高一秋・関東大会前

 

盗まれた優勝旗の行方と並ぶ関東大会の目玉といえば、柔道時代の山田のライバル(+仲間)たちの再登場でしょう。秋季大会で夏の地区予選の(中学時代にすでにお目見えしている)ライバル・不知火と雲竜を再び出してきたように、関東大会も全くの新キャラばかり出すのでなく、存在だけで読者の興味を引きつけ得る過去キャラを出そうという意図だったものと思われます。

しかしその結果として彼ら三人のキャラは相当変更を迫られることとなった。中学時代、山田が野球に戻った当初は彼と対決するために野球に転向する気振りも見せなかった彼らが、なぜ今さら野球を始めたのか(山田の明訓が日本一になったから?だとすると夏以降に転向してもうエース級なのか?)というのも疑問なら、試合の後はすっかり山田と仲良しになっていた賀間さんやそもそも山田とはチームメイトだった、彼にライバル意識など感じたこともなさそうな木下が山田に挑戦してくるのにはどうにも違和感が。特に「わびるようにきょうもひっそりと咲いていた」花に例えてわびすけと仇名された木下はほとんど別人じゃないか。

当時読者からもそういう声が多かったのか、26巻の著者コメントで「(わびすけは)絶対的なファンの要求で再登場してきた。あのやさしいわびすけを、私は敵として山田に挑戦させた。(中略)この性格変身にはファンも驚き、とまどったでしょう。 わびすけのように、ファンによって再登場してくる場合もあるのです。私とファンは常に一体なのです。」と説明がなされています。つまり読者のラブコールで再登場したと。
しかし再登場に当たって性格変わってたらファンにとっては意味ないような気がするんですが。そもそもなぜ三人とも県外の高校に行ったんだか。山田と戦うためなら明訓以外の神奈川の学校でいいだろうに(しかるべき理由が見つからなかったのか、このへんは全く説明されなかった)。

ただその不自然さや多少の矛盾はふっとばすような勢いがやはり当時の『ドカベン』にはあったんですよね。納得行かない部分はあっても“それはそれとして”影丸や賀間さんやわびすけとの対決には燃えるものがありました。


・秋季大会優勝の余韻も冷めやらぬうち、突然の監督辞任を宣言して後を土井垣に託しふらりと立ち去ってゆく徳川。「おれは待ってるぜ 立派に成長して諸君がノンプロ秋田製紙にくる日を その時こそまた一緒にやろうぞ」。
この時点ではノンプロ(秋田製紙という名前は明らかに掲載誌『週刊少年チャンピオン』発行元である秋田書店のもじり)の監督になると言っていたのが、さほど間もおかずに関東大会でのライバル・クリーンハイスクールの監督として再登場する。わざと明訓ナインには嘘を教えた?それにしては上述のセリフはモノローグなんだよなあ。わびすけの場合同様、徳川監督を惜しむ読者の声に応えて、急遽敵方の監督として再登場させることにしたのかも。 

・かくて新監督となった土井垣は「おれはおまえらも知っての通り敗北という二字が大きらいな男だ 少なくともおれが監督を続けるかぎり無敗でいく」と意気揚揚と宣言。ドラフトで日ハムに指名された後、大沢監督に「明訓が負けたら日ハムに入団する」と約束した土井垣ですが、この時点ですでに、試合に負ける=明訓の監督を降りるという公式が彼の中には出来上がっていたようです。

・夏に戦った土佐丸高校との勝負に思いを致す部員たちに「なにが土佐丸だ その前に関東の強豪がいるぜ 栃木の小山学院群馬の青田高校」とハッパをかける土井垣。このセリフあちこちから突っこまれまくってますね。実際の関東大会のメンツと違いすぎるじゃないか。水島先生も適当だなあ(笑)。

・グラウンドをランニング中にギャラリーの女子からの熱い声援を浴びる里中に岩鬼がちゃちゃを入れる。それに返事した里中はランニング中に私語をしたかどで岩鬼ともども土井垣に竹でしばかれるはめに。
完全にとばっちりなのに里中はちょっと痛そうな顔をしただけで土井垣の理不尽な怒りに腹を立ててるようでもない。入部したころの里中なら嫌味か冷笑で報いそうな状況です。
これは里中が丸くなったというより、彼の中で土井垣への好感度が断然上がった結果かと思います。厳しくて生真面目な分融通が利きにくくて、でも野球と明訓野球部を心底愛している土井垣に、いつしか共感や尊敬を覚えるようになっていたのでしょう。里中自身もそういうタイプだもんな。

・中学以来久々に山田の前に現れた影丸は、いきなり山田にボールを投げつけて挑発。岩鬼が腹を立てるのに対して里中は「岩鬼 山田はおまえと違って暴力は使わないぞ」と言うのだが、そのそばから里中の持つボールをとって影丸にぶつける山田(笑)。
“目には目を”的な、山田にしては過激な行動。見た目は別に怒った顔もしてないんですが。里中もちょっと戸惑い顔です。

・関東大会抽選会から戻った土井垣は、銚子球場のスタンドで山田たちと話しながらズボンまで堂々着替え出す。おいおい(汗)。試合中に里中がベンチでアンダーシャツを着替えてる(半裸になる)場面も「テレビに映っちゃうぞー」(そして女性ファンが黄色い悲鳴をあげるだろう)とか思ったものですが、さらに上をいっている。まわりは身内の男連中ばかりとはいっても公共の場所なんですけどねえ。

・山田の打撃練習を見ている記者たちが甲府学院について「エースで四番の村田一人のチームだからな」「いやキャプテンの賀間がいるぞ」「あいつのバッティングはムラがありすぎる 当たればでかいがここの里中のタマは打てまい」などと話している。以外に賀間が過小評価されてるんですね。実際の試合になるとエースで四番のはずの村田は影が薄かったなあ。
赤城山の木下(わびすけ)もそうですが、影丸以外の旧友たちは秘密投手の扱いで実質エースを食う活躍をするパターンですね。ちなみに春の大会の江川学院・ミラクルエース大橋に至っては、新二年生の(しかも実は故障している)中に完全に出番を取られてしまっていた。ミラクルエースだってのに。

・旅館の夜。ロビー?で取材される山田。ドアの外で岩鬼「なんやてまだやっとんのかいな」。里中「もうすぐ終わるから」(岩鬼の左腕を引っ張りつつひきとめるように)。「だいたい山田だけがインタビューうけてるんが気にいらん」「いいじゃないか」(笑顔で)「わいはロビーでゆっくりくつろぎたいねん」。バチと音させて里中の頭を左手で下に押しやる。この一連のやりとりというか互いへのボディタッチのあり方が仲良しぽい感じで可愛いです。頭を押さえつけられても里中も特に嫌そうな顔もしてないですしね。

・結局山田へのインタビューにまざる岩鬼。賀間の自信は山田の欠点を知ってるかららしいという記者に「欠点・・・」と山田が考え込んでる、岩鬼が「そうでんねんこいつは欠点だらけでんねん」と笑顔で右手で山田の頭を上からバチンと押さえる。里中につづいて山田にも頭バチン(笑)。反復してるところがなんか可笑しいです。

 


(2010年11月19日up)

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