中学野球編

 

ついに連載当初からの予定だった野球編へと突入。しかし皮肉なことに柔道編時代にいずれ野球漫画に移行するための仕込みとして作中にしばしば野球要素を持ち込む役割を果たしていた長島が、野球編開始に先立って負傷のために投手生命を絶たれてしまう。その直後に登場した、やはり怪我で一度は選手生命を絶たれた小林が劇的な復活を遂げるだけに何とも気の毒である。しかも31巻で明かされたことですが小林は長島にとって同じ投手として県内最大のライバルだったはず。当時でさえ自分のもっている記録をどんどん塗り替えていった男にここで完全に水をあけられて・・・何ともはや。

ともあれ自分とまた戦いたいがために完全失明のリスクを負って手術に踏み切った小林の気持ちを知った山田は、ついに野球へのカムバックを決意。秋ごろに不知火たちが訪ねてきたときもそうですが、いったんは野球をやめようと決意した山田を野球に呼び戻すのは、常に彼をライバルと目指す男たちなのですね。山田とバッテリーを組むことを望んだ長島や里中ではない(里中に関しては不知火たち同様自分と戦うのが目的と勘違いしてたようですが)。自分との戦いを欲するライバルの存在こそが山田の闘争心に火をつけるということなんでしょうか。里中とバッテリーを組んで以降はもっぱら里中が山田のモチベーションになっていくんですけどね(笑)。

かくて山田は野球に戻ってきたものの部員はいない監督はいない(前監督はどうした?)で、実質野球部をゼロから立ち上げるはめに。新たにメンバーを集めて部(とくに運動部)を作る、再生するというのはスポーツ漫画にはよくある展開で、水島漫画だと『男どアホウ甲子園』『おはようKジロー』なんかもそうですね。『球道くん』の高校編もややその傾向があるし。岩鬼の我が儘で部員集めを完全に押しつけられ日限まで切られる中で、ともかくも山田は次々部員をゲットし最後には新任の景浦先生を監督に得て、どうにか野球部の体裁を整える。

そしてこの寄せ集めの野球部が戦った相手がかの小林の東郷学園中学。この試合に敗れたために結局中学野球編は一試合のみしか描かれなかった。最初から甲子園大会のある高校野球をテーマにするつもりだったんでしょうから、中学野球はあくまで高校野球を書くにあたっての前振り、仕込みのようなものだったんでしょう。
その内容たるや、練習でベースを逆走してみたり、中学野球なのに硬球で試合したりレガーズなしだったり、おかげで岩鬼と山田が試合中に要手術(縫合)レベルの大怪我したりの無茶っぷり。高校編がリアル路線と言われたのが嘘のよう。

ただこれはこれで中学時代ならではの特色であり、この破天荒さの中からのちに続く殿馬というキャラも生まれてきた。一年夏から甲子園にゆき、最強・無敗の名を轟かせた明訓高校時代とは真逆の、応援席も閑散とした素人ぞろいの弱小チームならではの試合や練習風景が中学編の味ですね。


・長島が最後の思い出にと山田に一球を投げる。「こ これが長島さんのタマ?まさか」。あまりの威力のなさに山田は内心青ざめる。切ない場面です。

・大河内「やはりこの転校届けは受理しよう」。長島の転校についてのシーンですが、なぜ転校届を生徒会長に出す?

・山田ともども長島を追っていった岩鬼、通りすがりに軍司対野球部の野球勝負に飛び入り。バッター軍司にピッチャーとして対決するがいきなりデッドボール。つづいてまたビーンボール。
二球目をバットでよけた軍司は3球目でもう岩鬼のビーンボールを打てるようになり、ピッチャー返し連続で岩鬼をダウンさせる。軍司も悪球打ち?岩鬼が加減して投げてるにせよ、ただならぬ野球センスを感じさせます。
ここでわざわざ軍司の野球の才能を描いたのは、当初野球編になっても軍司を出す予定だったんでしょうか?

・部員募集のためのチラシが学校の掲示板にいろいろ。新入生たち「やっぱり柔道部だ」「おれもだな」「あそこは山田さんがいるからなァ」「よしおれっちも柔道部にきめた」。この山田人気はいったいなんだ。しかもポスターは岩鬼が書いた(本人署名入り)のに後の野球部のように岩鬼の名前で敬遠されないとは?

