高一秋・クリーンハイスクール戦

 

個人的に柔道から転向した3人との試合の中では、これが一番の名勝負だったように思います。第一に前歴が投手としての資質にきちんと反映されていること。賀間の砲丸投法はまだ怪力を生かしたということで中学時代と結びつくのですが、わびすけの両手投げは彼が両ききなんて設定が中学時代全く出てこなかっただけに(そのへんを配慮してか野球をするときに限って、として理由をつけてはいましたが)唐突感をまぬがれませんでした。

そこへいくと影丸の背負い投法は柔道出身、人並み外れた身軽さとバネの強さを初登場シーンで早くも示している彼らしい技術だった。岩鬼との過去の因縁も試合のクライマックスで劇的に生かされた。プロ野球編でダイエーに入った岩鬼と中日の影丸がまたも対決となったときにも柔道時代とこの試合での二人のバックドロップの応酬が大きく扱われてたくらいで、後々まで読者に大きなインパクトを残したものと思います。

もう一つ、記憶喪失という奇禍に見舞われた山田が後半記憶を取り戻して捕手に復帰した後に、彼が打者の性格を読んでリードを考え三者凡退に打ち取るさまが丁寧に描かれていること。山田不在のままに明訓が大苦戦となり山田の存在の大きさが改めてクローズアップされたのを受けて、彼の凄さを具体的に見せてくれる。試合の前半は山田記憶喪失(+優勝旗の帰還)に焦点が当てられ野球の描写が薄かっただけに、『ドカベン』らしさ、明訓らしさが一気に戻ってきたようで何だかワクワクしました。

この試合、あと一打席で負けというところまで追いつめられたとはいえ、まさか本当に明訓が負けると思った人はいなかったでしょうが(わびすけとの対決がまだだし、選手たちに責任はないといっても優勝旗を盗むような悪事を働いた学校が勝利する“悪が栄える”オチは考えられない)、そうなっても不思議はないくらいの格のあるチームでした。水島先生もクリーンハイスクール戦に一番力を入れてたんじゃないですかね。山田記憶喪失、優勝旗盗難という関東大会の二大事件両方にからませ、明訓前監督の徳川を監督にむかえ、影丸ばかりでなく山田と張るほどの強打者フォアマンをも擁している。駒は揃ってる、という感じ。これが決勝でなかったのが惜しいくらいです。

・・・なぜクリーン戦を決勝戦にしなかったのか――書きながら気がつきましたが、これがもし決勝戦だったら敗れたクリーンも春のセンバツに出場できてしまうからですね。敗北の瞬間「甲子園の・・・甲子園の夢が消えた」と校長が呟いているように、新設校のクリーンハイスクールは名を高めるため甲子園出場に燃えていた。そのために優勝旗盗難という罪まで犯しながら公に裁かれることのなかった彼らにとっては甲子園に出られない≠アとがもっとも辛い罰になる。だから彼らは準決勝の段階で敗れねばならなかったし―この年の関東のセンバツ枠は二校なので決勝に残らなかった時点で甲子園出場はなくなる―、その敗北がキャプテンの造反(影丸による敬遠無視+バックドロップという、勝利より意地にこだわった結果の個人プレー)によってもたらされたのも必然だったのでしょう。


・医務室で目を覚ました山田はなんと全ての記憶を失っていた。甲府学院戦ラストの頭部強打時にこの展開を予想した人はいたのか。
そんな山田は岩鬼に対し「君 しかしすごい顔してるな」。山田の本音を見た気がします(笑)。「ほっといてくれ」と答える岩鬼。彼は自分を美形と思ってるはずなんだがそうとは思えない反応。実は案外岩鬼も周囲の評価がどうなのかわかってるってことか。続けて山田は「君はなぜハッパをくわえているんだ」。あまりにも初歩的な質問がいっそ新鮮です。いまや『ドカベン』の登場人物でそこに突っこむ人間は皆無ですからね。

・事情を知らされたサチ子と祖父がかけつける。「妹思いの山田だ これで思い出すだろう」と薄く微笑む里中。後から読み返すと「山田が真っ先に(唯一)思い出したのはあんただよ」と突っ込みたくなってきます。加えて「妹思いの山田だ」などとじっちゃんの存在はまるで無視なのもひどい(笑)。それにしてもそのサチ子よりじっちゃんよりまず里中を思い出すってなあ・・・。

