高一秋・東海戦

 

前の試合同様に里中不在の穴を埋めるための投手リレー、それも繰り返しを避けるために打席の順番で一回ずつ交代で投げるという奇策が描かれますが、やはり山岡(というか四天王以外)が投げてもあまり盛り上がらないと思ったのか、3回からもう里中が(前の日の状態からすれば唐突すぎるほどの回復具合で)投げることに。
そのあとはわりにトントン拍子に勝ってしまうので、どちらかといえば、殿馬が超スローな投球で雲竜の調子を狂わせるとか、里中が殿馬の超スロー投球が何秒かかったかたちどころに答えたり山田シフトを説明したりで頭脳明晰な参謀ぶりを見せてくれるとか、里中が投げられない現状で山田までケガをさせられたことに怒る岩鬼の友情だとか、四天王それぞれに見せ場が与えられてる前半部のほうが里中復帰後の後半よりも面白いです。
そういやこの試合、夏の予選決勝で岩鬼にまさかの大ホームランを打たれた雪村が出場していない。一回から雲竜がエースとして登板してるから出番がなくなったんだろうけど。二年夏の地区予選ではホームランまで打って活躍してたので、全試合出てたような気になってました。


・先発の岩鬼が三球でチェンジと(珍しく)好調なのにもかかわらず次の回さっそくに殿馬リリーフ。なんと一回ごとに(調子に関係なく)打順に従ってピッチャーを代える仰天の徳川采配。この体たらくに里中内心「こんなになってもまだこのおれは・・・」。
岩鬼がストライク入る間は岩鬼に投げさせればいい気がするんですが。コントロールが安定してる限りにおいては岩鬼は名投手なんだから、雲竜以外はそこそこレベルの東海打線なら十分抑えられると思うけどなあ。

・殿馬はゴロ球と超スローなフォーム(里中計算によれば投げるまでに120秒)で4番雲竜を1ボール1ストライク。やはり超スローフォームから今度は超スローボールを放ち、タイミングが狂った雲竜は打ち上げてセカンドフライに。殿馬に代わってセカンドに入っていた岩鬼が取ってアウト。雲竜をカッカさせる作戦。5、6番も同じくセカンドフライに打ち取る。
岩鬼のところに飛ぶように狙って投げている殿馬(にわかピッチャーなのにそんなことできるってすごい)を、山田は内心「なんだかんだいっても殿馬は岩鬼を信じているんだな」と感じる。中学時代から岩鬼へのツッコミ担当のような殿馬。「バカな子ォほどかわいいというづらぜ」発言に見えるように口ではとやかく言いつつ岩鬼を人間的に好きなんだろうとは思ってましたが、プレーヤーとしての実力もちゃんと認めてたんだなと何だか嬉しくなりました。高二夏のハイジャック事件で負傷してしばらくの間やたらに岩鬼を持ち上げる発言を繰り返してましたが、まんざら嘘でもなかったのかもしれない。

・雲竜の山田シフトについて里中は王シフトを例に引いて説明。「インコースはまかりまちがっても投げてこないよ それがこのシフトの絶対的条件だ」「な なんでや」「引っぱってファーストの頭をぬけば山田の足でも三塁打さ」。山田の鈍足も考慮したうえで相手の作戦を見切っている。根性の人という印象の強い里中ですが、実は山田に次ぐ明訓有数の頭脳派だと思います。

・山田が左手首へのデッドボールを食らう。投げた雲竜は動揺してないが狙って投げたのか?岩鬼は雲竜に激怒。「おんどりゃあわざとぶつけよったな いかにおとなしいわいでもこれは許せんで わいに投げるんならわかるで わいの反射神経は抜群やさけの けどあのへたくそのにぶい山田をねろうたっちゅうのが許せんのじゃい」。言葉はひどいですが要は山田のために怒ってるわけで、岩鬼の優しさ、友情に厚い性格がよく出てる場面です。

・山田のデッドボール出塁に燃えた明訓。三太郎はつまった当たりを根性でポテンヒットに。石毛の送りバントでワンアウト2、3塁。徳川は7番今川にツーストライクまでスクイズすると見せかけさせて連続ウエストを誘い四球を奪う。
そしてワンアウト満塁で8番仲根に代わり里中を代打に起用。前の試合の不知火と同じく投手でなくまず代打として復帰という意表をついた展開です。しかし不知火の場合と違い、前の晩の段階ではとても投げられそうになかった里中だけに、まず代打として登場というのは本当は投げられないものを投げられると東海ナインに(そして読者に)誤認させるのを狙った(そうしておいて攻守交代したら内野か外野を守らせる)んじゃないかと疑ってしまいました。ヒッティングでなくスクイズの指示が出たのも、力いっぱいバットを振れる状態じゃないからなんじゃないか、とか。結局その後全然普通に投げてましたけど(苦笑)。まだ3回で先は長かったのに。

・里中リリーフに関して岩鬼と徳川のやりとり。「なんぼ1点とったいうたかて あのポンコツ里中が打たれりゃ明日はあらへんのやで」「わしは明日のことは考えとりゃせん あさってのことを考えとる 今日から明日にかけて雨じゃ 里中思いきり投げてこいや明日一日休めるでのォ」。
この会話ですが、秋季大会の日程はどうなってるんでしょう。春夏の甲子園とかと違って秋季大会は二学期の真っ最中。平日は普通に授業があるので試合は土日のみのはず(翌年秋の秋季大会はこのあたりが細かく描写されてました)。準々決勝の翌日が準決勝、その翌日が決勝戦の予定だったが雨で一日順延、というと4日連続で試合が可能な日だったということに。授業はどうした?

・左手首負傷の山田は三塁に入り、代わりに三太郎が捕手を務めることに。山田に劣らぬリードを見せる三太郎ですが、実は三塁の山田がさりげなくサインを出していたというオチ。やがて雲竜はそれに気づくものの時すでに遅く、結局里中を打ち崩せずに意外にあっさり明訓が勝利する。
里中は3回から投げてるのに、ちょっと気づくのが遅くないか?新たに土門の横浜学院というライバルが登場した皺寄せか、この試合といい次の夏の地区予選二回戦といい、雲竜−東海は里中復帰戦のかませ犬的立場になっちゃいましたね・・・。


(2010年10月22日up)

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