・新入部員ゼロの窮状を見かねて岩鬼が野球部に入ったと知ってあわてる校長。理事長は「あのはみだし岩鬼が野球部をしょって立つと意気ごめば意気ごむほどだまっておれない男がひとりいる そしてその男は野球部の歴史をねこそぎぬりかえてしまうかもしれん」(中略)「ウフフフあいつのユニホーム姿が見れる日も近い」。
理事長はもともと野球少年山田を買ったようだ。しかし西南中学時代の山田ってそんなに有名だったか?実は理事長は野球に詳しくて直接山田が試合するのを見てただならぬ才能を感じた、とかだろうか。

・一人グラウンドで練習する岩鬼は、マウンドの上に膝を抱えて座る男(小林)と出会う。小林いわく「野球部の山田太郎を呼んでほしい」。山田が野球部にいることを確信しているのがわかります。
彼は冷や汗かきつつグラウンドに入ってきた山田に「二年ぶりだ・・・・・・」と言ってますが、それだと例の試合は二人が一年生の時ということになってしまう。山田が転校してきたのは二年のときのはずだが、事件後数ヶ月経過してからにわかに転校することにしたんでしょうか。31巻の里中回想ではちゃんと二年次の事件ということになってましたね。

・山田が野球をやめていたと知った小林は稔子が差し出した杖をへし折り、「おれは必ず目の手術に勝ってみせる そしてふたたびおまえに会いにくるぜ そのときにまだ柔道着を着ているようならおまえはもう友だちでもライバルでもない 絶交だ!!」。いつから友達になったんだ。
小林がフェンス越しに山田めがけて投げた速球がフェンスを破って山田の腹に当たって落ちる。とても見えないとは思えない正確さ。見えないままでもやってけそうな気もする。

・二人のやりとりを聞いていた長島いわく「おれは今の小林の執念を見てもう一度肩の故障と戦ってみる気になったぜ・・・・・ビーンボールをくらって再起不能といわれたこの肩とな・・・・・・」。ボールに威力がなかったのはこういうことだったのか。待望の山田が野球に戻ろうという時期に・・・不憫です。

・小林の包帯がとれる日。「見えるはっきりはっきり見える!!(中略)稔子の白いミニのワンピース」(涙ぐみつつ笑顔で)。・・・間違ったこと言ってるわけじゃないんですが真っ先に見るもののポイントがなんというか。ミニだけになあ(笑)。「おにいさん」「あははは完全試合だぜ」。泣き笑いながら抱き合う兄妹は美男美女同士で、まるでお似合いのカップル(それも大学生くらい)のように見えます。

・上の台詞に続けて、「山田おまえの姿もよく見える」「はい」「やっぱりおまえはそのユニホーム姿がいちばんよく似合う」「えっ」(ガクラン姿の山田ちょっと青ざめる)「おにいさんほんとに見えてるの」「よく見えるとも山田はまちがいなくユニホームを着ている」。つい『ベルサイユのばら』でアンドレが完全失明したとき(オスカルの肖像画について的外れな褒め方をしたことでオスカルが彼の失明を確信するアニメオリジナルエピソード)を思い出して、手術やっぱりダメだったのか!?と山田ともども動揺してしまった。

・病室ベッド側の壁にバットがたてかけてある。グリップにはさんざん握ったあと。山田内心「新しいバットだ そうか繃帯のとれるこの日までバットにぎりで握力をつけていたのか ほんとうに野球の好きな人だな」。野球が好きなのは確かでしょうが、野球へのひたむきな執念を感じさせるこの行動に対して「ほんとうに野球の好きな人」という山田の表現はなんかのんきな響きで面白い。なぜこの小林が中学で野球やめて留学するとかいう展開にしたんだろ。

・部員募集に際し、岩鬼の名前を前面に出したから「だれもはいってくれないんじゃないか」と涙ぐむサチ子の左肩に「おっよォてめえ評判悪いづらぜ」と手を回しつつ岩鬼に言う殿馬。子供相手だし深い意味はないのかもですが、一年秋のチュー事件といい殿馬は妙にサチ子に接触するよなー。

・山田と猛司の盗塁勝負。猛司にルール説明したついでに「二塁はおれがやるぜ」と二塁に入る殿馬。なぜ彼が二塁を選んだのかは不明ですが、これがセカンド殿馬誕生の瞬間と思うと感慨深いです。