・サチ子に必死ですがりつかれても何も思い出せない山田を岩鬼が「ええかげんにせえ」と庭でボールを取る練習に引っ張り出す。病人相手に無茶な行動ですが、サチ子を悲しませてる事に対しての「ええかげんにせえ」だったのかなーと思ったりしました。

・ボールを受けはできるもののルールを忘れてる山田のことを、「やはり記憶がもどらんことにはどう使ってみようもないのォ」などというじっちゃん。そんな選手としての山田以外はどうでもいいような発言を実の祖父が・・・。

・今度は里中が投げて山田に打たせる訓練。じっちゃん「里中球種をいってから投げてみろ」。側に土井垣がいるのにじっちゃんが監督のようです。その昔岩鬼の投げた石を通天閣打法(ぽい打ち方)で打ち上げたり、上で引いた「記憶がもどらんことには・・・」発言も何だか監督目線だったり、じっちゃんの過去が気になるところです。

・山田あてにかかってくる優勝旗泥棒からの電話。甲府学院との試合前の電話の際も思いましたがなぜ土井垣あてじゃないんだ。記憶喪失の山田をそのまま電話に出させてしまう周りも周りだなー。

・病院の待合室?に座るじっちゃん。「しかし学校へ電話して驚いた 優勝旗が盗まれたとは」。選手の身内とはいえ部外者にバラしていいのか?

・クリーン対明訓。キャッチャーは三太郎。一回表ワンアウト二塁。影丸への4球目を三太郎後逸。『これはしかしとってやらなければいけません やはり山田くんから比べると落ちます』などといわれる三太郎。白新戦で山田の暴投を止めたときなど土門に賞賛されてたのに。

・初回でクリーンに二点とられ、1回裏4番三太郎大空振り、三球三振。あからさまに格好悪い。なんかこの試合、山田の重要性を際立たせるために三太郎が貧乏くじを引かされてる気がします。

・港の片隅で優勝旗を盗んだ男と出会った山田は、「おじさんぼくを山田といったということはぼくを知っているんですね なんでもいいからおしえてくださいぼくについてのことを・・・・・・」。こんな怪しげな男じゃなくてナインに聞けという感じですが、思えば彼らは右も左もわからない山田を引っ張り出して、いきなりボール投げたり打たせようとしたりでしたからね。まともに話できないイメージだったのかな。

・試合は6回終わって4対0。7回表もツーアウト2、3塁のピンチ。意外に岩鬼の様子も大人しいというか覇気がない。明訓は長い相談のうえでフォアマン敬遠。日頃敬遠に強い抵抗を示す里中はどんな気分だったろう。山田がいないんだから仕方ないと素直に納得しただろうか。

・徳川内心「里中をリードするキャッチャーが山田なら何をしてくるかわからんが里中なら満塁になると四球を恐れて初球かならずストレートでストライクをとってくる」。なぜか三太郎でなく里中のリードと決めこんでますが、元明訓監督だけに配球に里中の癖を感じたのか。
しかし老巧の、そして元監督だった徳川でさえリードを読めない山田はどれだけ凄いのだ。まだ高一なんですよねえ。

・8回裏、明訓は7、8番三振。9番里中が意地でファールしてねばりツースリーから選んでフォアボール。岩鬼三振。殿馬セーフティ、山岡はまたフォアボール。影丸結構コントロール悪い?

・三太郎会心の一打はレフトスタンドへ入りそうで入らなかったもののタッチアップで里中ホームイン。しかしいまだ3点差。あと打者一人で負け、しかもバッターはヒットを打つ場面が全くないと噂の石毛。こりゃどう考えても勝てんわ、というほど追いつめられたところへ恵みの雨が。
本当に里中は、そして明訓は雨に助けられている。おかげで客席に姿を見せた山田をベンチに引っ張ってきて試合に出すという荒療治を取れた。まあこのまま降り続いたら雨天コールドで明訓が自動的に負けてましたがね。

・雨による中断の合い間に山田をベンチに連れてきた里中たちは同時に優勝旗を取り戻すことに。里中から「(山田は)見知らぬ人からわたされたそうです おそらく犯人でしょう」と聞かされた土井垣は「山田くわしく話してくれ」と言うが、山田が雨をきっかけに里中を思い出しかけたためにそちらに話が流れてしまう。
結局そのまま山田は代打→ライトに入り、記憶を取り戻した代わりに記憶喪失中のことは忘れてしまったので、優勝旗を盗んだ犯人についてはうやむやになってしまいましたね。クリーンの校長と教頭も何ら裁かれることもない。まあ校長はずっと良心の呵責に耐えかねていたのだし、盗みまでやっても甲子園出場の夢が叶わなかったことが彼らの受けた罰なのでしょうね。アニメでは真相を知った徳川監督が教頭?を殴って監督を辞める場面があり、一応の鉄拳制裁が描かれています。

