がします。

・↑の二人を物陰から黙って見ている殿馬。その表情からは彼が何を考えてるのか読み取れませんが、それから遠からず殿馬が留学の話を断るためにニューヨークに発ったのを思えば、殿馬が留学(ピアノ)より当面は野球を選ぼうと決めたのはここで二人の会話を聞いたことが直接の契機となったのでしょう。この時殿馬が二人の姿を見つけたのはただの偶然なのか。それとも彼も里中の容態が気になって病院を覗きにいくところだったのか。

・地区予選開幕の数日前、見舞いにきた山田から殿馬アメリカ行きの報告を受ける里中。重要な戦力である殿馬が抜けるというのに二人とも笑顔で語り合っている。とくに小泉先生と軽口を叩き合ってる里中は、前に山田が様子を見に来た時に比べずいぶん気持ちに余裕があるのを感じます。開幕も間近なのだからもっと焦っててもおかしくないのに。
小泉先生が山田に語ったところだと里中はカルシウム不足で骨が弱い分治療が難航してるそうですが、顔色の明るさからして大分快方に向かってるその手ごたえが本人にも明らかなんでしょう。

・その夜のミーティングで抽選会の結果報告。渚に向かってピッチャーは自分がやると主張する岩鬼に対し土井垣がさらっとした笑顔で「静かにせんかスーパースター」。この表現に笑ってしまった。叱ってるのに持ち上げてるという(笑)。東海戦前日の昼に、「練習はへたなやつがすればよろしやないか」と言った岩鬼に「じゃあスーパースターがまっ先だ」と笑顔で言ってたのも同様。

・サンドバック相手にバッティング練習する土門のモノローグ。「山田 決勝までこい 谷津吾朗というすごいキャッチャーをみせてやるぜ」。
秋季大会の頃は三太郎への執着がいまだ強かった土門が、すっかり吾朗を自分の女房役として磐石の信頼を寄せているのがわかる台詞。春のセンバツ時をはじめ吾朗がいかに土門に惚れきってるかをずっと見せられてきただけに、吾朗によかったねえと言ってあげたくなります。

・地区大会のベンチ入りメンパー発表。監督でもキャプテンでもなく二年生の岩鬼がメンバー表を書いて発表する不思議。単に字が上手いから(今さらながら意外だ)清書係に選ばれたってだけなんでしょうが。

・「甲子園をめざし神奈川球児は今ねむりについた 栄光の甲子園代表を夢にみて」とのナレーションに反して港近くの道路をランニングする里中の姿。みんな寝静まったころにまだ一人練習している彼の努力が見えます。

 


(2011年3月11日up)

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