・山田のスピード送球に悲鳴をあげながらも(痛かったから)、球を落とさず猛司にタッチする殿馬。ボールをこぼさないあたりがやはり才能か。

・岩鬼が主将ではいけない、山田か長島を主将にしろという先生たちに山田は「先生ぼくたち野球部の主将は岩鬼しかいません それでだめなら大会には出場できなくてもいいのです みんなもそう思っているはずです」。山田はともかくいつのまにか窓の外にきていた部員みながそれに笑顔で同調する。殿馬の「てめえバカな子ォほどかわいいというづらぜ」とか。みんないいヤツらだなあ。しかしこれで山田が大会に出てこなかったら小林怒るだろーな・・・。

・野球部の監督をやってもいいという景浦に(喜びのあまり)「お おいわりゃいまなんちゅうた」と叫ぶ岩鬼を、山田が「先生に対してわりゃなんてじょうだんいっちゃいけないよ」と青ざめ苦笑しつつ止める(景浦先生はああいう人なので、「わたしそんなことちっともかまいませんよ わりゃとはりっぱに大阪弁ですから」と笑ってくれましたが)。その直後の殿馬の「おっよォ新米先生よはやくこいづら」は止めなくていいのか山田。こっちもかなり失礼だろうに。

・景浦先生に連れられて銭湯にきた野球部一同。殿馬「へえ〜〜これが話にきいたふろ屋か」。この時代(70年代前半)に銭湯に全く来たことがないらしい殿馬はああ見えて岩鬼同様金持ちなのか逆に風呂にもいかれないほどの貧乏なのか。

・ひとりひとりにマッサージといいながら岩鬼の肩や腕をもむ景浦監督。顔を真っ赤にして「わたしすごい筋肉の発達した人を見るとコーフンするんです」。この人少しヤバいのでは・・・。

・野球は素人、練習中にテストの採点(数学?)、岩鬼を買っている?など景浦は太平監督と共通点多い。土井垣の後の監督として景浦監督を持ってくる(鷹丘から明訓に転職?したことにして)手もあったかも。

・三つ子の一人は内心「岩鬼の打ったタマはガラスを割ったのにどうしてトンマがとれたの?」。岩鬼も殿馬も呼び捨てなのだがそういえば彼らは何年生だろう。アニメでは下級生設定になってましたが、原作ではけっこうタメ口ですよね。彼らも三年だとすると、山田たちの卒業後野球部は自然消滅ということに・・・。夏が近いのに三年生しかいない部っていうのもすごいな。

・「いいですよ首でも・・・・・・でもねいくらかわりの監督がきても岩鬼くんのピッチャーは無理だとわたしは思いますよ 守ってるナインがしらけるんですよ コントロールが悪すぎるとね」。あっさり笑顔で辛辣なこという先生。景浦先生って何者なんだろう。この根性の座り方だけでもただものじゃないです。

・岩鬼を後楽園に連れ出そうと迎えにいって門前払いをくらった山田は門の前でちょうど夏子に出あう。夏子「い いえ あ あたし偶然ここを通ったのよ山田くん」。野球部を辞めるとウワサされてる岩鬼を心配して来たんだろうが、夏子が岩鬼への気遣いを公にしないのは珍しいかも。柔道編のころ夏子は長島を慕ってる描写がありましたが、岩鬼のことはどの程度に思っているんだろ。

・審判のボール判定に逆上する岩鬼に対し、夏子は「アウトコースにボールひとつはずれているわ」と笑顔で。素人なのに眼力がすごいな!と思いましたが、そういえば夏子さんはソフトボール部だった。

・入場券がラッキーナンバーに当たった夏子、券を岩鬼に渡し後楽園名物の的あてに行かせる。「お おとなげない わ わてほどの大器のやるゲームとちゃいま」と言う岩鬼に夏子は内心「岩鬼くんこんな強気を言っているけどやっぱりコントロールに自信がないんだわ・・・・・・なんとかしなきゃ」と考え、「岩鬼くんあの的はわたしのハートよわたしを射とめて」などとすごい発言を。岩鬼が好きで「何とかしなきゃ」なのか長島のために野球部の存続を案じてるのか。前者のほうがいいなー。

・的に夏子を(つーか夏子のふくよかな胸を)重ね合わせる岩鬼。ここでヌードを想像するあたりがやはり中学生男子か。結果はどストライクでした。

・実は離れた席でこの顛末を見守っていた監督と山田兄妹。山田「だけどよく命中したないいコントロールだ」「だけど試合ではバッターが立つからね」。実際高校になってからも投球練習ではコントロールいい岩鬼がバッター立つとフォアボール連発はよくあるパターン。先を見越した監督の慧眼。一般的にもよくあることなんでしょうけど。