・石毛の代打に出た山田はツーストライクからまさかのスリーランで同点。記憶のない山田を代打に出す土井垣もすごいが実際打ってしまう山田はさらにすごい。走り方がわからない山田に岩鬼が説明をし、山田はバットをもったままゆっくり走り出す。その姿に徳川も影丸も愕然。呆然の面持ちで「記憶喪失」と呟く影丸。するどいな!
ベンチで出迎えるナインに懐かしさは覚えても思い出せない山田。そんな山田の姿に「同点ホームランという離れ業をやってまでまだこれでも記憶がもどってくれないのか・・・・・・」と土井垣は涙ぐむ。ここで涙ぐんでしまうあたりのナイーブさと青臭さが徳川・太平監督とは違う土井垣さんの魅力なんですよねえ。

・山田はとりあえずライトを守ることに。里中はライトに引っ張らせないためにインコース攻め。土井垣内心「山田里中をよくみろおまえは何度となくこのフォームからくりだされるボールを受けてきたんだぞ」。
いつもは正面から見てるフォームを後ろから見るんじゃ大分感じが違う気もしますが、実際里中の投球フォームを見続けたことが記憶を取り戻すための呼び水になる。雨のシーンに続いてここでも思い出しかけるのはまた里中。
記憶を取り戻したときに最初に名前を呼んだのが殿馬(たまたまそばにいたから)でまだよかった。これがまたまた里中だったらさすがにアヤしい気がしますから。

・記憶喪失が知れて一旦はドクターストップがかかりそうになった山田だが、病院の医師のとりなしで治療の一貫として出場を認められる。勝手に病院を抜け出して迷惑をかけた患者をこうしてかばってくれる――野球狂だからとはいえいい先生だなあ。

・ちなみにこの時医師の登場に先立って、ゲームに参加させることが記憶を取り戻す一番の治療だと土井垣がくいさがる場面があります。高二春土佐丸戦のボール増殖事件といい、土井垣は審判などに抗議・抵抗する場面も結構多い。単に勝敗がかかってるからではなく、優勝旗盗難による出場辞退を食い止めたときと同じく、選手たちの頑張りが無にされるのが耐えられない、彼らの頑張りに報いたいという思いがそうさせる。だからスパルタだろうが時にヒステリックだろうが部員も土井垣についていくんでしょうね。

・ノーアウト二塁で里中打たれるも、ピッチャーの左を抜くはずの強打を飛びついて自ら止める。記憶はなくとも山田がグラウンドにいることで、里中も本調子になってきたようです。

・フォアマンの打球を懸命に追った山田はフェンスに激突。そのまま転倒し動かない山田に土井垣が「山田 とっていてくれ〜〜」と叫ぶ。
後に高三春の土佐丸戦でクロスプレーでふっとばされフェンスに叩きつけられた山田に里中が「山田〜〜 落とすな 絶対落とすなよ〜〜」と叫ぶシーンがあり、「少しは山田の体も心配してやってくれ(苦笑)」と突っこんだものですが、土井垣の場合「とっていてくれ」という“お願い”表現のせいか、試合に勝つことだけでなく山田の体もちゃんと心配してくれてるように聞こえてきます。土井垣さんは本質的に優しい人ですね。

・ここで頭を打ったのをきっかけに山田は記憶を取り戻す。記憶を失ってからキャッチャーとしての捕球と打撃の練習はさせられても守備練習はやってない山田が打球に反応して後を追ったのは、里中のフォームに触発されてキャッチャースタイルで座った=体が守備面でも野球を思い出しつつあったのと無関係ではなかったでしょう。

・「ホームはアウトか殿馬」「そうづらチェンジづらぜ な なんづら て てめえよ 今おれのよォ名前よんだづら」。呆然としてる山田をよそに「ぎゃあ〜〜づら やったんづら〜〜」と大喜びする殿馬。日頃クールな殿馬がこんなにテンション高いのは中学の(登場初期でまだキャラが固まりきってなかった)時以来なんでは。ナインもかけよってすごい喜びよう。
その中で岩鬼と山田の「わかるかこのわいが」「何をいってるんだ天才児」というやりとりに笑ってしまった。記憶喪失だったことを忘れてしまってる―自分の現状もわからない状況でもしっかり岩鬼をヨイショするのは忘れないという・・・。

