高一夏・通天閣戦

 

地区予選決勝ですでに登場させておいた坂田三吉と初戦で対決。予選もそうですが、一回戦・決勝戦は(甲子園は準決勝も)ちゃんと描写し、間の試合は適当という形式。坂田は決勝の相手である緒方ともども家庭環境もちゃんと描かれていて(もっとも描かれるほどに謎が深まるような家庭ではある。お鹿ババアは実の祖母じゃないですよね?犬を売ってお金もらったりしてたし。でも一緒に住んでるぽかったりも・・・)、そのガメつさと飄々とした態度でしっかりキャラ立ちしている。やはり敵にも魅力と深みがあるほうが試合も面白くなりますね。ダイナミックさあふれる通天閣打球もいかにも坂田のキャラらしいし。

そしてなんと言ってもこの試合の立役者は北でしょう。『ドカベン』で五人衆以外がこんなにも活躍する(決勝打を放つ)のは珍しい。あとは高二秋白新戦での香車くらいでしょうか。明訓ナインのなかでも殿馬についで小柄な、非力かつ緊張で震えてさえいた北が、妹の応援を支えにファールでねばったあげくにまさかのヒットを打つ。打った瞬間の信じられないというような表情、勝利後の整列の時に流した滂沱の涙が忘れられません。ごく一般的な高校球児にすぎない北だからこそ、この一打がこうも感動的なのだと思います。高二春決勝のケガがもとで以降の試合に出られないまま引退となったのが実にもったいなかったなあ。


・岩鬼初打席。「だ 第56回大会はこの男・岩鬼のプレイボールホームランで始まり11日後のサヨナラ優勝ホームランで幕を閉じるで」。プレイボールホームランはなかったが、決勝戦はほんとにサヨナラじゃないが勝利打点になる逆転ツーランを打っている。岩鬼の予言がまたも当たった。

・「どまん中はだれでも打てるやないけ 大阪のルールはそれがストライクなんかい」「ストライク 全国的にストライ〜〜ク」「あしたもあさってもどまん中はストライクか」「永久にだよ!!どまん中はストライク!!」岩鬼と審判の会話が面白い。

・わざと平凡なゴロをトンネルする殿馬。山田はマウンドへ行って下手にパーフェクトなんてやると疲れるからこれでいいんだと声をかける。殿馬がわざとトンネルしたその意図もわかったうえでのフォロー(しかし「明訓の投手はきみ一人だ」というのは県大会二回戦から準決勝までを投げた岩鬼にひどいような)。表情からして言われるまでもなく里中も理解しているようです。
つづいて殿馬が今度は鮮やかなファインプレーを決める。トンネルがわざとだったのがこれでわかりますね。

・「三振をとるちゅうことはバックを信頼してへん証拠や」と激昂する岩鬼に戸惑い顔に首をすくめる里中(首が服にもぐっちゃってるのが可愛い。里中のユニフォームはいつも首まわりがちょっと余ってる。里中の華奢な体型を示す記号みたいなもんですね)。岩鬼のハッパをつまんでバチと顔に当てるときのちょいいたずらっぽい笑いも可愛い。

・岩鬼のあくびをたるんでると叱るサチ子を「1点を争うこういう試合にはあくびはとてもいいことなんだ」と諭す山田。あとでこの試合の土壇場でわざとアクビしてみせて皆の緊張をほぐすシーンの伏線ですね。

・打者あと二人でさすがの里中も緊張の局面、山田がわざとアクビをしてみせる。岩鬼・殿馬・北、さらに里中も大あくび。あくびしてる里中が可愛いです。坂田まであくびしてる。
その中「しかしさすがキャプテンの土井垣くんは真剣そのもの」というのはここでリラックスしとかなかったために通天閣打球を落とす前触れか。

・通天閣打球を(「おれがとる」と皆を制しておきながら)土井垣が取れずその間に坂田がランニングホームラン。「里中負けたわけじゃない まだ同点だ がんばれよ」と声をかける土井垣に「なにぬかすてめえがエラーしておきながら」と怒鳴る岩鬼はなかなかに読者の心理を代弁している。
一方言われた里中はとくに不服を(心の声でさえ)示していない。甲子園の頃には里中は結構土井垣と仲良くなってますね。

・北、フェンスに激突しながらも打球をダイレクトで取るファインプレー。眼鏡なしの北はこの時のみ。貴重な二コマ。

・懸命にボールを選ぶ北。『坂田くん 北くんを歩かすと それ以上に警戒を要する里中くんです』などと実況。すでに好打者里中のイメージが出来てきてます。

・北は妹妙子の存在に励まされてツースリーからファールでねばる。冷や汗を流し緊張に震えながら投球を見つめる北と対照的にネクストサークルの里中は冷静そのもの。しかしその眼差しは北の打席を通じて坂田の球を見切ろうとする真剣さに溢れている。自分に打席が回ってくるものと確信してるのがうかがえます。
たとえ北が打てずチェンジになっても十回裏を無失点に抑えれば十一回は里中の打席からはじまるわけで、「打ってやる」だけでなく「抑えてやる」という意志も感じられる表情です。

・山田北さんを呼び捨て。一方で北が「里中くん」と言ってたり。このへん学年設定が適当です。

・勝ってマウンドで飛び上がる里中。山田に抱きつくのでなく一人で飛び上がる姿はなかなか貴重。そのあとやっぱり山田に飛びついてるけど。勝利直後の里中はどうしてこう可愛いんだか。

・翌日の新聞は里中の写真が大きく載り見出しも「小さな巨人里中(明訓高一年)三振12個の快投!!」。里中・北のツーショット写真は里中が北の肩を抱くようにしてどうみても里中のほうがえらそうです。

 


(2010年9月3日up)

 

 

SEO [PR] おまとめローン 冷え性対策 坂本龍馬 動画掲示板 レンタルサーバー SEO