・部員を思い切りスパルタでしごいてる小林。こないだまで休部(退部?)してた人間とも思えない偉そうな態度。しかも小林がキャプテンらしいし。小林不在の間もキャプテンはいたはずだが、その人はどうなったのか。そして監督もどうしてるんだ。

・新聞記者から高校生まで山田を見にグラウンドへやってきている。その中にやたらフケた中学生が。「だからこそわざわざ汽車賃をつかって来たんだ」。これが不知火守の初台詞。この頃に比べると、後半はずいぶん顔が可愛くなっていきました。

・なぜか練習ではピッチャーやってる長島。右肩は大丈夫なのか。バッティングピッチャー程度のタマなら投げられるということだろうか。

・後楽園でのストライクもむなしく大ボール連発する岩鬼。山田がめずらしく険しい顔で「やめたよつきあいきれないよ」「つきあいきれないと言ったんだノーコンピッチャーには」。その言い草に激怒した岩鬼は山田にボールを次々ぶつける。止めようとするナインに対し不知火は「とめる必要はない あの男の背中がそう言っている あの男の前にまわってみろおそらく笑っているはずだ」「まるでコントロールの悪い岩鬼とかいう男が山田の背中に一球もはずさずうちあてている おれの目には山田がその命中にあまんじているように見える」。そして本当に笑っている山田。山田の頭脳と忍耐力、不知火の洞察力を描いた好きなシーンです。

・不知火内心「東郷学園の小林も好投手だがあの山田はそれより上と見た(中略)これほどの男がよりによってこんな野球部に・・・・・・無情だが山田よ おまえの鷹丘中学は万にひとつの勝ち目もない となると関東大会でのおれの相手は小林か・・・・・・」。初期『ドカベン』は大阪が舞台のつもりなんじゃ?と思わせる描写がいろいろありましたが、この時点ではすでに鷹丘が少なくとも関東圏なのは(不知火も)決定している様子。

・前日の山田の犠牲が無意味な岩鬼のコントロールの悪さに長島内心「そううまくいくほど野球は甘くない・・・・・・今大会はあきらめだな」と思うが、みんな三年なので今大会で最後じゃないのか。

・景浦のツケでバッティングマシンを買うじっちゃん。そりゃじっちゃんのポケットマネーじゃとても買えないでしょうがちゃっかりしています。

・みながバッティングマシンで練習する間に、夏子が「こっちでわたしを相手に投げて」と声をかける。ソフトボール部の練習は大丈夫なのか+監督あたりが頼んだのか自主的にやってくれてるのか。夏子さんいい人だな。

・つい力を入れすぎてワンバウンドのタマが夏子に当たる。岩鬼あわてて駆け寄り抱き起こす。「す すんまへん わて力抜くん忘れました し しっかりしとくなはれ」「へ 平気よ」。そんな二人を見つつ山田内心「いいムードだ がんばれ岩鬼」。これは恋の方の応援か?

・ついに山田のバッティングが見られると色めくオーディエンス。山田の右投げ左打ち設定はここで初めて出たのでは。そもそもバッティングシーン自体回想以外では初めてですが。

・東郷との試合当日朝、山田を激励にやってくる賀間・影丸・鉄山と牙の師弟。「野球なら柔道以上に好きなおまえだからな」と気安く山田の肩を抱く影丸。山田の野球時代を知ってるのか?「やっぱりあの後ろ姿は柔道じゃ」と未練がましい鉄山に「ぼくには日本一の捕手の後ろ姿にみえますけどね」といったり、なんか山田の野球転向を喜んでるかのようだし。

・試合開始直前、スタンドへ上がってくるおっちゃん(徳川監督)が不知火の姿を見つけて「ウフフきてるな不知火のやつ」。不知火の名前が出てくるのはここが最初。なぜ徳川は不知火を明訓にスカントしなかったのだろう。土井垣の練習を見ていた記者?が話してたとおり「もし明訓校へパーフェクト投手の不知火がはいったらすげえコンビができ」ただろうに。まあ山田と戦うことが高校野球の目標らしい不知火は山田が明訓に行くとなった時点で明訓にだけは進まなかったでしょうが。案外山田の明訓行きが原因で前々からの徳川のスカウトを断ったという経緯があったのかもしれません。