・笑顔の里中に背中を押されてベンチに戻ってきた山田を土井垣は「このやろうとうとうやりやがった」と涙ながらに抱きしめる。土井垣さんは現役時代から山田をずいぶん頼りにしていましたが、こんな風に抱きしめるという反応はこれまでになかった。いつもの山田が帰ってきてくれたことが本当に嬉しかったのがよくわかります。
同時に「やりやがった」は山田のファインプレーに対してではなく(それならホームランを打った段階で言っているだろう)記憶を取り戻したことに感嘆しての行動ですね。戦力として山田が必要だからというだけでない、山田自身の体を心配してたのが伝わってきます。いい場面だ。

・記憶の戻った山田は三太郎に代わってキャッチャーに、さっそくにその強肩を見せ付ける。三太郎「かなわんな差が歴然だ」。ほんとこの試合の三太郎は山田の引き立て役なんだよな・・・。

・山田h5番名古屋に初球はボールになるストレートで様子見。里中「1点勝負の延長戦に入ったら四球は禁物・・・・・・ストライクを先行させていくのが常識なのに・・・・・・」と思いつつも「とにかく山田のいう通りに投げるだけだ」。
野球巧者でルールなどの知識も豊富な里中は山田の常套を外したリードに戸惑いつつも山田を信頼することを選ぶ。この年夏の白新戦もそうでしたが、里中が一見不可解&無茶な山田の要求に大人しく従う時は安心して見てられますね。

・山田h強引にファウルにした名古屋を見て勝気な性格と踏みスローボールで引っ掛けさせる。6番水鬼は「長身のわりにバットを短くもっている かなりしつこそうな男だ」とストレートど真ん中。びくりともしないことからカーブにヤマを張っていると見てもう一度ストレードど真ん中。3球目もストレートでまんまと見送り三振。次の打者はファーストフライ。
山田は打者の構えや打撃から性格を読んで配球。早くもスリーアウトチェンジ。「ナイスピッチング」「ナイスリード」と声を掛け合う山田と里中は二人ともいい笑顔をしてます。本来あるべき形に落ち着いたという安心感がお互いに(そして読者にも)あるのでしょう。

・11回裏先頭打者岩鬼。土井垣は岩鬼は期待せず殿馬と山岡に作戦授けようとするが、山田は「岩鬼のすばらしい持ち味がでれば一発でサヨナラだ」「もう君はわかっているだろうけどひょっとしたらこうする気だろ」といいつつ悪球作る方法(体を思い切り揺らして球を悪球に見せる)を伝授。「すばらしい持ち味」とまず持ち上げ、「もう君はわかっているだろうけど」と岩鬼のプライドを傷つけない形でアイデアを授ける。この細やかな操縦術、さすがはキャッチャー。
後に右肩を怪我した殿馬も一時期やたら岩鬼を持ち上げる発言をしますが、自分がフルパワーを発揮できない(できなかった)時は岩鬼をおだてて替わりに活躍させるというやり方をこの時の山田から学んだのかもしれません。

・バッターボックスに立つ岩鬼。土井垣内心「この山田はあのプライドの高いごうまんな岩鬼の心理を実によくとらえている・・・・・・・・ そしてさしてあるとも思えない実力をひきだしていく」。「さしてあるとも思えない」って失礼な(笑)。しかし岩鬼が悪球打ちなのに最初に気づき、高校初の試合を前に自分が悪役になって悪球打ちの適性を伸ばしたのが山田だったことを思えば、プロでたびたびタイトルを取るほどの強打者岩鬼を作り上げたのは山田と言ってよいかも。
土井垣さんは山田の岩鬼操縦術を誉めてますが、自分だって「スーパースター」「ドリームボーイ」と呼んだり、結構上手く岩鬼をおだてて使ってると思います。

・殿馬秘打の構え。しかし徳川内心「しかしここでヒッティングをさせるほど監督一年生の土井垣には余裕はないぜ(中略)監督の経験の浅いやつはまず最良より最悪の時を考えて作戦をたてるもんじゃい」。選手の力量のみならず監督の采配力まで読まれている。この試合には明訓の元監督と現監督、老巧の徳川と若い土井垣の勝負という一面もあるわけですね。