・不知火「ばかな山田のやつあのままで試合をする気か!?」「硬球なのにプロテクターもレガースもつけないで」「そう役員もいったそうなんじゃが結局は認めたそうじゃ 持っていないんじゃ それもおもしろいかもしれん」(中略)「マ マスクまでかぶってない・・・・・」「どうや ここまで徹底されてとめる気になるか」「いえどうなるか見たい気持ちになってきましたよ」。中学野球でなぜ硬球。そもそもプロテクター他は野球部で持ってないものなのか。なきゃないで大会役員がどっかから持ってきて貸すと思うのだが。これはクロスプレーで小林のスパイクに腹を裂かれる(結果的に小林の目を傷つけたケジメをとる)ための伏線なんでしょうが・・・。

・二塁を襲う強烈なライナーをしっかりダイレクトでキャッチしている殿馬。すでに名手の気配がある。落としたふりでランナーを走らせてすぐボールとると一塁送球して「ばーか」。別にダブルプレーとれるとかのメリットはないので単におちょくっただけらしいですが。

・小林は去年からここまで連続99回無失点のタイ記録(不知火とタイ)。目を怪我した西南中学との試合で1点取られてるはずなんですが・・・。しかし一年前後試合に出てなかったはずだが、それで不知火と同数とはすごい。

・山田キャッチャーフライを一塁側スタンドに入るコース(ファール)にもかかわらず追い、金網をのぼり一度は弾いたが、ミットでグラウンド内にあげなおし岩鬼にトス。『おどろきました山田くんのおそるべきプレーです』山田「どーも」と笑顔。山田の尻を持ち上げてやる観客の人も優しいな。(p115−117)

・山田の初打席はピッチャーライナーと思ったら小林のグローブ弾いてそのままスコアボードに当たる大ホームラン。ここにいたるまでの長島・岩鬼敬遠(連続無失点記録は山田で達成するという意地)、ワインドアップから投げるとかやたら自信たっぷりだった(そのぶん悪役顔)小林。これは悔しい。というかどんな打球の伸びだ。

・連続2デッドボールに怒ってベンチ飛び出す小林とナイン。「山田 きさま 受けていていちばんわかる はずだ こう ビーンボールをつづけられ たんじゃだまっているわけにいかねえんだ」(ヘンな言葉の切り方)。結構小林って荒っぽいよな。お坊ちゃまのわりに。まあ岩鬼も影丸もお坊ちゃまですがね。

・岩鬼3デッドボールでの退場免れたと思ったらまたデッドボール。小林怒って飛び出そうとするが、山田がミットを中央に構えたままなのにはっとする。審判も山田のミットの位置を見てストライクの判定。不知火いわく「山田のファインプレーですね」。

・黄三郎が青二郎・赤一郎の背中を台に飛んで空中で小林のホームランボールをキャッチ。アストロ球団的な。三人なら出来ないことはないとの入部当時の発言を裏書した形。ちゃんと伏線が機能している。

・殿馬にホームラン打たれた直後の長島の打席(三回裏)で小林思い切りプレートを踏まずに(プレートの前で)ワインドアップしてる。監督「い いかん あ あいつがこんなに動揺するとは」。
本人も山田に語っていたが小林にはプレッシャーに弱い一面がある。それは高二関東大会での頭部デッドボールのあとに二連続フォアボールで満塁にしたあたりにも引きつがれています。

・さらに岩鬼の額にデッドボールという・・・。怒りのあまりバットふりあげて小林に殴りかかろうとした岩鬼は途中で悶絶。その状況下で大河内「あ〜〜だめだ負けだ」猛司「は・・・・・・8人じゃ試合はできない」山田「みんな心配はいらないよ岩鬼くんに代走をだそう」。少しは岩鬼の心配も(笑)。とくに山田がひどすぎる(笑)。
といっても次の連載回になると山田は岩鬼の顔に手をあてつつ「なんだたいしたことはないよ 岩鬼くんならこれぐらいのケガでゲームをやめるようなことはしないさ」とコメントしてるので、岩鬼の体力と根性を信頼してるから・・・ですね?