・土井垣は岩鬼にサインを送るが、そのサインが不満だった岩鬼は抗議の声をあげ、結果サインの内容が思い切り相手方にもバレてしまう。土井垣「これじゃサインがなんにもならん」。
高校初試合だった一年夏白新戦でもせっかくの殿馬考案づんづら打法を山田の打席中に岩鬼が大声でバラしてしまい、不知火が投球リズムを変えるというシーンがあった。作戦を大声で喋ってだいなしにするなんてアホな真似も、破天荒な岩鬼だと違和感がない。つくづく便利なキャラだなあと思います。

・徳川の予想に反し殿馬は秘打で出塁。徳川内心「う〜〜っ完全に裏をかかれた・・・・・・土井垣は殿馬にサインはだしていない すべてを殿馬にまかせていたのか」と悔しがる。事実とはいえ土井垣が徳川の裏をかいてそういうサインを殿馬に出したのだとは思ってくれないあたりが・・・。徳川さんの中では殿馬>土井垣なんですねえ。
そしてここで出た秘打が「G線上のアリア」。名称とボールの動きがうまくハマっているゆえか、その後も何度か登場している有名な秘打です。

・5番山田の打席。しかし初登場の背負い投法に三振を喫する。相当体力を使いそうな投げ方なので多用できないんでしょうが、それにしても11回裏まで背負い投法なしで抑えてきた影丸はさすがとしか言いようがない。きっと対山田のためにだけ開発したんでしょうね。

・「や 山田が・・・・・・山田が三振」と動揺する里中。土井垣が「里中山田だって人間だぞ さあしめていけ」と声をかけ、里中もすぐ気持ちを立て直すものの、山田の打棒にどれだけ里中が期待を寄せているか、山田ならどんな球も打って当たり前くらいに山田の力を盲信してるのがわかります。
二年春の土佐丸戦でもやはり山田の三振にただならず動揺してました。この盲信っぷりに右手親指のケガによる精神不安定まで加わった状態なんだからそりゃボロボロにもなるわな。

・13回表、フォアマンの3本目のホームラン。里中、フォアマンにはほとんどカモにされてますね。トップの岩鬼も出塁するも隠し球でアウト。明訓にあからさまに暗雲が立ち込めてきた感じですが、続く殿馬が「秘打不死鳥」(単なるバント)でかろうじて出塁して流れを変える。
大げさな名前に反して単なるバントですが、見送ればファウルの球で影丸を引っかけ、影丸の心を乱す効果を上げた。影丸はこのすぐ後山岡にデッドボール(しかも頭部)を出し、続く三太郎・山田にもともかくも当てられていますからね。

・頭部へのデッドボールで退場した山岡に代わりさっきアウトになったばかりの(打順が一番遠い)岩鬼が代走に出る。悪球打ちのネタも一試合で二度は使いにくい中、自然な形で岩鬼を出塁させ、後のホームクロスプレーへの仕込みを行っておく。ここの流れは上手いなあ。

・逆転のかかった局面で徳川の敬遠指示を無視して意地にかけて山田との勝負にいった影丸。三球目をライト線に打たれ逆転のランナー岩鬼はホームに突入。キャッチャーはホームに付いてるもかかわらず、「柔道時代の借りがある」岩鬼を影丸は自らホームに走って迎え撃つ。影丸の落球を狙っての岩鬼体当たりに影丸は思わずバックドロップを炸裂させるがそのはずみに落球し、結局明訓のサヨナラ勝ちに。
敬遠無視も岩鬼を迎え撃ったのもどちらも影丸の意地からくるもの。結果的にその意地が仇になったわけですが、だからこそ意地を貫いて劇的に敗れた影丸は負けてなお非常に格好良かった。柔道から転向した三人組の中で作中での扱いは明らかに影丸が一番ですね。『大甲子園』でも格好良かったし(他の二人は出番もなかった)。

・死球で医務室にいた山岡は意識が戻るなり試合を気にして朦朧としながら部屋を飛び出す。山岡さんの真面目さ、野球への情熱を感じる場面です。そこに山田たちがかけつけ、山田「勝ちました山岡さん」里中「山岡さんの代わりの特別ランナー岩鬼が決勝のホームインです」「山岡さんの死球が生きて山田にタイムリーヒットがでたんです」と口々に報告。山岡のおかげというところを強調するナインの心遣いが温かいです。
安心するなり倒れこむ山岡を山田がすべりこみキャッチ。里中「ナイスキャッチ」ととびあがって喜ぶ。みんな浮かれまくってます。山田記憶喪失にはじまって、実に苦しい試合でしたからね。お疲れさまでした♪


(2010年12月4日up)

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