・岩鬼治療の時間かせぎのため(長島が代走で出たもののすでにツーアウトのためチェンジになったときのピッチャーがいなくなる)、山田ファールでねばる。顔面への死球でベンチ内で医師が治療にあたってる状態なのに、あの動揺に弱い小林が「おれはなにをくよくよしているのだ・・・こういうことは野球にはよくあることなんだ あの程度のタマをよけきれなかった 岩鬼が未熟なんだ」と立ち直り山田からさっそく見逃しのツーストライクを奪っているのはさすが。

・鷹丘は進学校でスポーツには無関心な風潮(柔道部の部員募集ポスターへの反応や長島主将時代の野球部の様子をみるにとてもそうは思えないのだが)のため誰も野球部の応援にやってこない淋しい状況。それを知っていたのか、山田が連続ファールでねばっているときに賀間が鷹丘中学に乗り込み、挨拶もせず校長室に入ると校長の机の前に(もう一人は教頭?)ラジオを置いてゆく。ここに山田びいきの理事長がいたならな。

・山田20球ファール。そのころ鷹丘ベンチでは治療の様子を覗きみる殿馬がさらっと手書きのセリフで「めんどくせえ ころしちゃいなよ先生よォ」とあんまりなことを言っている(笑)。

・23球目にして小林わざとか計算か暴投。山田とびついてバットに当てるが、鷹丘ベンチ前に上がったファールを小林周囲を制してダッシュ、執念のスライディングキャッチ。
交代になったところで山田が小林に「ナイスプレー」と声をかけ小林も穏やかな笑顔で山田の右肩に触れ「山田 こんな形で試合をおわろうとはね」と言う。終わらなかったけど。

・ついに出てきた岩鬼。眉間に大きな縫い傷、口には涎、笑顔のままふるえながら「ぐえへへへへへサロンパス」。岩鬼はこれまでもやたらコマーシャルの文句をつぶやきつつ投げていたから、きっとこれもそうなんでしょうけど、意味わからないだけに(そして岩鬼の顔が)それはそれは怖い。
張り切って走りだしていく岩鬼を見つつ医者は「血が燃えとるんじゃマウンドで死なせてあげなさい」。この医者もたいがいだなあ(笑)。

・ケガをさせた小林に激怒する岩鬼、ビーンボールまがいの球を連続3球。ついに怒りのあまりコントロールさだまらず4球で歩かせる。そのあと一塁への牽制球も小林にぶつけようとする。悪牽制球をよけつつ走る小林は三塁まで到達。三塁牽制の悪投を利用してホームへ走るが、悪投を予期していたレフト赤一郎がバックアップし、小林は一か八かで突っ込み。ホームベースをブロックした山田のミットを蹴ろうとしたところ、山田がミットを頭上にあげてスパイクをかわしたため、スパイクの切っ先で山田の腹を裂いてしまう。この試合、小林は手術が必要レベルのケガ人を続々出しています(しかもそのケガ人は小林手術の時に体張って無事を祈ってくれた二人だ)。野球って恐ろしい。

・今度は山田が昏倒。不知火「す すばらしい!!山田太郎という男すばらしいプレーヤーだ!」あの不知火が感動に涙ぐんでる。そして不知火フェンスを飛び越えてグラウンドへ乱入(翌年秋には不知火父も試合中のグラウンドに乱入していたなあ・・・)。その不知火の手に徳川がウイスキーのビンをほうってよこす。見事な連係プレーです。

・山田の治療のため岩鬼に「(山田を)うしろからかかえておこせ」と不知火は指示。岩鬼は命令されることに反発するが、殿馬「やりゃいいんだよ 命のやりとりはそれからづらぜ」は岩鬼の片頬を張る。命のやりとりって不知火と?

・「もはや山田の肩は胸の傷でなみの捕手にひとしい」とニヤリとする小林。あんなケガさせといてそれですか。なんと容赦のない。

・そのケガ人を敬遠する小林。不知火は激怒し「小林 きさまそれでも男か 今での熱投はみなうそっぱちかよォ 勝ち負けの前に堂々たる勝負があるべきじゃないのか!!それが男の勝負じゃないのかァ!!」。一年後対明訓戦で不知火も山田を体よく敬遠してましたけどね。

・賀間について球場にやってきた生徒たちが小林をヤジる。稔子は泣きながら「おにいさんのどこがひきょうなのですかどこが堂々じゃないというの だれがなんといおうとこれはまぎれもなくルールに定められた敬遠という堂々たる作戦なのです」と叫ぶ。山田と小林の間で悩む稔子が健気です。

・賀間さんが「一見勝負をしてるようにみせてそのくせくさいところを ついて歩かす そんな小細工をしなかった小林の気持ちもわかってやれ」という。このセリフ白新戦のあとに読み返すとまんま不知火への皮肉になってますね。

・殿馬、初ホームスチールにもかかわらず逆スライディングなどという高等テクニックを。やはりほかのメンバーとはちょっとレベルが違う。天才殿馬の才能の片鱗を感じさせます。

 


(2010年7月3日up)

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